向上vs厚木北
背番号21の2年生右腕・塚脇(向上)
向上13安打10得点で初の関東大会進出!!
ヒーローは日替わりで生まれた。
この日、向上が初の関東大会出場をかけた準決勝のマウンドへ送り出したのは、背番号21の2年生右腕・塚脇だった。
試合開始前、そして試合中もイニングごとに仲間から「落ち着いていけ」「大丈夫」と声を掛けられ、その度に強く頷きながらマウンドへ駆けて行った塚脇は、力のあるボールで厚木北打線を5回無失点の快投。彼もまたこの日のヒーローだった。
そして、そんな後輩の頑張りに応えるように打線も奮起。初回、1番浅井がセンター前ヒットで出塁すると、3番廣川の二塁打。さらに4番栫、6番西川、8番塚脇と、厚木北の先発・小川を畳み掛け5得点。その後も、向上ベンチは「毎回点を取ってこうぜ!」と差が開いても気を緩めることなく、攻めの姿勢を見せ続ける。
4回には、一死一、二塁の場面で4番栫、5番渡邊の連打で3点を追加。
さらに5回には、1番浅井の2ランで10対0と厚木北を突き放す。その裏、厚木北は、向上の塚脇を打ち崩すことができず、5回コールドで試合終了。
「これまで相手が点を取ると気が抜ける部分があったので、今日はお互いに声を掛けたり、プレーが雑になるところもなく良かったです。打線も今まで打てずに苦しんでいたんですけど、今日はとにかくベルト付近の高いボールやファーストストライクを狙っていこうと話して、やっとつながってくれましたね。選手がこれまでの練習で、それぞれ工夫してきた成果が出たと思います。塚脇に関しても地区予選ではメンバー外だったのですが、ここにきて調子を上げてくれたので先発で起用しました。はじめに先制点を挙げられたことで塚脇も落ち着いて投げられたのでしょう」(平田監督)。この塚脇に続いて、もう1人のヒーローが1番浅井だ。
浅井(向上)
浅井はここまで2試合でノーヒット。それでも、初回に先頭で出塁し流れを呼び込むなど、得点を入れたイニングには全て浅井の安打が絡むなど活躍をみせた。
「チームのみんなからも、もっと気楽に打てよと試合前からアドバイスをもらっていたので、今日は思いっきり、迷うことなく振り抜きました」(浅井)。
積極的な攻めと、計算できる投手陣、さらに熱いベンチワークで、ここまで勝ち上がってきた向上高校。
今チームは、試合前には必ずメンバーも含め、全員で球場の周りのゴミ拾いからスタートするという習慣もつくった。
強豪ひしめく神奈川の地で、どうやって野球に取り組めば、上に勝ち進むことが出来るのかをこの冬は常に考えてきたという。
向上はグラウンドも全面使えない。外野もライトの守備位置を取ることができない。そんな狭いグラウンドの中に、113名が並んで練習をしている毎日だ。
決して恵まれた環境とは言い切れない中でも、この春、まずは神奈川の決勝まで駒を進めてきた。
「明日も勝ちにいきます」そう力強く話す向上高校の躍進に注目だ。
(文=編集部)