野村vs小松島
西口元気(小松島)
野村、初の四国大会初戦で劇的サヨナラ勝ち!
昨秋は選手わずか17名で愛媛県大会ベスト4進出。準決勝では 宇和島東 、3位決定戦でも 済美 と互角以上に戦い周囲を驚かせた 野村 。その勢いは冬を越えて「実力」という文字に変わり、春の愛媛県大会は南予地区予選から数えて2度の延長戦と2度の1点差を制し、決勝でも 西条 を6対3で撃破。1951年の創部以来初となる県タイトルを奪取し過疎化が深刻な西予市野村町を歓喜の渦に巻き込んだ。センバツ出場・今治西とのチャレンジマッチこそ3対4と惜敗した野村だが、愛媛県2位校として春秋通じて初となる四国大会出場も決定。この日の 春野球場 にはバス4台での大応援団も詰め掛けるなど、地元の期待はヒートアップするばかりであった。
ところが「全体的に緊張があった」と長瀧剛監督も振り返ったように、このゲームで野村はなかなか自分たちの持ち味である強打を発揮することができない。 打線は昨秋四国大会初戦敗退の悔しさを胸に直球とカーブのコンビネーションに冴えを見せる 小松島 左腕・西口元気(3年)の前に8回まで散発5安打無得点。加えて、打線の援護を待ち粘りの投球を見せていたエース右腕・市川恵洋(3年)もついに7回、真ん中高めの失投を5番・山本史典(2年)にレフトスタンドへ運ばれ先制点を献上。
過去に春3回、夏1回甲子園出場、春の県大会を制しセンバツ出場の 川島 と対戦したチャレンジマッチでも25対2の記録的大勝を果たした 小松島 の伝統に立脚した力は彼らに厚い壁となって立ちふさがっていた。
しかし迎えた9回裏。野村は先頭の5番・市川が投手強襲内野安打で出塁すると、続く吉見俊哉(3年)が初球を送りバントしランナーを得点圏に。さらに1死1・3塁から8番赤松順矢(3年)が打った浅いライトフライで市川が果敢なスライディングで生還するという、チームのストロングポイントが満載されたプレーの連続で土壇場の場面で同点に追い付くことに成功。延長戦に入った14回裏には1死2塁からまたも赤松が力投西口の170球目を捉えるレフトオーバーの2塁打。14回で201球を投じた市川に応えるサヨナラ勝ちで、悲願の四国大会初勝利をマークしたのである。
実はこの赤松は昨夏までのポジションは控え投手。秋季大会直前にそれまでの正遊撃手が負傷したことにより、連日ボールケース3箱分の個人ノックを受け、ショート守備の基本を体に吸収した努力家である。「秋は積極的にいくことだけだったですが、練習で自信がついたので今はどんどん思い切り振ることができている」と赤松。「努力は人を強くする」とは世間でよく言われることわざであるが、この試合では正に彼のたゆまぬ努力が最後に実を結んだ形となった。
(文=寺下 友徳)
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