宇部鴻城vs岡山学芸館
笹永(宇部鴻城)
勇気ある盗塁
1点ビハインドの終盤8回、2死一塁からだった。
代打で登場し、バントを失敗した背番号16が弱気にならず、自慢の足で勇気ある盗塁を決めたことから始まった。そしてその勇気に応えた宇部鴻城ナインが連打放ち、ローゲームの試合を決めた。
8回、先頭の7番・大野裕一が中前安打を放つと相手中堅手が打球の処理をもたついていた。それをみた大野は、すかさず二塁を狙いセーフ。宇部鴻城は無死二塁という絶好のチャンスを得た。
次打者は、先発として好投を続けていた投手・笹永弥則。この場面で宇部鴻城ベンチが動いた。絶対に送りバントを決めるという意味で、50m6秒2の俊足で小技が巧い品川和輝を代打に送った。
しかし、バントした品川の打球は、投手前に転がり、二塁走者・大野は三塁ベースで刺された。これで1死一塁。
せっかくの流れが止まったかに思われた。
次の代打・橋本純もカウント3ボール2ストライクまで粘ったが中飛に倒れ、2死一塁。
ホームインした品川(宇部鴻城)
この場面で宇部鴻城の尾崎公彦監督はさらに積極的に仕掛けてきた。チーム1、2を争う俊足の品川に出されたサインは盗塁。1点差の終盤、失敗したら完全に流れが相手にいってしまうこともあるだけに、強い気持ちが必要な場面だった。
「自分がミス(送りバント失敗)をしたので、『それを取り返すんだ』という強い気持ちを持って走りました」(品川)
そして決めた。間一髪のセーフである。
ツーアウトながら二塁というスコアリングポジションをつくった。
そして続く1番・藤本涼太が内野安打で同点とすると、2番・下石湧太も適時二塁打を放ち、宇部鴻城が逆転に成功したのだ。
まさに「野球はツーアウトから」とはこのことである。
同点の内野安打を打った1番・藤本と逆転の二塁打を打った2番・下石がここ一番で魅せた打撃は本当に素晴らしかった。しかし、自らが潰したチャンスに挫けず、再びチャンスをつくった品川の勇気ある盗塁を称えたい。
そう、試合の中で目立たなくても君の勇気ある盗塁はチームの勝利に大きく貢献したのだから。
(文=アストロ)