水城vs春日部共栄
1年生で4番に座る萩谷直人(水城)
逆転を呼んだ4番の一打
関東大会も準々決勝を迎えた。選抜出場をかけた戦いで、お互い力を尽くして戦いあう。[stadium]市営大宮球場[/stadium]の第1試合は茨城代表の水城と埼玉代表の春日部共栄の対戦だ。
3回の裏、春日部共栄は無死三塁から1番小泉のライト前タイムリーで1点を先制。さらに4回の裏にも8番若山のタイムリーで1点を追加。そして6回の裏には竹崎のタイムリーで1点追加し、3対0とする。着実に得点を追加していき、エース竹崎も7回まで無失点と理想的な試合運びを見せていた。
しかし8回の表、水城は一死二塁から4番萩谷のセンター前タイムリーで1点を返す。二死1、2塁となって7番中村が甘く入った直球を捉えて左中間を破るスリーベースで一気に同点に追いつく。そして8番阿久津が放った打球はサードへ。しかし、打球はサードの股の下を抜けていった。水城はエラーで1点を勝ち越す。そしてエースの佐藤大がこの1点を守り切り、準決勝進出。選抜を当確させた。
強力打線で勝ち上がってきた水城。その中心は1番・谷井竜太(右/左 右翼手181センチ81キロ)、3番・小野瀬大勝(右/左 二塁手 170センチ71キロ)、4番・萩谷直人(右/左 中堅手 170センチ71キロ)だ。特に4番萩谷は1年生とは思えないほどの打撃技術と精神的な強さを兼ね備えたスラッガーである。甲子園ではあの一二三からタイムリーヒットを放ち、凡退した打席でも軸がぶれずに鋭い打球を飛ばしていた。初めての甲子園でも慌てることなく、自分のプレーをこなしており、最終学年になったときが楽しみな逸材だと思っていた。この試合では8回までノーヒットだったものの、内容は悪くなかった。
そして8回表、インローに入る変化球をしっかりと呼びこんでセンター前タイムリーを放った。4番萩谷のヒットからチームは勢いに乗り逆転した。もしあの場面で萩谷が打ち取られていたら同じ結果になったとは言い難い。逆転できるというムードを作った一打は見事であった。打撃だけではなく、守備力も高い。打球勘は良く、守備範囲は広い。地肩も中々強く、シートノックでは低い返球を見せた。走攻守のバランスが取れたスラッガーとして注目を集めそうだ。
1番・谷井竜太(水城)
また、1番谷井。この選手はノーヒットに終わったが、萩谷に負けないぐらいスケール感を持ったスラッガーだ。バットを寝かせてどっしりと構えから鋭いスイングを見せる。目線がぶれることが多いため、ミスショットすることは多いものの、軸がぶれずに体を開かずに打つことができるため強い打球を生みだすことはできている。
練習では柵越えの打球を連発している打者のようで、それを実戦の場で発揮できるようになれば、一気に注目される選手になるだろう。打撃だけではなく、守備も悪くない。肩はかなり強く、シートノックではダイレクトの返球を見せた。また怠り気味だったカバーリングもだいぶ良くなり、意識は変わりつつある。打撃では確実性の向上、守備では球際の強さを身につけていけば強肩強打の外野手として注目されるにも時間の問題だ。
3番小野瀬は甲子園では3番ファーストとして出場していたが、今日は3番セカンド。セカンドの守備だが、足さばきは良く、確実に打球を処理できていたいのは驚きだった。ノーステップ気味の打法だが、選手権よりもさらにクローズスタンスになった。内容自体は悪くなく、こすった当たりでもライトフライでもフェンス際に飛ばすことができるパワーは非凡である。一つ一つのプレーを全力でこなす選手で、姿勢もしっかりしている。彼のも楽しみな選手といえるだろう。
春日部共栄のエース竹崎裕麻(右/右 176センチ65キロ)は8回に崩れたものの、強力打線・水城を途中まで抑えていたのは及第点が与えられる。
竹崎は右のオーバーハンド。上から鋭く振り、左腕のグラブを胸元に抱え込んで、開きを抑えるフォームは日本ハムに指名された中村勝と少し似ている。ストレートは常時120キロ後半~130キロ中盤ぐらい。角度・勢いもあり、ボールの質は良い。変化球はカーブ、スライダー、縦のスライダー。変化球を投げる時に腕が緩む癖があるものの、両サイドに投げ分け、変化球を低めに集めていたので、打たせて取ることができていた。クイックも1.1秒~1.2秒台と素早く、またフィールディングでは軽快な守備を披露。ターンが速く、鋭かった。投手としての土台は良いが、上半身が細い。体の大きさに比例してボールも速くなっていくタイプだろう。
数々の好投手を輩出してきた春日部共栄の本多利治監督。彼もドラフト候補と呼ばれる投手に成長させることができるのか。その手腕にも期待してみたい。
4番センター・鎌田雅大(春日部共栄)
4番センターの鎌田雅大(1年 右/右 180センチ77キロ)は運動能力の高い外野手。いきなりレフト前ヒット。その後の打席は凡退に終わったが、潜在能力の高さを示した。スクエアスタンスで構え、バットを立てて構えている。癖のない構えであり、良い構えだ。投手の足が降りたところから始動を仕掛けていき、トップを深くとっていき、振り出していく。スイングは鋭く、速い打球を見せている。
守備では打球勘が良く、俊足を飛ばして幅広く対応できている。地肩は強い。スローイングの精度を高めていけば攻守に素晴らしい選手になりそう。素質はある選手なので、長打力を伸ばして一発を連発できるようなスラッガーに成長していってほしい。
6番ショートの竹崎幸大(2年 右/左 178センチ70キロ)は好打堅守の遊撃手。癖のない構えからコツコツ当てる遊撃手。技術的にはそれほど粗がないものの、スイングがひ弱なので、体の成長に応じて打球にも力強さが出るタイプだろう。ショートの守備は基本忠実な守備を見せる。腰が落ちており、正面で打球を受けて送球することができる選手だ。今後の成長に期待してみたい。
(文=河嶋 宗一)