八王子vs法政大高
内山君(法政大高)
八王子“ありんこ軍団”の本領は見せたが
7回までの試合展開から考えても、まさかこんな結果になるとは予想していなかった。だけど、こういうことがあるのも高校野球。
本当に、「勝負は下駄を履くまでわからない」と言うけれど、まさにその言葉がぴったり当てはまるような試合だった。
6点リードされて迎えた八王子の7回の守りは、先頭の二番宮坂君に二塁打される。この走者が帰れば、その瞬間にコールドゲームが成立する。しかし、この走者を刺して一難逃れた。ところが、続く浅井君に四球を与えてしまい、ピリッとしない。ラオクス君が右前打でさらに一三塁かと思ったが、ここは三塁で刺して2死。後続を抑えて何とかこの回のコールドゲームを逃れた。
そして、8回の攻撃で敵失に乗じて好機を得て暴投と降幡君の右中間二塁打でやっと2点を返した。
ここで、法政大高はここまで3安打に抑えて好投していた先発内山君を思い切って下げて、左腕北原君を送りこんだ。
この回は何とか抑えた北原君だったが、9回の先頭桝澤君に右線二塁打されると、守りもバタついてしまい、失策と内野安打に暴投あって2点差。たまらず法政大高ベンチは3人目の右横手投げの荒井君を送りこんだが止めきれず、一番菊池君の一打は野手の股間を鋭く抜いていき、中継の乱れる間に満塁の走者が一掃された。まさかの大逆転となった。
八王子は毎年上位に進出し、都内強豪私学の一角には上げられるのだが、甲子園出場はまだない。どうしても、周辺の少年野球のスター選手だった選手たちは日大三など甲子園実績のある学校へ進むことが多い。それだけに、選手たちは中学時代は二番手だったり、控えだったという選手も少なくない。それでも、素質に恵まれなくても、ありのようにコツコツとひたむきに努力していけば何とかなるという思いで、現部長の池添法生監督時代から“ありんこ軍団”というのをチームのモットーとして掲げていた。それは、安藤徳明監督になっても継承されている。
桝澤君(八王子)
この日の8回、9回の粘りは、そんな“ありんこ軍団”の本領を発揮したといってもいいものであろう。
とはいうものの、内容的には反省材料だらけというのも本心だろう。法政大高打線を抑えきれなかった投手陣、法政大高の先発内山君のスーッと沈んでいくようなスライダーに翻弄されて、序盤から中盤は手が出なかった打線。もうひとつ工夫が欲しかったというのも、本音だろう。注目の好打者、桝澤君も2三振を喫していた。何しろ7回までは、初回に先頭の菊池君が放った二塁打一本のみだったのだ。
また、法政大高としても、初回に五番野澤君の三塁打で2点先取し、6回には八王子の二番手太田君が不安定なところに突け入って好機を得て、満塁で安田君の中前タイムリー打や内山君の二塁打などで4点を挙げていい形の展開になりながら、7回の逸機など、もっと取るべきところでとれなかったことが、結果的には逆転を許すことになってしまった。
それにしても、8回、9回でこんな展開になってしまうとは、法政大高の植月文隆監督も改めて継投の難しさを痛感したことだろう。
(文=手束 仁)