神村学園vs鹿児島情報
ホームイン
「上級生が良いプレッシャーを与えてくれた」神村
先の九州大会を制した神村学園の「ルーキーズ」が、苦しみながらも初戦を突破した。
九州覇者の神村とはいえ、1年生は本チームでレギュラーの大坪直希主将を除けば、公式戦のユニホームを着て試合をするのも初めてのメンバーが大半である。「緊張でガチガチだった」と山本常夫監督。初回は二死満塁の先制機を活かせず、三回は3安打しながら走塁ミスで無得点、四回は初めて長打が出ながら、バントで送れず、併殺で無得点と拙攻が続いた。六回には暴投で先制点を献上。五―七回は調子を上げてきた鹿情報・二木に3人ずつで打ち取られた。
中盤以降、相手ペースで試合が進んだ中で、それをひっくり返したところに神村の「底力」を感じる。
「胸を借りるつもりで、ユニホームを汚すつもりでがむしゃらにやらないとコールドでやられるぞ!」
山本監督は試合前から言い続けていた。鹿情報はエース二木をはじめ、本チームでレギュラーを張り、秋の県大会を経験しているメンバーが多数いる。謙虚に、がむしゃらに、ひたむきに勝ちたい気持ちを前面に出さなければ勝利はおぼつかない。八回裏一死から1番・松木が遊ゴロエラーで二塁を陥れると、片岡亮、別宮に連打が生まれ、ワンチャンスで試合をひっくり返した。相手がスキを見せたら、一気にそこを突いていく。本チームから受け継ぐ神村らしさが唯一発揮された場面だった。
2011年は春の県大会から始まって、NHK旗、夏、秋と県大会はすべて制しており、今大会で優勝すれば、県大会の「完全制覇」になる。実力未知数の1年生チームだが、大坪主将は「3年生、2年生が良いプレッシャーを与えてくれた。自分たちも優勝したい」と完全制覇に意欲を燃やしていた。
「何か気づいたことがあったら挙げてみろ!」
敗れた鹿児島情報は試合後、円陣を組み、図師賢剛監督が選手に問いかけた。
「神村の打者はファーストストライクから積極的に打っていた」「2ストライクまでフルスイングだった」「常に先の塁を狙っていたので、守備で気が抜けなかった」「1点リードして落ち着いて守らなければいけないのに、慌ててしまって冷静にプレーできなかった」…1人1人反省点を挙げながら図師監督は「冷静さ」の大事さを説いた。
「勝てなかったのは技術的なことじゃない。試合にガッと熱くなっても、引いて冷静にプレーできたかどうかに相手との差があったんじゃないか?」
2年生も含めた全員で惜敗から得た貴重な教訓をかみしめていた。
(文=政純一郎)