松阪vs伊勢工
中川誠也(伊勢工)
注目校 vs 140キロ左腕。密かな好カードはゼロ行進の末…
筆者がこの秋に観戦したいと思っていた三重県の2校が、県大会初戦で激突。期待通りの熱戦となった。
東海地方も全般的に雨に見舞われたこの日は、愛知大会・岐阜大会はもちろん雨天順延。三重も他会場は軒並み雨天順延となったが、筆者が向かった伊勢市営倉田山公園野球場だけは、なんとか野球ができるギリギリの空模様。途中「ゲリラ豪雨」を挟んだものの、予定されていた3試合が全て実施された。
伊勢工の注目は左腕エースの中川誠也だ。夏の三重大会では背番号8ながら、チームが戦った2試合ともに先発完投。3回戦の日生二戦では、延長15回にサヨナラ負けを喫したが210球を一人で投げ抜き、熱投で注目を集めた。
角度はオーバーハンド。ストレートの走りが良い。それほど上背があるわけではないが、球が走るから三振が奪える。低めにストレートを決めて見逃し三振をとり、颯爽とベンチへ帰っていくシーンも小気味よかった。この日のスピードガンの数字は130キロ前後が多かったが、バランスのとれたブレの少ない投球フォームから、数字以上に打者の手元で伸びるボールを投げていて、さすが有望左腕だと感じさせた。自己最速は140キロを超え、制球が大きく乱れることもない。
この中川、敵の送りバントを阻止するフィールディングが素晴らしい。この日は2度二塁で封殺したが、前述の夏の大会3回戦では、終盤のピンチに3イニング連続で二塁封殺をしたことも。状況を的確に判断し、俊敏な動きで敢然と正確な送球を送れるのは非凡な証拠だ。こうしたプレーに素質の高さが表れている。
竹内諒(松阪)
試合は延長11回表の途中、「ゲリラ豪雨」により1時間以上にわたって中断。中断後は中川はマウンドに上がらず、代わった2番手・平谷大地が延長11回裏にサヨナラ打を浴び、伊勢工は無念の敗退となった。それでも、打たれたとはいえ平谷だって「速球派」と呼べそうないいストレートを投げていた。課題を挙げるとしたらフォームの確立、とくにランナーを背負ったときも堂々と投げられるようになれば。こちらも楽しみな投手だ。
勝った松阪は、背番号9の1年生左腕・竹内諒が先発を務めた。打者にとって打ちづらいのか、伊勢工打線が苦戦。うまく打たせて取るピッチングを展開した。延長11回途中にエース中川幸二の救援を仰いだが、点を許さなかった。最後は7番打者・西堀彰剛がセンター前へはじき返し、サヨナラ勝ちを収めた。
松阪は、久居農林を初の甲子園に導いた松葉健司監督が2006年4月に赴任。野球部が強くなってきたと評判で、「県大会で上位にいけば21世紀枠でのセンバツ出場も」と期待する声もある。突出した選手はいなくても、安定した守備力とチームとしてのまとまりが感じられ、この先の躍進が望めそうだ。
(文=尾関 雄一朗)