試合レポート

報徳学園vs東洋大姫路

2011.09.25

報徳学園vs東洋大姫路 | 高校野球ドットコム

報徳 田村は2安打完封
宿敵東洋を破りこのガッツポーズ

兵庫県高校野球伝統の一戦

 報徳学園東洋大姫路。2008年秋以来の対決となった一戦は、報徳学園がエース田村伊知郎(2年)の2安打ピッチングで東洋大姫路を完封。ベスト4進出を決めた。

 「完敗です。田村くんはやっぱり良いピッチャーですね。3対2くらい(の勝負)になるかなと思っていたが・・・」と振り返った東洋大姫路の藤田明彦監督。
この9月25日という時点では、チームの総合力、完成度において両チームに力の差はあったことは否めない。

 藤田監督と報徳学園・永田裕治監督が、「あれが大きかった」と声揃えたのは3回表の報徳学園が挙げた2点。

 2死1、3塁と報徳学園がチャンスと作った所で、東洋・藤田監督は先発の1年生左腕・横田徹寛からエースナンバーを背負う片岡迅也(2年)にスイッチした。
 『3対2の勝負』と見ていた藤田監督が勝負の一手を打ったのが想像できる。

 しかし片岡は打席の4番田村に対して思うようにストライクが取れない。フルカウントからの6球目、田村が思わずのけぞるような球が手に当たり死球となった。

 満塁となって5番の吉田昌矢(2年)が1ボールからの2球目をライト前へ弾き返し二者が生還。報徳が3対0とリードを広げた。片岡に普段とは違う独特の緊張感があったのだろうか。とにかく立ち上がりは腕が振りきれていなかった。


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報徳学園 永田裕治監督

 〝誰が言い始めたか?兵庫県の高校野球伝統の一戦と言われる報徳と東洋の対戦。

 過去の歴史もさることながら、お互いが県内最高のライバルと認めあい、切磋琢磨してきた自負が強いのだろう。前回の対戦は2008年秋以来と冒頭で記したが、この時は敗れても近畿大会出場の可能性があった。

 調べてみれば『負ければそこで終わり』の戦いは2006年夏の準決勝以来。 それもあったのだろう、姫路球場は早朝から入場券売り場に長蛇の列ができるほどのファンが詰めかけていた。さらに東洋にとっては地元である。

 報徳・永田監督は前回の試合で勝った際、「敵地に乗り込む」と話していた。さらにミーティングでは対東洋に対してのハッパのかけ方がいつもの試合とは明らかに違っていたのである。
 お互いが強く意識する伝統の一戦。ハッパをかけられた選手も試合前日の練習では強く意識していだであろう。

 この日の試合前ノックも、お互いが気迫の見せ合いだった。 そういった意味では、勝負の中での一番のポイントは1回表の攻防だったように思える。

 この日は先攻だった報徳。先にマウンドに上がった東洋・横田に対し、1番の佐渡友怜王(2年)が1ボールからの2球目を弾き返す。打球はライトを守る林大地(2年)の頭上を越えて佐渡友は悠々と二塁に達した。

「先頭打者は最初(の打席)に塁に出ることが大事」と話した佐渡友。1回表の1番打者のフルスイングが与えたインパクトは大きく、「あんな打球は想像していなかった」と林主将も認めた。まだこの時点では先取点は入っていなかったが、この一戦に懸ける気迫では報徳が先制していたのである。

 ただ、直後に報徳はミスを犯した。


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完敗に肩を落とす東洋大姫路の選手

 2番勝岡静也(1年)が初球をきっちり送ったように見えたが、走者の佐渡友がスタートを切れなかった。永田監督が思わず天を仰いだミス。
 3番永岡駿治(2年)はサードファウルフライに倒れ2死2塁と場面は進む。
打席はこの日4番に戻った田村。横田が投じた初球、田村が弾き返した打球は1、2塁間を破った。二塁から佐渡友は一気に還ってきて報徳に1点が入った。

 この局面、見事だったのは佐渡友の走塁。ライト林からの返球が三本間にやや逸れた。しかしそれは佐渡友の走路と重なる。アウトになると察した佐渡友はすぐに判断して走路を変えた。結果捕手の片山幸春(1年)が追いタッチとなり、ヘッドスライディングで本塁を陥れた佐渡友。

 送りバントで三塁に進めていれば、何てことなく先制できていただけに、この走塁は『痛恨の大チョンボ』を取り返す大きな1点になった。

 その裏、三者凡退でスタートを切った報徳のエース田村。だが永田監督は「ボールがシュート回転していた」と調子が悪いと見ていた。それでも、終わってみれば2安打完封。それができたのは、1回の自分による一打と佐渡友の走塁で1点を取った余裕があったからだ。

 気迫でも、得点でも先制された東洋。少ないながらもヒットや四球で走者を出したが、2つの併殺打など打線が流れを掴めなかった。

 勝った報徳は近畿大会出場へあと1つ。柱である田村が3試合目の完封を果たし、核である永岡も4回に2点タイムリーを放った。そしてミスを犯しながらも勝負強さを発揮した核弾頭の佐渡友。
この9月25日時点では兵庫で一歩抜きんでた存在になってきた。しかしもっと大事な試合はこの先にある。試合後、2週間後の準決勝(洲本戦)に向けての切り替えを指揮官は選手に話した。
 一方敗れた東洋は、『この差を埋めてリベンジするには練習しかない』と言わんばかりに、すぐにバスに乗り込んで練習に向かった。「東洋とやるとあんなにお客さんが入るんですね」と驚いていた報徳の佐渡友。現世代で初めて対戦した両校の選手に取って、兵庫伝統の一戦は今まで聞かされてイメージしてきたもの以上なのだろう。

 兵庫県の歴史を作ってきたライバル同士、東洋と報徳。来夏、再び相まみえることがあるとすれば、どんな一戦になるか楽しみである。
 

(文=松倉雄太

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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