金光 雄紀（東福岡）「一流」から学び「一流投手」への道進む

　大阪桐蔭（大阪）が連覇を遂げたセンバツも終わり、いよいよ高校野球は第100回記念大会の夏へ。史上最多の56校が参加する今大会では福岡県ではじめて「北福岡」「南福岡」での2校出場が実現する。

　その南福岡で11年ぶり5度目の夏甲子園を狙う東福岡のエースを担うのが、172センチ80キロとがっしりとした体形から最速142キロのストレートを武器とする右腕・金光 雄紀である。

　昨秋県ベスト4も九州大会出場へあと一歩届かなかかった収穫と悔しさを胸に、夏の活躍を誓う金光投手。今回は成長のきっかけとなった「一流からの学び」について振り返っていただいた。

東福岡のエースを担う右腕・金光 雄紀

――　現在、東福岡のエースを担う金光投手ですが、実は東福岡との縁は小学校時代からだそうですね？
金光 雄紀投手（以下、金光）　僕は2012年に「NPBジュニアトーナメント・福岡ソフトバンクホークスジュニア代表」に選ばれてプレーしたんですが、その時のコーチが東福岡出身の大野 隆治さん（東福岡高～日本大～福岡ソフトバンクホークスで捕手・現：ホークスジュニアアカデミーコーチ）だったんです。ホークスジュニアアカデミーでも大野さんから指導を受けたことをきっかけに、東福岡へのあこがれを持ちました。

――　その後、田川市立田川中の軟式野球部では速球投手として活躍しました。
金光　肩の強さにはずっと自信があったんですが、中学2年生の時に足の疲労骨折をして休んだ時、しっかりと食べたら、172センチ80キロまで増量できた。これが大きかったです。
　中学3年生の時は135キロまで出て、部員も少なかったん中でも県大会ベスト8までいくことができました。

――　ということは東福岡に入学してからも自慢の速球でアピール……。
金光　いや全然です。硬式球に全然慣れなくて球速も全然出ず。1年秋にベンチ入りすることができたんですが、まだまだ思うようなボールは投げられませんでした。

――　では、硬式球の感覚をつかむためにどんなこととに取り組んだのですか？
金光　ひたすら投げ込むこと、そしてネットスロー。1年秋からは重いボールを使ってのキャッチボールも始めました。

――　重いボールを使ってのキャッチボールはどういうきっかけで始めたのですか。
金光　僕は普段から一流選手の動画を見るのが好きなんですが、ある日、（アロルティス・）チャップマン投手（MLBニューヨーク・ヤンキース）が、重いボールでキャッチボールする動画を見たんです。　そこで「やってみよう」と。
　投球練習前のキャッチボールで、350グラムぐらいの重いボールを塁間ぐらいの長さで投げて、リリース感覚を少しずつつかみました。

――　「重いボール」を投げることによるリリースの変化をもう少し具体的に教えてください。
金光　リリースが「押し出す」から「叩く」に変わりました。軟式球は軟らかいので、僕は押し出すようなリリースでそのまま投げていたんです。ただ、硬式球は押し出す投げ方はできない。そこで重いボールを投げる時もリリース時に「叩く」意識でやっていたら、やっと指にかかって強いストレートを投げることができたたんです

――　叩くリリースを身に付けた金光投手が真に「自分が変われた」と思えた試合はいつでしょうか。
金光　1年生大会の筑陽学園戦ですね。エースの大畑 功士郎（3年）くんと投げ合って、1失点に抑えることができましたし、ストレートも最速136キロ。自信になりました。

金光 雄紀投手（東福岡）

――　そして2年秋にはエースとなります。1年生大会で手ごたえをつかんで以降、ここまでの1年間で取り組んだことはありますか。
金光　練習試合でも、自分が登板した後に必ず下野 輝章監督から「どこがよかったのか、悪かったのか」アドバイスを頂くようにしました。
　「エースとして投げる」ということは「チームを勝利へ導く」こと。そう考えるとレベルアップするためには、エースが自覚をもって行動しないといけないと感じたからです。甲子園でも活躍していて、日本体育大・日本生命でもプレーされている下野監督（田中 賢介＜北海道日本ハムファイターズ＞と同期）の意見は、自分のピッチングを見直す意味で、良い機会になったと思います。

――　結果、秋の福岡県大会は4強入り。自信になったことはなんでしょうか。
金光　ストレートも140キロを超え、直球主体のピッチングである程度勝てることができたこと。そして完投もできる能力を身に付けたことです。

――　加えて秋の福岡県大会はほぼ1人で投げ切った金光投手ですが、その要因はなんでしょうか。
金光　もともとスタミナには自信があるのですが、実はグラブにもこだわっていて、軽めのグラブを使っています。
　田川中時代、延長戦になる8回からばてて自分のピッチングが全くできなかったことから、高校ではスタミナアップのためにトレーニングをやってきたのはもちろん、軽くて自分に合ったグラブに変更したところ、疲れにくくなりました。ささらに疲れにくくなると左手もうまく使えるので、終盤になっても投球のクオリティが落ちず、完投できる要因になったと思います。

――　逆に秋に出た課題とは？
金光　コントロールと変化球の精度です。県大会準決勝の筑陽学園戦で3本のホームランを打たれてしまったのも、変化球の精度が低く、ストレートを狙われてしまいました。僕自身、ストレートについてはかなりこだわっていますし、最終的にはストレートで押しきれるピッチングをしたいと思っています。
　でも、ストレートを活かすためには変化球も大事。今はスライダー、チェンジアップなど変化球の精度を高めることを課題にしています。

――　同時に冬にはどんなトレーニングを行ってきましたか？
金光　ウエイトトレーニング、投げ込み、長距離走、短距離走などを行ってきました。今年は常時140キロ台、150キロを投げられるようになりたいと思います。

――　高校での目標は甲子園出場になると思いますが、その先に目指す投手像はありますか？
金光　一番の理想は則本 昂大投手（東北楽天ゴールデンイーグルス）です。あの腕の振りにあこがれています。
　そして高校先輩の福島 滉貴さん（立命館大3年）も目標の1人です。1月ぐらいに練習にきてくれて、キャッチボールをしてくれたのですが、本当に凄いボールで「グーン」と伸びる。「これが156キロを投げる投手のボールなのか……」と驚きを隠せませんでしたし、身近で一流の世界を知ることができて、よりトレーニングに身が入りました。

――　ありがとうございます。では最後に今年にかける意気込みを教えてください。
金光　東福岡の甲子園出場を実現すること。そしてまずは福岡県ナンバーワンピッチャーになり、最終的には全国ナンバーワンピッチャーになります！

　春の福岡県大会では4回戦（南地区Aパート決勝戦）で福岡の前に涙を呑んだ東福岡。4回までに4点を失い悔しさの中で新たなる課題を得た彼らが、いかに南福岡大会で逆襲に転ずるのか。その中心にいるのはもちろん、一流から学び、一流を目指すエース・金光 雄紀である。

文＝河嶋 宗一