Column

府立大塚高等学校(大阪)【前編】

2015.06.30

 昨秋、創部初となる府大会ベスト8進出を果たし、21世紀枠候補にも名を連ねた大塚春季大会においても準々決勝履正社に敗れたものの二季連続の大阪8強入り。着々と歩を進め、激戦区で存在感を増す新鋭校を訪ねるべく、学校のある大阪府松原市へ足を運んだ。

僕らの熱い夏 2015

どんな状況でも最善を尽くせるチーム!

室谷 明夫監督の話を聞く選手達(府立大塚高等学校)

 6月中旬のある火曜日の放課後。校舎に隣接する大塚高校の練習グラウンドに到着すると、2ヵ所でのバッティング練習が始まっていた。
「こんにちは!打撃ゲージの横にイスを用意してありますので、どうぞ!」
出迎えてくれたのは就任6年目の室谷 明夫監督だ。

「グラウンドは他の部との共用のため、放課後に打撃練習が行えるのは平日では火曜日だけなんですよ」
大塚高校のグラウンドの形状は長方形。その影響で本塁からライトフェンスまでの距離が目測で70メートル程度と極端に短い。加えてライトフェンスの先は民家。
「学校で試合を行うことはさすがにできないです…」
フリー打撃を行う際は、打席の上方にネットを吊り下げることで角度のついた打球が前に飛んでいかないよう、工夫が施されていた。

 3学年合わせた現在の部員数は87名。プラスチックボールやバドミントンの羽を用いてのバッティング練習を、小スペースで行っているグループも目に付く。
バント練習や素振りを行っている選手もいれば、強化トレーニングに励んでいる者もいる。練習時間を持て余しているような選手は皆無だ。

「17時になったら一時間ほど、陸上部がトラックを使用することになっているんですよ」
よくよく見ると長方形のグラウンドの大部分は陸上用のトラックでもあった。楕円形のラインは野球部のホームベース付近にまでしっかりと及んでいるため、野球部はトラックの内側を使用しての練習に移行。内、外野の連係プレーを主テーマとしたノックが突如始まった。
トラックに沿って走っている陸上部員にノックの打球が当たらぬよう、1年生部員の数名がトラックに沿って、外野フェンス役を務めている。

 陸上部員が走るトラックの内側で野球部がノックをしている光景は滅多に見ることはない。決して恵まれているとはいえない練習環境で大阪ベスト8という結果を叩きだす大塚。大切なのは、与えられた環境でいかに最善を尽くすか、だということがよく分かる。

このページのトップへ

[page_break:追求しているのは「しっかり、強く振れる打線」 / ポイントはトレーニング直後の技術練習]

追求しているのは「しっかり、強く振れる打線

フリー打撃の様子(府立大塚高等学校)

「ディフェンスがいくらよくても、打力がない限り大阪で上位進出を果たすのは難しい。守りをしっかりと固めつつ、打ち勝っていける攻撃力が必要」
室谷 明夫監督はきっぱりとした口調でそう言った。

 大塚が激戦区大阪で上位進出を果たした大きな要因のひとつが、公立校であることを一切感じさせない、力強さ満載のオフェンス力だ。
「追求しているのは『しっかり強く振る』という部分。たとえ凡打に終わっても、しっかり振ることで、相手バッテリーに怖さを植え付けられれば、こちらに有利な流れを作ることが出来る。強く振れないチームはやっぱり怖くないですから」

 となれば、強いスイングを生んでいる源がどうしても知りたくなる。
室谷監督は、「うちは練習時間もそんなに豊富じゃないし、打撃練習をする時間も限られているので、そんなにバットを振る数自体は多くないんだけど…」と前置きした後、こう続けた。
「技術練習をする直前のトレーニングを大事にしています」

 その話、もっと具体的に教えてください!
「ウエイトトレーニングって技術練習の後に行うケースが多いと思うんですけど、うちでは20分、30分という短めのウエイトトレーニングの時間を技術練習の前に設けるスタイルが基本です。例えば上半身の大きな筋肉をベンチプレスでたっぷりと刺激した後、すぐさま30本の連続ティーを5セットやらせたりします」

ポイントはトレーニング直後の技術練習

「ウエイトした後にすぐにバットを振る動作を行うところがミソ」
と室谷監督。その理由とは?
「ウエイトで培ったパワーを野球の動きにすぐさま変換・記憶させるためです。『今やったウエイトトレーニングはこのスイングを力強くするために行ったんだよ』と、自分の体に言い聞かせながら、体に刷り込んでいくイメージですね。このやり方を3年ほど前に導入してから、打撃力が確実にレベルアップした感覚があります」

 以前、あるプロ選手が「ウエイトトレーニングの直後に素振りをし、向上したパワーを野球の動きとして体に記憶させると良い、というアドバイスを金本 知憲さん(元阪神ほか)から頂いた」と話していたことを思い出した。この理論を実行に移していた大塚

堺原仁輝主将(府立大塚高等学校)

 室谷監督は続けた。
「大学時代、練習の最後にウエイトトレーニングを行い、翌日になってバットを振ろうとすると体がガチガチで、どうにもぎこちないスイングになってしまうことが悩みだった。そこでトレーニング直後の、筋肉がパンパンの状態ですぐさまバットを振ると、ウエイトトレーニングによって得たパワーを野球の動きにうまく変換できている感覚が芽生えた。指導者になった暁にはぜひこのやり方をとり入れたいと思っていました」

 大塚ナインを引っ張る堺原 仁輝主将は次のように証言する。
「トレーニング直後にバットを振ることの効果はものすごく感じています。上半身の筋肉を追い込んだ後にロングティーなどをすると上半身が疲れているため、いやがおうでも体が下半身をしっかり使おうとする、という効果も僕自身は感じています。うちの打撃力が向上している大きな要因であることは間違いないですね」

(取材・文=服部 健太郎

 府立でも屈指の打撃力を誇る大塚。夏へ向けてキーマンとなる選手が、意気込みを語っていただきます。お楽しみに!

このページのトップへ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.28

【広島】広陵、崇徳、尾道、山陽などが8強入りし夏のシード獲得、広島商は夏ノーシード<春季県大会>

2024.04.28

【岡山】関西が創志学園に0封勝ちして4強入り<春季県大会>

2024.04.28

【富山】富山商、氷見、未来富山などがベスト16入り<春季県大会>

2024.04.28

【鳥取】鳥取城北が大差でリベンジして春3連覇<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!