都立墨田工vs都立篠崎
エース西村(墨田工)
今チーム、公式戦2戦目の都立墨田工が初戦突破!!
昨秋は地区予選初戦で敗れ、今春も東京都の1次予選が中止されたことで春季大会へ出場できなかった都立墨田工。
新チームになってからの公式戦は、この日が2度目だった。
公式戦に対する経験不足、メンバーが持つ勝負勘。また普段の練習場でも外野までのスペースを確保できないなど、実戦に対する不安が少なからずあったことは否めない。
それでも「選手たちは楽しんで戦ってくれました」(都立墨田工監督)と、先攻を取った都立墨田工は初回、四球で出塁した1番・吉澤が、送りバントとタッチアップで三塁まで進むと、4番・盛田の左前打で先制。
その裏、都立篠崎の先頭打者をエラーで出塁させると一死二塁から、3番・久冨木原の適時打で同点に追いつかれるが、都立墨田工ベンチに焦りはなかった。
先発を任されたエース西村は「今日のピッチングは50点でした」と時折、甘く浮いたボールを都立篠崎の打線に痛打されたが、5回まで要所を抑えて1失点の好投を続ける。
一方、都立篠崎は、「相手は真っ直ぐに合わせて打つのが上手いチームなので、変化球を得意としたピッチャーを先発に送りました」(都立篠崎監督)と、背番号10の唐鎌が初回から粘り強いピッチングをみせるが、4回に3四球とボールが先攻し始め、この回2失点。さらに5回、5番・中村の三塁打で4点目を追加され、ここで敢え無く降板。
二死三塁の場面から、エース番号を背負った鈴木がマウンドに上がると、強気のピッチングで7番・高野から3球三振。都立墨田工への流れを断ち切る。
そして6回、都立篠崎は9番・金子が中前打で出塁しチャンスをつくると、大会前までずっと不調だった1番・松舘が打席に入る。
「1点でも欲しい場面で、自分が打たないといけない」と、チームのキャプテンも務める松舘は甘く入ったストレートを上手く弾き返して左中間を割る気迫の三塁打で1点を返す。さらに2番・田中への初球がキャッチャーの脇を逸れパスボールとなった間に、松舘がホームに生還。
鈴木(都篠崎)
3対4と1点差に詰め寄った都立篠崎は、徐々に西村の球を捉え始めるが「守りでも気持ちが入っていました」(都立墨田工ナイン)と、外野手は好プレーを連発し、エースを盛り立てた。
「今日はストレートをなるべく浮かせないように、外角を上手く使いながらゴロを集めるピッチングを心掛けました。ただ、球が浮いたり、変化球のキレも悪くて調子自体は良くなかったのですが、今日は野手の守備にかなり助けられました」と試合後に西村が振り返ったように、この日は全員戦で戦い抜いた。
8回裏、都立篠崎は一死一、二塁の場面でクリーンナップに打席が回るも、ここで西村に代わった2年生投手・工藤が僅か6球で相手の3・4番打者を三振と内野ゴロに打ち取りピンチを切り抜けると、最終回も気迫のピッチングで無失点に抑える。最後の打者をセカンドライナーで打ち取った瞬間、工藤はマウンド上で胸に手を当て大きく息を吐き出した。
この西村から工藤へのリレーは、これまでの練習試合で何度も行ってきた都立墨田工の継投パターン。
“いつもの野球”に熱い思いをプラスして、2度目の公式戦を白星で飾った都立墨田工ナイン。
「大会で試合が出来るのは楽しい。次の試合も笑顔で戦いたいです」(西村)。
夏の大会での一勝は、都立墨田工にとって、高い経験値となり彼らを今も成長させている。
(文=編集部)