試合レポート

鹿児島実vs浦和学院

2011.03.27

鹿児島実vs浦和学院 | 高校野球ドットコム

佐藤 拓也(浦和学院)

「機能しなかった打者・佐藤」

 昨秋の関東大会、明治神宮大会と浦和学院の戦いをご覧になられた方は、この日のオーダーを見て驚かれただろう。
1番を打っていた佐藤拓也(2年)が6番に下がっていたことだ。
 この日のオーダーは、
 1番日髙史也(3年)
 2番遠藤生(3年)
 3番小林賢剛(3年)
 4番沼田洸太郎(3年)
 5番石橋司(2年)
 6番377(2年)
 7番森光司(3年)
 8番笹川晃平(2年)
 9番荒井大樹(3年)
と並ぶ。日髙は秋は5番、6番の石橋を上げて、そこに佐藤を入れた。

「佐藤の負担を減らしたかった」と冬場に構想を練り直した森士監督は話す。
実は甲子園練習の時、佐藤はこの春の練習試合になって6番を打つようになったことを明かしている。
本人的にはやはり1番でピッチャーというのにこだわりがあったようで、少し腑に落ちない表情をしていたのが印象的だった。


 浦和学院のオーダーに驚いたのは鹿児島実業陣営。
宮下正一監督は「一冬超えているので、打順が変わってくる可能性はあると思っていました。でも、3番くらいに入るのかなと」と話す。
エース野田昇吾
(3年)の球を受ける捕手の黒木兼太朗(3年)は、
「オーダーを聞いてびっくりしました。日髙君も良いバッターですが、佐藤君が1番にいないのは、もの凄く楽でした。彼を打たせるとチーム全体が盛り上がりますから」と心理的に大きかったことを明かしてくれた。

1回表、野田を攻めた浦和学院打線は1点を先制する。しかし、6番に入った佐藤に廻らず攻撃が終わった。
自ら「どちらかといえば先攻がいい。自分で打って投球のリズムを作る」という佐藤はネクストバッターサークルでどんな心境だっただろうか。

一方の鹿実・宮下監督と黒木捕手はこの佐藤に廻らせなかったことについて「大きかった」と口を揃えている。
実は鹿実にとっても1番打者に不安を持っていた。
切り込み隊長である平山大海(3年)が大会直前に右足を痛めていたからである。
この日は試合前のノックから本来の動きでなかったのは否めない。
しかし宮下監督は「平山は起用するとしたら1番しか考えてない」と打順をいじることが頭によぎることはなかったと強調した。


話を試合に戻す。
1回裏、打撃でリズムを作れなかった佐藤は鹿実打線にすぐに追いつかれる。
2回以降も、昨秋のような大胆なピッチングが見られない。中盤一旦はひっくり返した浦和学院だが、佐藤のリズムはなかなか戻らず、すぐに逆転された。森監督は佐藤について「2年生の弱さが出た」と厳しい口調。

鹿実2点リードで迎えた8回表、浦和学院は先頭の笹川が内野ゴロエラーで出塁。続く代打の今栄尚人(3年)がエンドランを決めて1、3塁とする。
打席には1番日髙。捕手の黒木は「この場面が佐藤君なら嫌だったです」と偽らざる心境を明かす。
結局日髙をサードゴロに打ち取ると、その後のピンチも凌いだ。
この時点で試合の大勢は決したと言って良い。

『佐藤の負担を減らす』という森監督の方針は理解できる。甲子園という大舞台ならなおさらだろう。
しかし、佐藤性格的なの特徴と、打順を変えて公式戦を戦ってなかったという2点で、今センバツでは酷だったかもしれない。

夏まで見据えたうえで、指揮官が様々な戦略を練るのが冬。しかし、あれこれ考えすぎるという欠点も付きまとう。
今センバツという視点では打順変更は相手を楽にさせた。
だが、夏に向けてどう進むか、それがこの打順変更の答えと言えるだろう。
佐藤が打撃で機能して勝ってきたイメージを、チームが持ちすぎていたのも敗因の一つと言えよう。

(文=松倉雄太)

(撮影=中谷明)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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