試合レポート

天理vs立命館

2011.10.24

天理vs立命館 | 高校野球ドットコム

延長10回 161球を投げ切り18個の三振を奪った中谷佳太投手(天理)

エース中谷18K

 昨秋、今春と近畿大会を連覇している天理が、立命館を延長の末に振り切り、準々決勝進出を決めた。

2点を勝ち越してもらった後に上がった延長10回のマウンド。天理のエース・中谷佳太(2年)は三者連続の空振り三振で締めくくった。
「三振の数は計算してなかった」とはにかんだ左腕。気がつけば、スコアブックに残る『K』の文字は18個に達していた。橋本武徳監督が「中谷が良く投げてくれた」と話したように、まさに貫録のピッチングである。

「調子は良くなかった」と試合前に感じていた中谷。立ち上がり先頭打者に四球を与えるなど、微妙なコントロールに苦しんだ。2回には走者を二塁に背負った状況からボークを犯してしまう。流れは完全に立命館にあり、いつ失点をしてもおかしくなかった。
だが、威力を増した直球が中谷を救う。

「今日は変化球中心でいこうとしたが、力が入っていた。だから直球主体になりました」と切り替えを話したエース。さらに春にこの舞洲のマウンドを経験しているのも大きかった。相手打者にファウルで粘られても、最後は三振になり攻撃側の思惑通りにはいかない。中谷の力と経験が上回っていたのである。
一方、このチームでの課題だった打線は立命館の左腕・伊藤数馬(2年)の前に苦しんだ。

糸口が見えたには5回。1死から7番の船曳翔(2年)がこの日初めて四球で出塁。続く8番中谷の内野ゴロの間に船曳は二塁に進んだ。
打席は9番の関屋亮(2年)。1ボール1ストライクからの3球目、関屋の打球はレフトへ弾き返された。二塁から一気に本塁を目指した船曳。下位打線によるワンチャンスで押されていた天理がこの試合先に点を取った。


天理vs立命館 | 高校野球ドットコム

延長10回に決勝打を放った古田塁(天理)

ようやく取った1点だったが、踏ん張っていた中谷が7回に1点を失い試合は振り出しに。そしてそのまま延長戦に突入した。
10回表、天理立命館二番手の坂戸奎太(2年)から簡単に二死を取られるが、2番の綿世優矢(2年)がストレートの四球で出塁する。再び相手にもらったチャンスを続く3番古田塁(1年)が生かした。坂戸の3球目をレフト線に打ち返した古田。打球から走者は三塁で止まるように思えたが、三塁コーチャーの松村龍太郎(2年)は迷うことなく腕を回して本塁へ突入させた。ヘッドスライディングで綿世は本塁を陥れた。

さらに4番吉村昂祐(2年)が連続タイムリーを放ってエースに2点をプレゼント。球数が150球を超えても「疲れはあまりなかった」というエース中谷にとってこの2点は十分すぎるほどだった。

「他にも良い投手がいるので、エースになれるかは競争だった。去年のチームでは先発しても西口(輔=3年)さんが後ろにいたので楽だったが、今は自分が引っ張らないといけない」と口を真一文字にむすんで話してくれた〝新〝エースの中谷。野手が総入れ替えのチームにあって、経験十分のエースがしっかりとチームを引っ張った。

 一方で敗れた立命館にとって痛恨だったのは10回に2死からストレートの四球を与えてしまったこと。9回にも同じように2死から四球を与えていたのだが、この時は7球粘られた末のものだった。
同じ四球でも中味によって対戦相手の捉えた方まったく違う。この日の教訓を来年ぜひ生かしてほしい。

(文=松倉雄太)
(撮影=試合シーン57~91 中谷明)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.28

【岡山】関西が創志学園に0封勝ちして4強入り<春季県大会>

2024.04.28

【鳥取】鳥取城北が大差でリベンジして春3連覇<春季県大会>

2024.04.28

【広島】広陵、崇徳、尾道、山陽などが8強入りし夏のシード獲得、広島商は夏ノーシード<春季県大会>

2024.04.28

【長野】上田西、東海大諏訪、東京都市大塩尻が初戦突破<春季県大会支部予選>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!