山田知輝(東洋大)「フライボールスラッガーは挫折をバネにプロの世界で花を咲かせる」【後編】
前編では、東洋大が誇る長距離砲・山田知輝の打者として活躍するまでのストーリーを紹介してきた。後編では、飛躍につながった『フライボール革命』と東洋大OBの金言に触れていきたい。
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山田知輝「東洋大が誇る急成長株は、強い覚悟と決心をもって打者に挑んでいた」(前編)
飛躍を支えた『フライボール革命』と清水隆行氏の金言
山田知輝(東洋大学)
2年生の秋に開幕スタメンながらノーヒットに終わった山田。大学ラストイヤーに結果を残すために大事な冬場を迎えた。その中で出会ったのが『フライボール革命』だった。
「ライナーからフライくらいの高さの打球を打つように意識を変えました。ゴロを打たないようなスイングをイメージしてから結果を残せるようになりました」
その中で参考になったのが柳田悠岐や吉田正尚のスイングだったが、山田の心に刺さったのは柳田のある言葉だった。
「柳田さんのインタビュー動画で、『インパクトの瞬間にバットを上げる』と言っていたんです。それは参考にしています」
山田は3年生の春くらいまで、トップを低い位置に構え、レベルスイングで振り始めていく形だったが、フォームを変更。柳田さんのイメージを持ったまま、今のフォームに辿り着いた。だが、山田が結果を残せたのは意識を変えただけではない。
「杉本監督から『タイミングを取り方が下手だ』と言われて。そこでも杉本監督に色々教わって、試していきました。その中で一番合っていたのが清水隆行さんの教えでした」
東洋大のOBで、U-15日本代表の監督も務められた清水氏。「清水さんのおかげといっても過言ではないですね」という清水さんからタイミングの取り方を教わり、山田は急成長を遂げる。
まず指摘されたのが、突っ込む癖だった。
「最初に見てもらったときに『近くに見える』って言われたんです。自分はそれを聞いたときに『突っ込む癖があるからバットとボールが衝突するというか。自分からボールとの距離を縮めている』と解釈しました」
清水さんからも「いい打者は長くボールを見られる。自分の軸でボールを見られる」とアドバイスを受け、しっかりと距離を作れるように間の取り方をより重要視した。その中である練習方法を清水さんに伝授された。
長打と打率を残せるスラッガーとしてプロの世界へ
笑顔でポーズをとる山田知輝(東洋大学)
東洋大OBの清水氏に間の取り方の重要性を教わった山田。自分の弱点である突っ込んでしまうことを修正すべく取り入れたのが片手でのティーバッティングだった。
右手だけでティーバッティング:右肩の開きを抑えることを目的
左手だけでティーバッティング:左腕のたたみ方を覚えるのが目的
他にも逆手でのティーバッティングで、体をツイストさせることを狙った練習も取り組む山田。こうすることで自分のフォームを修正していき、ライナーからフライを打つことを意識した結果が今春のリーグ戦での飛躍につながった。
「元々、ピッチャーとして入学したのに勝ち星もあげられず、あまり抑えたイメージもない。期待されて入学したのに、それに応えられずやるせない気持ちはずっとありました。けど春に結果を残せた、諦めないでよかったです」
大きな飛躍につながった春季リーグ戦。5本のホームランについても、「驚きました。開幕時は5本ホームランが打てればくらいの気持ちだったのですが、打てて良かったです」と本人も納得の結果だった。
まだ馴染みのない『フライボール革命』や、清水氏のアドバイスなど様々な技術を試行錯誤しながら柔軟に新しいことに取り入れていくことが印象的だった山田。この柔軟な姿勢はどこにあったのか。
「元々投手だったので、何でもやってみるではないですが、変なプライドがなかったので取り組んでいけたと思います」
苦労を重ねてきた大学生活もいよいよ大詰め。最後の秋に向けて、「東都大学リーグは熾烈なので、1勝するのも簡単ではない。そういった意味でもまずは後輩に繋げるために入れ替え戦の可能性をつぶして、そのうえでリーグ戦優勝が出来ればと良いと思います」と意気込みを語った山田。
そのためにも秋はホームラン5本、打率3割。エンゼルス・大谷翔平のような長打と打率の両方を残せる打者を目指すことを誓った山田。ピッチャーで一度挫折を味わい、打者で再び花開きつつある山田知輝。運命の10月17日に吉報は届くのか、その瞬間を楽しみにしたい。
(取材=田中 裕毅)