リリースポイント(6)~リリースポイントを前にする~
各地区の代表が決まり、来春の選抜甲子園出場校が確定していますね。教え子はあと1勝で甲子園確定のところまでいったんですが惜しくも敗退してしまいました。しかしまだ分からないのが選抜です。1月の選考まで楽しみに待ちたいと思います。
「理想のリリースポイント」の復習
今回もリリースポイントでのチェックを復習しましょう。
(1)両肩のラインと腕の角度はほぼ一直線(第37回コラム リリースポイント2)
(2)肘は少し伸びるくらい。45°以上曲がらない。(第38回コラム リリースポイント3)
(3)前腕に対して真っ直ぐ。(第39回コラム リリースポイント4)
以上3点が理想のリリースポイントでした。
前回の復習をしましょう。
『円の半径の長さと円周の移動距離による角度の違い』さ~もうこれは分かりますよね?まだ分からない場合は前回コラムを読み直してみてください!
そして『投球動作の腕の軌道は円運動に近い動き』であることから、前でリリースすればするほどボールはした方向にいく、という事も大丈夫でしょうか?
だから高めに浮いたボールを投げていると指導者は、『もっと前で投げろ』とか『もっと前に体重かけろ』と言ったことを言うのです。
さてではこの『前にやる動き』、これをどこの関節を使って動かすのが理想なのか?今回はこれを説明したいと思います。
リリースポイントでのチェックで手首は前腕に対して真っ直ぐ(第39回コラム参照)、というポイントがありました。なぜこうしなければならないのか?
これが前回まで説明した『半径の長さと円周の移動距離』に大きく関係するのです。
前で投げる際にはどこを使えばいいのか?
まず『前で投げる』、これを手首で行おうとすると仮定しましょう。そうするとどうなるか、手首を手の平の方向へ曲げますよね。そうすればボールは前方でリリースすることになりますから、低めにボールがいくはずです。
しかしこの手首を使ったコントロールは良くないのです。逆に角度が付き過ぎて、低めにいき過ぎてワンバウンドになる恐れがあります。
逆に手前になればボールは抜けることになりますので、高めに浮くことになります。ワンバウンドが多い選手や良く抜ける選手は(どのポジションでも)手首でコントロールしている可能性が大きいです。
だから以前説明したように、『スナップスロー』も決して手首を使ってコントロールしてはいけないのです。
ではどこを使って前で投げた方が良いのか?
それは踏み出し脚の股関節です。ここをしっかり曲げることでリリースポイントは前に移動し、結果低めにボールがいくのです。
半径の移動距離による角度の違い
ここで前回の『半径の長さと円周の移動距離』で、手首でのコントロールと股関節のコントロールの比較をしてみましょう。
下記の写真がその比較になります。
手首と股関節、同じ距離を前でリリースしたとします。すると、手首での動きで描かれる円運動の半径と、股関節での動きで描かれる円運動の半径には大きな差が出ます。
もちろん股関節で描く円運動の半径の方が、手首で描く円運動の半径より長くなります。これは肘で描く円運動の半径、肩で描く円運動の半径に比べても長いものとなります。
と言うことは、同じ感覚で前でリリースしても、角度はつき難くなり、結果18.44m先の移動距離は小さくなるので、的確な低めへのコントロールができるようになるのです。
これは今後の研究課題なのですが、全力投球におけるコントロールの良し悪しは、この股関節の曲がる角度で違いがあるのではないかというのが私の推論です。
これについては今後研究していきたいと考えています。
この股関節の曲がる角度については次回また説明したいと思います。
【リリースポイントについてのコラムを合わせてチェック!】
■リリースポイント~自分のリリースポイント知っていますか?~
■リリースポイント(2)~自分のリリースポイント知っていますか?~
■リリースポイント(3)~自分のリリースポイント知っていますか?~
■リリースポイント(4)~自分のリリースポイント知っていますか?~
■リリースポイント(5)~自分のリリースポイント知っていますか?~
(文・写真:久保田 正一)