試合レポート

甲府西vs富士学苑

2011.09.25

甲府西vs富士学苑 | 高校野球ドットコム

試合シーン

互角の戦い、勝利の行方は?

 1978年の秋 同じく山梨県大会8強に名を連ねていた甲府西高校。単位制高校への転換や、進学校化などあり野球部は近年低迷が続いている。
都留高校を2007年選抜に導いた長田成記監督が異動で赴任してからはいずれ強くなるであろうと目されている野球部である。前試合でシード校の帝京第三高校を破り波に乗っている。

対する富士学苑高校は近年力を付けている。富士北麓地区の私学の雄と言っても良いだろう。一昨年夏は惜しくも決勝で敗れた。今夏は2年生主体のチームながら、東海大甲府高校を最後まで苦しめ1−3で敗れたものの秋の活躍を期待させた。

昨年秋からエースの小俣貴俊君を中心に守り、しぶといバッティングで今秋も勝ち上がってきた。初戦の甲府商業戦は伝統校相手に終盤の逆転劇で劣勢を跳ね返し勝ち上がってきた。決して派手さがある訳ではない。少ない得点差で勝ち上がってくるのはベテラン名将の上野貴士監督の采配も大きいと言えよう。

甲府西高校は秋から背番号1を背負う1年生 斎藤烈君が先発。
163cmの小柄ながらどっしりとした体格から120kmを超える速球、100km台のスライダーと90km前後のカーブを投げ込んでくる。1年生ながら完成されたフォームで、この90km台の変化球が切れ味が鋭い。将来性を存分に感じさせる投手である。

富士学苑の先発は背番号1の小俣貴俊君。昨秋からのエースは最終学年のスタート地点も背番号1を背負う。173cm58kgの華奢な体格から130km弱の速球と110km弱のスライダーをコントロール良く投げ込んで来る。

3回までは両チームともランナーを出すがあと一本が出ず0点の行進となる。中盤に入った4回表 甲府西高校の攻撃。4番功刀君のライト前ヒット、送りバント、6番竹野君のレフト前ヒットで1死2,3塁のチャンスから7番藤原君のレフト前タイムリーで1点を先制する。 なんとも鮮やかにヒットをつなげた先取点だった。


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小椋君(甲府西)

それ以降も両チームの均衡状態が再来し8回表まで0点の表示がスコアボードに続く。
決してヒットが出ない訳ではない。ランナーは出ている。得点圏にも進めているがあと一本が出ない。本当に互角の力が対峙している。

甲府西は8回まで富士学苑を無失点に抑えてきた斎藤君に変わり背番号10、2年生の長身左腕の小椋君がマウンドにあがる。180cm近い長身を生かしたオーバースローから130km近い速球を投げ込む。
追い詰められつつある富士学苑は変わった直後の小椋君から2番外川君がレフト前で出塁。外野フライ2つで2死1塁となってしまうが5番、6番の連続ヒットで2死満塁とし7番 捕手で主将の青木君を迎える。2ストライクと追い込まれるがバスターの構えから上手くライト前へ運び、遂に同点に追いつく。塁上で雄叫びを挙げる青木君の姿から気合で打ったことが伺えた。

9回の表裏も終了し延長線に突入。ナイター照明が点灯する。
9回裏の富士学苑の先頭打者は9番小俣貴俊君からだった。 ここを勝負と見たのか 上野監督は夏も活躍した椙浦君を代打に送るが無得点に終わってしまう。

10回表からライトを守っていた背番号11室内君がマウンドへ上がる。足のタメが独特なフォームから投球する右上手投げの投手。この日は最速115km。常時110km台のストレートと100km前後の変化球で組み立てていた。

10回表 甲府西は1死からショートゴロエラーで出塁。捕逸と内野ゴロでランナー三塁まで進め3番山口君のセンター前で1点勝ち越し2−1とする。粘っていた山口君。最初は室内君の独特なフォームにタイミングが合わなかった。ヒットを打った投球時は、一度軸足に移した体重を室内君のタイミングに合わせて再度 体重移動しなおして放ったヒットだ。 瞬時に対応できる所にセンスの良さを感じさせる。


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勝利を喜ぶ甲府西ナイン

10回裏 富士学苑の攻撃は1死から振り逃げとヒットで1死1,2塁とする。ここで8回に同点打を打っている7番青木君に打席が回る。今回の打席は初球からバスターの構えで望む。甲府西 小椋投手に力が入ったのか内角を突いた球が痛恨の死球となり1死満塁。 続く8番山下君の内野ゴロの間にランナー生還し同点においつく。

 

一進一退の攻防はいつまで続くのか。14回裏までは今までと同様。
両チーム共にランナーは出るが あと一本が出ない。

15回表の甲府西の攻撃。3番からの好打順も内野ゴロ2つで簡単に2死となってしまう。しかし5番田中君が四球を選びランナー一塁とする。
続く6番竹野くんが放った打球はレフトの頭上を超えていくタイムリー2ベースとなり3−2と勝ち越す。続く7番藤原君はライト前へ運びランナー生還で4−2。二死からの攻撃で2点を奪い取る。 勝ちが無くなりかけ再試合が選手たちの頭の中によぎり始めたであろう状態からの得点。
甲府西のベンチや応援席は一気に沸き立つ。

15回裏、今までの攻防から大いに逆転を期待する富士学苑の応援団。
保護者と生徒会が一緒になりブラスバンドは無いながら口ラッパでいつもの曲をいつもの様に演奏する。 その手拍子は一段と大きくなる。
しかし、甲府西小椋投手に3者凡退に討ち取られ試合終了。
3時間26分に及ぶ試合は甲府西高校の勝利で幕を閉じた。
惜しくも富士学苑最後の打者になったのは8回にタイムリー、10回に死球を誘いそれぞれの同点劇を演出した青木捕手であった。
青木君から この悔しさを忘れず夏に必ず甲子園に行きますという言葉を貰った。
あと1年弱。 来年の夏、うだる様な暑さの中 きっと成長した富士学苑ナインを見せてくれるに違いない。

(文・写真=木内 慎治)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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