国士舘vs日大二
川内君(国士舘)の二塁打
乱れ飛んだ5アーチ、熱闘14回最後は国士舘のサヨナラ弾
まさかこんな展開の試合になろうとは…、というのが正直なところだった。
9回2死、2点リードした日大二はあと一人抑えれば勝利という場面だったが、九番本村君に四球を与えると、続く川内君が中越本塁打してたちまち同点とされてしまった。
9回までで3時間。両チームともに毎回のように複数の走者を出していて、ともにあと一つ攻めきれずに、お互いが14残塁ずつというやや拙攻気味の展開でもあった。何しろ、3者凡退は一度もなし。いつどちらに大量点が入ってもおかしくないという中で、2回に日大二が岩槻君の3ランなどで作った5点のビッグイニング以外は、お互いの投手が何とか持ちこたえていた。
こうして、延長に突入して10回、初めて国士舘は4回途中からリリーフしていた本村君が3者凡退に抑える。しかし、それで流れが国士舘に傾くかというと、そうもならず、その裏四球を出したところで限界とみて日大二は田中吉樹監督が、先発竹内君に代わって、一か八かで送りだした左腕北村君が何とか凌いで延長はさらに続いた。
11回、日大二は先頭の西川君が出会いがしらのような一発を左翼に放り込んでリード。これで日大二が逃げ切れるかと思いきや、そうはいかず、その裏国士舘は一ノ瀬君の内野安打から好機を作り、9回に起死回生の2ランを放った川内君が再び、今度は右打席で右中間へ同点の二塁打を放った。これでもう一度タイに並んだ。それにしても、川内君は左右の打席で、ここ一番の場面で打てる集中力は素晴らしい。
なおも1死二塁で、今度はそのまま国士舘にサヨナラのチャンスとなったのだが、今度はここで北村君がまた踏ん張った。こうして、試合は、14回までもつれ込むことになったのだが、14回裏、国士舘は1死から、この試合初打席となった岩川君が思い切りよくスイングした打球は、スーッとライナーで左翼スタンド向こうのネットを揺らした。劇的なサヨナラ弾となった。
延長11回、国士舘再び同点相馬君ホームイン
試合時間、何と4時間17分。6点を跳ね返した国士舘もさることながら、後半何度もサヨナラの場面を迎えながらも、凌いでいた日大二の守りの粘りも、それはそれで評価されてもいいだろう。もちろん、指摘すれば内容的には反省材料もいっぱいあったかもしれない。風が舞っていたとはいえ、内野飛球の落球による失点もあった。悪送球やワイルドピッチもあった。死球もお互いにあったし、振り逃げもあった。毎回のように複数の走者を出しながらあと一本に決め手を欠いたことで、残塁の山を築いていく攻めも課題となるかもしれない。
それでも、最後のところで何とかこらえていこうという姿勢を示すことで、お互いが粘りということでそれぞれの収穫を得たということは言えそうだ。そのあたりのところは勝った国士舘の箕野豪監督も十分に納得していた。「多くの学校が、一次予選もできなかったという状況の中で、こうして公式戦として戦えることはありがたいと思わなくてはいけません。そして、どんな試合であれ、公式戦という場で戦えることによって得られることは大きいと思いますから、こうして勝てたということはそれだけで意味は大きいです」と、この試合の意義を見つめていた。
また、結果的には6点リードをキープしきれなかった形になってしまった日大二の田中吉樹監督は、さすがに疲れた様子だった。それでも、「やっぱり、この壁を破ることが出来なければ次へはいけませんね。もちろん、6点でそのまま逃げ切れるとは思っていませんでしたけれど…。ただ、それでも延長の同点とされた場面でその後を北村はよく投げましたよ。あんな場面で投げたことなんかなかった投手ですから、それを抑えることが出来たのは大きいと思います。ただ、最後までは、誤魔化しきれませんでしたね」と、苦笑しながら語っていたが、勝っても負けてもいつも接戦という日大二の野球。その、最大の日大二らしさ、田中監督の提唱する「二高魂」を示すことは出来たのではないだろうか。次の課題は、それこそ、あと一枚の壁をどう破っていくのか、そのことに尽きると思う。
(文=手束 仁)