知立vs岡崎工
本山弘樹(岡崎工)
古豪復活担う岡崎工・本山の成長を期待
昨夏の愛知県大会の出場校は188を数え、全国で最多である。188もあれば、県内至る所から「有望選手」が出てきて、追いかけるのが大変だ。名古屋市内にある「私学4強」は全国的にもメジャーで脚光を浴びやすいが、県の東部にあたる「三河地方」からも、去年の千賀滉大(蒲郡→ソフトバンク育成)のような好素材が毎年現れる。
この日注目したのは、その三河地方にある岡崎工のエース・本山弘樹だ。身長179センチで、体型もピッチャーらしい。ノーワインドアップのモーションからしなやかに腕を振り、球の回転がきれいだ。ひと目見ただけで、好投手だと感じさせるフォームをしている。
ただしこの日の本山は本調子ではなく、序盤から苦労の連続。とうとう5回裏には、4者連続与四球や3連続被安打により、8失点を喫してしまった。本格派投手にありがちな、微妙な感覚のズレによるコントロールの喪失や、相手バッターにとって速球が「打ちごろ」のボールになってしまう場面もあった。
ただ、まだシーズンは幕を開けたばかり。今回の炎上だけでどうこう言えないし、本山の野球センスは存分に見て取れた。
大野拓也監督は「本来は、投球の組み立てがきちっとできる投手です。牽制も身に付けています(この試合でも牽制アウトが2つ)」と話し、この日の乱調を「以前ヒジを痛めた関係で、最近まであまり投げ込みが出来なかった影響があるのでしょう」と分析した。
ワンプレーや「流れ」により大量失点が引き起こされるのは、高校野球ではよくあること。5回裏の本山にとっても、不運な要素はいくつかあった。もちろん、それを食い止めてこそエースなのかもしれないが、目先の失敗にめげず、レベルアップを続けてほしい選手だ。
長谷部嵩(知立)
岡崎工は過去2回(1974年・76年)、センバツ甲子園に出場した「古豪」だ。その後、他の勢力に押されたが、大野監督のもと、昨秋には県大会で強豪・豊川を撃破し、いい流れが生まれつつある。くしくも来年は学校創立100周年。OBも盛り上がりを見せているそうで、立派なホームページも制作された。
この試合ではコールド負けを喫したが、チームがしっかりと野球に取り組めているのだと想像できたのが、2回表の攻撃だ。8番・金田拓己はセンター前へヒットを放つと、走者の本塁クロスプレーの間にしっかり二塁へ進んだ。
至極当然のプレーではあるが、対外試合が解禁されて間もないこの時期、試合勘も鈍り、当たり前のプレーができずに監督が雷を落とすシーンを練習試合などで案外見かける。それが無いだけでも、岡崎工の選手は集中できているのではないかと感じた。
勝った知立は5回裏、相手投手の乱調につけこみ、一気に試合を決めた。右打者がライト方向を意識してしっかりとスイングし、連打を浴びせた。中でも1番打者でキャッチャーの浅岡武俊は、うまくおっつけて右へ打てるし、守備での所作も悪くない。またリリーフで登板した新2年生の長谷部嵩は、果敢に攻める度胸満点のピッチングを展開し、得点を許さなかった。
昨秋、知立は岡崎工にコールドで敗れたが、その雪辱を果たした。
(文=尾関雄一朗)