智辯学園vs橿原学院
栗本が特大の3点本塁打(橿原学院)
橿原学院、王者に惨敗も収穫と課題
またも、あと一歩及ばなかった。
昨春に引き続いて、智弁学園に立ち向かった橿原学院だったが、またも競り負けた。
「去年とは違うゲーム展開の中だったんですけど…」と橿原学院・竹村監督は、収穫と課題が入り混じった試合内容に複雑な表情を浮かべていた。
収穫は1回戦でもつながった打線の充実である。
先頭の津田を切り込み隊長にした打線はコールド勝ちした初戦同様、活発だった。2点を先制された直後の3回表、先頭の津田が左中間を破る二塁打で出塁、続く中嶋がセーフティーバントを成功させ、無死・1,3塁と好機を拡大すると、3番・前田が中前適時打で1点を返す。4番・生田が併殺崩れで1、3塁とすると、5番・中田が中前適時打を放ち同点。続く栗本が特大の3点本塁打をスタンドに放り込み、勝ち越しに成功したのである。
一気の5得点。打線が看板の智弁学園を前にしても、橿原学院の打線は劣ってはいなかった。竹村監督は言う。
「ホームランはおまけだと思いますけど、去年とは違うチームカラーの中で、走者を出し、きっちりタイムリーが出た。試合展開が相手に行きかけた中ですぐに5点を取って、試合の流れを相手に渡さなかったことは自信になりました」
3、4回で試合をひっくり返されてしまうのだが、5回に1点を返し、引き下がらなかった。智弁学園・先発の木村、小野を打ち崩し、エースの青山を引きずり出したことは大きな収穫と言えるだろう。
日下部(橿原学院)
一方の課題は、投手陣である。
なかでも、身長194センチからの投球が魅力で「ドラフト候補」と騒がれるエース・日下部のパフォーマンスは不満の残るものだった。彼が投げた1~4回までは先頭打者を出し6四死球、「初戦に引き続き大いに不満」と竹村監督の歯切れも良くない。
極端なインステップからの制球力だけが問題ではなく、それ以上に、彼の立ち居振る舞いが納得できるものではなかった。マウンドへだらだらと向かうなど、野球に真摯に取り組んでいるようには見えないのだ。「本人も、いっぱいいっぱいの中で自問自答しながらやっていた部分もあったんでしょうけど、チームメイトから『よし必死に守ってやろう』と思わせる姿勢ではない」と竹村監督も手厳しい。「気持ちの部分が一番大切。そうでないと、技術的に伸びていかない。勝てる投手にはなれない」と続けた。
とはいっても、この春は、日下部に頼り切っていた現状がある。「(昨年秋はエースの)生田は調子が良くなく、ストライクも入らない状況だった。前日にフォームを代えたばかりで、調整に100球くらい投げていた。終わってみれば、生田が最初から投げていればというような展開ですけど、練習試合では日下部は抑えていましたし、生田を簡単に送りこめる状況ではなかった」と竹村監督は言う。
良くも悪くも、日下部に頼り切った春だったのだ。これからも、新聞や雑誌などの注目を浴びてしまう日下部の存在は、大きな意味を持つ。「まだ、彼は何も成し遂げていない」と指揮官が言うよう、周囲の評価と現実のギャップと戦わなければいけないのも事実だ。だが、このジレンマにさいなまれながら、日下部本人だけではなく、チームがどう向き合えるのか、橿原学院の成長はそこにある気がしてならない。
相手の智弁学園は常に注目を浴びる存在だ。ここ2年は甲子園に出られていないとはいえ、彼らも世間の注目を乗り越え、結果を残してきた日々があった。
2年連続して智弁学園に惜敗した糧にしながら、ある意味で注目されるこの困難を、どう乗り越えるか。橿原学院が県の強豪チームへと成長を遂げるためには、乗り越えなければいけない。