吉田vs市川
須賀投手(市川)
せめぎ合う意地、伝統校同士のプライドの行方
西武ライオンズの黄金時代を支えた名内野手 田辺徳雄、日本ハムで２度のゴールデングラブ賞に輝いた井出竜也。この二人の出身高校は山梨県立山梨吉田高校である。
井出竜也を擁して出場した第７１回の選手権以来、甲子園からは遠のいているが富士吉田地区では依然とした文武共に伝統校である。 最近は富士河口湖高校や富士学苑高校が野球に力を入れていたり、学区制の廃止により山梨県立桂高校、都留高校と行った方面に生徒が進学してしまい苦戦をしいられている。
対する山梨県立山梨市川高校は９０年代前半の東海大甲府高校の牙城を破り甲子園でもベスト４に進出し、その後も何回か出場している伝統校である。最近は学区制の廃止もあり、こちらも苦戦している。
一昔前であれば山梨県の高校野球マニアが喜ぶ対戦カードだ。
山梨市川高校の先発は背番号１ 左腕の須賀君。
夏は１０番を付けベンチ入りしていた選手。170ｃｍと小柄ながら小さなテイクバックから小気味良い投球をしてくる。速球は常時１２０ｋｍ前後 １００ｋｍ前後の変化球を併せて打たせて取る。
山梨吉田高校の先発も背番号１奥脇投手。小柄で細い体格から１20ｋｍ前後の直球と１００ｋｍ前後の変化球で打たせて取る様だ。 左右の違いがあれど同じ様なタイプの投手の対戦となった。ちなみに奥脇投手は夏はベンチ入していない。
４回まで両者互角の戦いが続いた後の４回裏に均衡が破れる。
山梨吉田高校は２死から８番坂本選手のサードへの内野安打で欲しかった先制点を手に入れる。
しかし５回表 山梨市川高校は9番エースの須賀君のライト前ヒットを皮切りに送りバントとエラーなどで１死２塁３塁。センス抜群の３番小倉君の目の覚める様なライト前ヒットで２点を奪い逆転に成功する。
桒原琢投手(吉田)
７回裏 山梨吉田の攻撃は先頭の１番桒原君がサードのエラーで出塁。送りバント、四球、内野ゴロで２死２塁３塁とし５番山口君の時にパスボールで２−２の同点に追いつく。
投手は７回表に山梨吉田高校が背番号10の桒原琢投手に、8回裏には山梨市川高校が、それまでレフトを守っていた背番号10の植村君をマウンドに送り込んだ。
山梨吉田高校 桒原琢君はMAX130ｋｍ弱ながらボールにキレがあり105ｋｍ程度の大きく曲がるスライダーや120ｋｍ前後の小さいく曲がるスライダーを使い分けており後者はカットボールに近いものに見える。
山梨市川高校 植村君は身体的にはエースの須賀君より恵まれているがMAXは同程度で直球は常時１１０ｋｍ前後を計測。
8回裏の山梨吉田高校は振り逃げや四球２つで２死ながら満塁のチャンスを作るが無得点に終わる。
９回の攻防も無得点に終わり延長線へ突入した１０回裏山梨吉田高校の攻撃。
１死からサードのエラーで１番桒原君が出塁。四球と３番の大型一塁手岩田君のレフト前ヒットで１死満塁、サヨナラのチャンスを作る。
ここで4番田辺君が粘った末に放った打球はセンター前へゴロで抜けていった。３塁ランナーの桒原周君がホームベース上で大きく飛び跳ねて着地した瞬間が山梨市川高校の選抜出場が絶たれた瞬間となった。
試合の序盤ではヒットを放つが得点に結び付けれなかった市川と、中々ヒットが出なかったが少ないチャンスから先取点をもぎ取った山梨吉田。
試合終盤になり吉田高校の良い当たりが目立つ様になり勝利の女神は山梨吉田に微笑んだ。
山梨吉田高校は次戦、山梨県内では圧倒的な戦力を誇る東海大学甲府高校と４強入りを掛けて対戦する。
今回は同じ様なチームカラーの高校との対戦となったが東海大学甲府高校は猛打を誇る異質なチームカラーの高校。
山梨吉田高校がどう対峙し勝利をもぎ取っていくのか注目してみたいと思う。
(文・写真＝木内 慎治)
