千葉東vs柏南
菅野又君(千葉東)
千葉東が完封リレーで県大会進出決める
一塁側の柏南は攻撃の際にサードコーチャーは必ず相手ベンチ前で足を止めて帽子をとり、「失礼します」と挨拶をしてから駆けていく。スポーツの指導の現場では、「凡事徹底」ということがしばし言われるのだが、これもそうしたことの一つといっていいだろう。だから、どうだということではないのだけれども、こうしたことで一つの意識を育てる姿勢を示すことは出来ると思う。これは、就任10年目でマナーなどに厳しい長倉伸一監督の指導の一環といってもいいものだ。
しかし、投手戦の展開で始まった試合は、後半に柏南の安田君がつかまって、最後はコールドゲームとなってしまった。「いや、もう投手は限界でしたね。二次予選に入って、ここまでいい雰囲気で勝ってきていたんですけれど、攻守に相手が上でした。元々、ウチは左投手が打てないのですが、それがあれだけ制球よく切れのあるボール投げられてしまっては」と、試合後は千葉東に脱帽だった。
0―0で進んでいった試合は4回、ここまで押し気味に進めてきていた千葉東は四番日暮君が右前打で出るとバントで送り、松田君の右中間三塁打で均衡を破った。さらに失策もあって、三塁走者も帰ってこの回2点。
これで、先発菅野又君はさらに調子を上げていった。体は華奢で線は細いが、筋肉の柔らかさを感じさせる投球でしなやかに投げ込まれてくる。打席に立ってみると恐らく、見た目以上に球が来ているという印象なのではないだろうか。柏南の各打者もそんな感じで降り遅れ気味だった。
結局、7イニング投げて2安打のみ。三振は5個で、内野ゴロ14という数字にも菅野又君の投球内容のよさが窺える。
千葉東は6回にも七番中野君の三塁線二塁打を切っ掛けに好機を作り、九番菅野又君の右中間二塁打や二番小川君の左線へ運んだ二塁打などで4点を奪い試合を決定づけた。そして8回は1死満塁から日暮君がタイムリー。取るべくして取った7点目が入ってコールドゲームとなった。
三番山田君が3安打、四番日暮君は4安打と打つべき中軸が確実に打ち、好機に長打が出るといういい形で、千葉東としては終わってみれば理想的な展開だったともいえるものだった。
(文=手束 仁)
日暮(千葉東)
千葉東が柏南を8回コールドで下し、県大会出場を決めた。目に留まったのは菅野又(1年)、岩田(1年)の二枚看板と、4番に座る日暮(1年)だ。
菅野又、一言で表せば「野口亮太(前橋商)」のような左腕投手だ。小柄な投手で、おそらく身長は160センチ前後。投手としてかなり小柄ではあるが、野球センスは良い投手だ。左スリークォーターから投げ込む直球は目測で120キロ前後ぐらいだろう。だがコントロールは中々なもので、両サイドにしっかり投げ分けることができている。変化球はスライダー、カーブを投げる。スライダーのキレ、コントロールは抜群で、いつでもストライクが取れる制球力はあるし、空振りも奪えるし、決め球となっている。右、左打者ともに外角中心に攻めるオーソドックスな配球ではあるが、ボールの出し入れができる投手であり、テンポも良く、野手も守りやすい印象があった。
この賢さ・テンポの良さは野口に共通するものがあるだろう。投球フォームは若干右肩の開きが早く、下半身の回転も鈍く、フォームの完成度は野口に劣る。そして体もまだ弱く、鈍いスイングを見るとパワーがない選手だと感じた。肉体面を強化していくことになるだろう。
トレーニングによってたくましくなってくると完成度は高いだけに勝てる投手になるだろう。高校野球は左投手、制球力の良い投手ほど勝ちあがっていける。その素地はあるだけに真剣に取り組んで県内を代表する投手に成長してほしい。
二番手の岩田。菅野又と対照的に「力」のある投手だ。投手らしい体格をした投手で、右オーバーから振り下すストレートは目測で125キロぐらいだが、威力はある。まだ肩の開きが早く、下半身をあまり使わないフォームなため、パワーロスしている。ただ体の強さはある投手なので、じっくりとフォーム固めを行い、下半身もしっかり強化していけば135キロ前後まで速くなりそうな投手である。
4番に座る日暮は左の好打者。スクエアスタンスから右、左へと打球を打ち分ける上手さがあるバッターだ。素振りから上を叩くスイングを意識している。まだ強く射抜くスイングはできていないが、合わせるのは上手い打者だ。三塁の守備はまずまず安定しており、地肩の強さもそれなりに強い。まだスイングに強さが感じられないので、とにかく振り込むこと。ただ振るだけではなく、スムーズにバットが出せるスイングを身につければ取り上げられる打者になるのではないだろうか。
千葉東は私学の桜林を8-3で下しており、中々侮れないチームだ。長打力はない打線ではあるが、ミートできる打線で、崩されてもライト前へ落としぶとさもある。守備もそれなりまとまっているし、公立校らしい直向きがあって堅実な野球をするチームだ。その中心にいる1年生トリオ。千葉県の高校野球ファンの方はぜひ覚えていただきたい。
(文=編集部 河嶋 宗一)