試合レポート

宇和島東vs川島

2011.10.23

宇和島東vs川島 | 高校野球ドットコム

激しい雨の中で力投する先発・佐藤大誠(川島)

宇和島東、「雨にも負けない」宮本の獅子奮迅で2回戦進出!

 「女心と秋の空」。先人は絶妙の表現をしたものである。
10時のプレーボールから最後まで秋雨前線による気まぐれな天候に翻弄され続けたこのゲーム。

中でも9回表・3点を負う川島が1死1・2塁の絶好機をつかんだ途端に激しくなった雨はグラウンドの水抜きを2度に渡り阻み、2時間16分の間、両軍の選手たちをベンチに押し留めることに。結果、スコアボードの大時計の針は終了の瞬間、14時12分を指していた。

それでも徳島県2位校の川島、愛媛県3位校の宇和島東のモチベーションは高く、試合内容自体は非常に締まったものになった。特に両先発投手は踏み出し位置すらも保てないマウンド上で奮闘した。

まず川島佐藤大誠(2年)は8回・111球で3失点完投。4回裏に3番・山内省吾(2年)に二遊間を破られ先制点を許すと、8回には「いつもの悪い癖で、ボールが抜けていく感じがあった」先頭打者へのストレート四球をきっかけに、2番・山下竜一(1年)の「彼自身の判断で行った」(宇和島東・浅野秀夫監督)セーフティースクイズなどで2点を追加されたとはいえ、10安打を浴びながら試合を作った辺りはさすが徳島大会準決勝で徳島北相手にノーヒットノーランを達成した大会屈指の左腕と言えるだろう。


宇和島東vs川島 | 高校野球ドットコム

足場を失くしながらもバランスを保つ宮本広大(宇和島東)

一方、愛媛大会・四国大会代表決定戦で川之石を封じ、加えて「練習から調子がよかった」指揮官の評価も得てエースナンバーを背負う中川源和(2年)に先んじ、初戦先発となった宇和島東宮本広大(2年)。その出来は佐藤を凌ぐものだった。

「高校で投手をはじめたのは新チームからですけど、宇和島ボーイズ時代に経験はある」雨中戦の経験を活かし、絶妙の投球バランスを保った背番号「5」は最速137キロの直球を低めにコントロールし、「思いっきり腕を振ってカット気味にするのと、捻って横に落とす」2種類のスライダーも決め球として有効に機能。

その勢いは「中川への継投も少し考えましたが、相手も右打者が続くし、スライダーで三振が取れるので(捕手の)山内と相談して続投することにした」と浅野監督から再びマウンドに送り出された雨天中断後も衰えることなく、140球5安打で公式戦初完封。雨にも負けず、与えた四死球わずか1、奪三振数も7回を除く毎回の12と完璧な内容を提示した宮本に対し、敵将の北谷雄一監督も「あの足場の中で低めに投げ込んで絞り込ませなかった」と心から敬意を表したのであった

そして北谷監督、初戦の対戦相手を分析すべく試合の様子をネット裏から凝視していた明徳義塾・馬淵史郎監督からは、図らずも同じ言葉が発せされたのである。「宮本は中川より安定していますね」。

さて、この評価を受けた最速144キロ右腕がどんな感情を抱き、明徳義塾戦でどんなピッチングを見せてくれるのか。「負けず嫌い」を自他共に認めるエースナンバーが、もし一皮剥けるようなことがあれば、この試合における宮本の獅子奮迅はさらに価値と輝きを増すことになる。

(文=寺下友徳)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.05.15

獨協大の新入生に専大松戸の強打の捕手、常総学院のサード、市立船橋のトップバッターが加入! 早くもリーグ戦で活躍中!

2024.05.16

【秋田】夏のシードをかけた3回戦がスタート、16日は大館鳳鳴などが挑む<春季大会>

2024.05.15

【島根】出雲商-三刀屋、大田-益田東など初戦から好カード<地区大会組み合わせ>

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.14

大阪体育大の新入生に兵庫大会8強の145キロ右腕、金光大阪の1番センター、近大附の4番打者など関西地区の主力が入部!

2024.05.13

大阪桐蔭、山梨学院、慶應義塾…強豪校・名門校の昨年度卒業生はどの進路を歩んだのか?【卒業生進路一覧】

2024.05.12

学法石川の好捕手・大栄利哉が交流戦で復帰! 実力は攻守ともに世代トップクラス!身長200センチ右腕を攻略し、完封勝利!

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?