試合レポート

都立片倉vs都立昭和

2011.04.07

都立片倉vs都立昭和 | 高校野球ドットコム

飯島(昭和)

春の陽光の下、爽やかな好ゲーム展開

 試合時間1時間30分足らず。スピーディーな試合だったからということだけではないが、やっと訪れた春らしい陽光の下、いい雰囲気の好ゲームだったという印象だった。

 スコアそのものは若干開いてしまったものの、正直なところ、得点差ほど両チームの力の差はないと思う。昭和は昨秋の東京都大会でベスト4に進出して注目された。これまでも、04年夏の西東京大会4強、06年には斎藤佑樹投手のいた早稲田実を追いつめ、その翌年にもベスト8に進出と、近年の実績は目覚ましい。その間、田中吉樹監督(現日大二)から田北和暁監督(現町田工)、そして現森勇二監督と指揮官が交代しながらも、伝統として引き継がれているところが素晴らしい。学校としては、自由な校風なのだが、そんな中であえて野球部としての存在感が、いい意味でいい雰囲気を作ることが出来ているともいえそうだ。

 その都立昭和は右スリークォーターの飯島君が先発で、威圧感はないものの丹念にコースをついて打たせて取っていくというタイプだった。一方、都立片倉の後藤君は右下手投げで、自分の持ち球がどういうものかということを熟知した上で、配球やプレートの踏み方や球速などを考えながら、どのようにしたら打者を効率よく打ち取ることが出来るのかということを十分に工夫しながらの投球だった。それが、結果的には3安打完封につながったといえるのではないだろうか。

 試合は、初回の相手の攻撃をあっさりと三人で退けた片倉がその裏、2死から沖辺君が内野安打で出ると、「この回を早く終えたい」という飯島君の気持ちを見透かしたかのように、中島君が初球を狙い打って右中間二塁打で沖辺君を迎え入れて先制した。

 その後は、両投手の投げ合いとなったが、2、3回は昭和が無死の走者を生かしきれなかった。後藤君が走者を出しながらも自分のペースを崩すことなく投げていた。それが、やがて中盤以降のさらなる自分のリズムの好投につながっていったともいえよう。

 次の得点が大きく試合の流れを作るのではないかと思われたが、5回、片倉が一気に試合を決めた。この回、四球とバントで1死二塁から、一番今井君が右中間を破る二塁打だが、走者の判断ミスで本塁へ帰れず二三塁。しかし、続く周藤大君が三遊間を破って三走を帰すと、さらに沖辺君が右前打して野手が後逸する間に三塁まで進み、二者を返した。小林君の右犠飛で沖辺君も帰ってこの回4点。後藤投手の出来からしても片倉にしてみれば、かなり優位に立てる大きな4点だった。


都立片倉vs都立昭和 | 高校野球ドットコム

片倉・沖辺君が先制ホームイン

 8回にも片倉は二番手として踏ん張っていた奥村君に対して、1死から出た走者をバントで送り、暴投もあって三塁まで進めると八番杉浦君が中前へはじき返して、ダメ押しのダメ押しとも言える6点目を奪った。

 昨秋の4強相手の快勝に試合後、片倉の宮本秀樹監督は、「えっ? 3安打? 序盤走者が出ていたから気がつかなかったけれど、そうですか。走者を出しながら粘るというのはあいつ(後藤投手)の持ち味ですけれども、よく投げていましたね。試合そのものは、少しラッキーもありましたけれど、いい形でできたと思います。とにかく、秋に完敗している二松学舎にリベンジしたいと思ってやってきましたから、守りもよくなったし、やっとその機会ができそうです」と先を見据えていた。

結果としては完敗となってしまった昭和・森監督は、「昨秋ベスト4だったからという意識はありません。そのあたりは大丈夫です」と、選手たちは秋の結果に対しての奢りはないとした上で、

「やっぱり、序盤のチャンスで何とかしなくてはいけませんでした。このところ練習試合でも打っていたし、下手投げでくることもわかっていましたから、その対策も十分に練ってきたのですけれども、それでも相手のペースにハマってしまったというのが残念ですね」と悔やんだ。158cmの和賀主将は、応援に駆けつけてくれた父母や関係者に対して、「この負けが、夏に生かせるように、もっともっと練習していきたいと思います」と、気持ちを引き締めて頑張りたいと語っていた。再スタートへは意欲的だった。

そんな選手たちを、ようやくほぼ満開に開いた駒沢公園の桜の花がほほ笑みながら見つめて激励しているかのようでもあった。春季大会、負けもまた、次のステップアップへの材料である。
それをどう生かすか、それもまた春季大会を戦う意味なのではないだろうか。昭和の選手たちは、その負けをきっと次に生かすことが出来るだろう。そんなことを感じさせてくれる空気があった。

(文=手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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