試合レポート

都留vs白根

2011.09.13

都留vs白根 | 高校野球ドットコム

円陣を組み気合を入れる都留ナイン

元気、本気、俺達の目標は甲子園。

 試合開始前のキャッチボールやトスバッティングに特徴のあるチームがある。山梨県立都留高校。キャッチボール前に今日の目標や意気込みを肩組みした円陣で表現していく。

 キャッチボールがはじまれば一見すれば普通のキャッチボールだがよく見るとテキパキと必要なことを短期間で仕上げていく。何のためにするキャッチボールなのか意識付けがしっかりしているのだろう。
 トスバッティングがはじまると、その意識付けによる素早い行動が更に顕著になる。当番の笛の合図をもとに一斉に攻守が交代する。当然だが、沢山打ちたければ上手くならなければならない。

 全国規模でみれば、そういった取り組みを行いつつある学校は何校かあるだろう。しかし山梨県では非常に珍しい。ある意味での首謀者という言葉を使えば、それは母校を率いて未だ数年の柏木監督だろう。ここ数年、都留高校が変貌しているのは柏木監督の手腕によるところが非常に大きい。

 就任間もない2009年夏大会の初戦。好左腕を擁する富士学苑高校との試合。大会前評判や新聞の予想ではどの紙面も都留圧倒的不利と暗に書くものばかり。それもそのはず、秋、春とも都留高校は初戦で敗退している。

 春は駿台甲府高校に0-2で完封負け。それまでの公式戦では6失点。得点はわずか2点だった。しかし結果は7-3で富士学苑を破ってみせた。熱血漢の柏木監督の素晴らしい特徴の一つに最後まで諦めない事は当然ながら、最後1分1秒まで、やるべき事を噛み砕いで指導する。勝手な想像だが上述の富士学苑戦も何点か取れて接戦に持ち込めれば等という安易な考えではなくどうすれば勝てるのか、どうすれば良いのかを考えた上で短い時間の中で最大限のレベルアップをした結果なのだろうと思う。

 試合開始前のベンチでの円陣にも特徴がある。

 ”俺たちの目標は甲子園!”と単純に目標を連呼する円陣とは違い、円陣中心の選手が体全体を表現して腹の底から声を出し最大限の笑顔でナインを鼓舞しながら目標を口にする。

 対する白根高校は南アルプス市にある県立高校だが地理的に甲府市に近い事や、同じく南アルプスには巨摩高校という伝統校もあり野球の選手層という面では見劣りしてしまう。あえて白根でという選手が少ないのが現状だろう。しかし、薄い選手層の中、毎年特色のある選手を産み出してくる。 


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力投する佐藤(都留)

 白根高校の先攻ではじまった試合、初回2死から内野安打で出塁するも後が続かない。都留高校の先発は1年生左腕の佐藤優騎君。左のオーバースローから最近では珍しく振りかぶって投げてくる。

 当日のMAXは128km前後であったがキレが良く130kmを超えているのではと思わせる球も見受けられた。また100km弱の縦の変化球で緩急を付け打者を打たせて取る事を身上としている様だ。

 168cm62kgとヒョロッとしているという表現がしっくりくる。今年の冬、来年の冬と順調に成長していけば全国に名が知られる投手になっていく素質は十分に備えていると思われる。

 2回裏、都留高校は四球と送りバンドとセンター前ヒットで1死一塁三塁の先制点のチャンスを演出。7番投手の佐藤君はスクイズをきっちり決め自らのバットで1点をもぎ取る。続く8番田中君はセンター前へ運び、更に1点追加。白根高校のエース中込君から2点を奪い取る。

 白根高校の先発はエースの中込涼介君。164cm45kgと非常に小柄な体格。速球は115km前後と昨今の高校野球では速さは感じない投手だが何故かこの投手、切れが良い様で120km台中盤のそれと同様に感じる。右上手投げのオーソドックスな投手だがテイクバックが非常に小さいく特徴があり都留高校も1巡目は捉えるのに苦労していた様だ。

 3回表、白根高校はサードゴロ悪送球と送りバンドで1死3塁のチャンスで2番原辰徳君がスクイズをきっちり決め1点を返す。白根高校の2番ファーストは原辰徳選手。そう巨人の現監督と同姓同名なのだ。親御さんがファンなのかもしれない。5回表、ここまで1失点で好投を続けてきた佐藤投手が突如崩れる。1死からライト前ヒットと送りバント、四球2つで2死満塁。若干の流れが白根に傾きかけてきた直後、レフト前で1点、さらにショートのエラーで1点、遂に3-2と逆転する。


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白根ナイン

 しかし5回裏、経験豊富な都留高校は四球、送りバント、死球で1死1塁2塁のチャンス。ここで白根高校はエース中込君からショートを守る柴田君に投手交代。速度レンジは中込君と変わらないがないが若干筋肉質な体型で将来性を感じる1年生だ。直後、投手ゴロに仕留めるも2塁に送った送球がセーフとなり1死満塁後、痛恨の押し出し四球で都留に同点とされてしまう。

 更に満塁は続き都留に流れが傾きかけ迎える打者は都留4番の星野選手。しかしショートフライで2アウト。続く打者も投手ゴロと追加点を奪えない。今後、上位進出して強豪校と対峙していくには少ないチャンスで最大の得点を奪っていく粘りが必要だろう。

 6回は白根・柴田君、都留・佐藤君が三者凡退に抑え7回裏。1死1塁3塁から3番佐藤博也君のライト前ヒットと5番鶴田捕手のレフト線ツーベースで6-3とする。8回裏から白根は投手交代でライトを守っていた花輪君がマウンドへ向かう。166cmながら120km台のキレのある速球を投げ込むサウスポー。先頭を四球で出してしまいワイルドピッチで2塁へ。

ここから都留高校の打線が遂に目覚める。

 昨年から不動の2塁手1番打者田代君のスクイズ、先ほどの7回にもタイムリーを放った3番佐藤博也君、5番鶴田捕手のセンター前ヒットで3-9とし、最後は押し出し四球で3-10、8回コールド成立でゲームセット。

 結果としてコールドゲームとなったが白根の善戦が光る好ゲームだった。白根高校としては3人の投手がそれぞれの特徴を持っていて春、夏に向けて細すぎる身体を鍛え上げれば化ける可能性は高い。守備陣も失策は無く安定している事から春以降のリベンジを期待したい。

 都留高校は次戦、優勝候補の山梨学院大学附属と戦う。3番佐藤博也君と5番鶴田君が非常に当たっているだけに4番星野君の復調次第によっては何かが起こる可能性は十分に秘めていると感じる。

 次戦まで約一週間。柏木監督と都留高野球部の最大限の努力は今日も続く。

(文・写真=木内 慎治)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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