試合レポート

履正社vs報徳学園

2011.10.23

履正社vs報徳学園 | 高校野球ドットコム

履正社 東範幸投手

履正社、原点回帰の野球で好スタート

 近畿大会開幕戦となった第1試合は、履正社が9-2で報徳学園を圧倒。順位こそ違うが、激戦区代表チーム同士の対決は、思いもよらぬ大差が付いた。
 しかも、下馬評で下回っていた方のチームが勝ったのだから驚きだ。

 勝者・履正社の岡田龍生監督は「できすぎです。逆の展開を予想していました。報徳のエース田村君からは、そう点は取れないだろうし…。まさか、こんな展開になるとは…、僕にも、ようわかりません」と、終始、驚いた様子だった。

 この結果がサプライズのように思えたのは、両者の力関係にある。1年夏の甲子園ベスト4に大きく貢献したエース田村 伊知郎がいる報徳学園は前評判通りの強さを発揮して、兵庫大会を制覇。田村だけでなく、主軸の佐渡友や永岡はこの春のセンバツからレギュラーで、高いポテンシャルを発揮していた。

 一方の履正社は、今センバツベスト4のメンバーはほぼ総入れ替え。旧チームからのメンバーは数人いるが「どの選手もイマドキの子っていうか、自分のことしか考えられない選手で、自分のプレーでいっぱいいっぱい。誰がキャプテンなのかも分からないくらい」と物足りなさを残した。失点が計算できて、強力打線を誇っていた旧チームから見劣りしてしまうのは、紛れもない事実だった

 ところが、いつもよりも、はるかに物足りなさを感じた大阪3位校は、堅実で確率の高い野球を実践していく。走者が出れば、必ず送りバントを成功させ、ねちこく相手にしがみつく野球で兵庫1位校を追い詰めたのだ。

 「自分たちにできることをやろうというのが今年のチームのテーマです。凡打を打って、『あーくそ』ではなくて、全力疾走をしよう。バント・守備・走塁を確実にやっていこうとした結果がつながったと思います」とは主将の小保根である。


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報徳学園 田村伊知郎投手

 履正社が素晴らしかったのは、まさにこの要素だ。1アウトであっても、とにかく、犠打で走者を進める。そしてチャンスでは大振りをせずに、ゴロを意識して叩きつける。「物足りない」と映ったチームは、ここ数年にはなかった泥臭さを身につけ、ベストパフォーマンを見せたのだ。

 2回表、1死から藤山が四球で出塁すると、8番・乾が犠打で送り、9番・東が適時打を放って1点を先制。3回表も、2番・庄野が右翼前安打で出塁すると、3番・原田は犠打。これが相手守備のエラーを誘って、無死1,2塁となったが、ここで4番・小保根も、また犠打。1死2、3塁として5番・熊本の遊撃ゴロで、三走・庄野が生還(記録は野選)した。
4回表には、中前安打で出塁の藤山を犠打で送ると、2死から1番・宮崎が中前適時打を放ち1点。2番の庄野が右翼線二塁打で好機を拡大すると、3番・原田が中前適時打。二走・庄野が好走塁で本塁へ掛け込んで、この回、3点を加えたのである。

 田村を打ちこんだというより、相手にプレッシャーを懸けて、もぎ取った5得点だった。

 そもそも、履正社の根底にはこういうスタイルで戦える伝統が根付いている。今月の「スキルアップ特集」でも書いたが、まだ履正社が強豪と呼ばれる以前の頃は、狭いグラウンドでバント・守備・走塁の練習を徹底してたたき込み、97年の甲子園出場を果たしていた。大阪にいながら、「バントの履正社」として強豪校に仲間入りをした履正社野球の根底には、そうしたスタイルが根付いているのだ。

「こういう野球もできるということを魅せれたと思う。打つだけじゃない野球が、うちにはできるということが発揮できた」と岡田監督が言えば、小保根も「去年くらいから(履正社は)打つチームになっていましたけど、もともと履正社はこういうスタイル。僕たちには先輩らのような力はないので、その分、泥臭く戦えた」と胸を張った。


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履正社 東範幸投手

 9回裏に2失点はしたものの、田村のいる報徳学園を相手にしての9-2は完勝と言えるだろう。「エースの東がよう投げた」と指揮官が言うよう、もちろん、先発した1年生左腕の東を誉めなければならないが、原点に戻った履正社野球で強豪を撃破したことは、履正社にとって大きな力になるはずだ。東にとっても、大きな糧になったはずだ。

 華々しくはないが、泥臭くて、粘っこい。

履正社は原点回帰の野球で好スタートを切った。

(文=氏原 英明)
(撮影=試合シーン64~103 中谷明)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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