Interview

石川 翔(青藍泰斗)「葛生の剛腕、最後の夏は最高の夏に」

2017.07.07

 最速149キロのストレートを持ち、関東ナンバーワンとの呼び声も高い石川翔投手(青藍泰斗)。度重なる故障に苛まれながらも成長を続けてきた豪腕が、いよいよ最後の夏へ向かう。

転機となった打撃投手の経験

石川 翔(青藍泰斗)「葛生の剛腕、最後の夏は最高の夏に」 | 高校野球ドットコム

石川 翔(青藍泰斗)

 中学時代のチームメートに誘われたのをきっかけに、専用グラウンドを持ち、寮も備えている環境の良さに惹かれて青藍泰斗の門をくぐった石川投手。中学時代には既に137キロのストレートを投げており、もちろん投手を志望して入部したのだが、最初に下されたのは「ピッチャー失格」の烙印だった。
「コントロールが悪くてストライクが全然、入りませんでした。それで、すぐに外野へコンバートされたんです」

 さらに10月には元々、状態が良くなかった左ヒザを手術。翌年2月に復帰したもののすぐに肩を痛め、練習を再開できたのは4月になってからだった。しかし、ここで転機が訪れる。宇賀神 修監督からバッティングピッチャーをするように指示されたのだ。
「『ピッチャーをやりたいんだったら、バッティングピッチャーをやってみろ』と言われました。先輩が相手だったので、『なんとか打てるボールを投げよう』と頑張ったら、自分で思っていた以上にストライクが入ったんです」

 すると、Bチームの練習試合に登板する機会が与えられ、ここでも好投。外野手との兼任ではあるが、晴れて投手としてプレーする希望が叶うこととなった。
「いつかは投手に戻したいと考えていた」という宇賀神監督は「石川は身体能力が高くてバネがある選手。強肩で俊足ですし、パンチ力も十分。そして、背筋力が強いのであれだけのストレートが投げられるのだと思います」と、そのポテンシャルの高さに惚れ込んでおり、40年にわたる監督人生のなかでも「これまでで一番の素材」と言い切っている。

 そして、2年春の栃木大会では2試合に先発した石川投手。2回戦の高根沢戦で7回無失点の完封勝利を挙げるなど結果を残し、チームの準優勝に貢献。関東大会でも初戦の前橋育英戦(試合記事)の先発を任され最速146キロも記録したが、ホームランを浴び、暴投で失点を重ねるなど3点目を奪われた3回途中で無念の降板。
「一人ひとりの打者の対応力がすごくて、スイングも違うなと感じました。ただ、あの試合で全国のレベルを知ることができて、良い経験になったと思います」

 また、当時はフォームにも課題があった。
「グローブを持っている左手に余計な力が入ってしまい、体が開いてしまうクセがありました」

 このクセを治すのには時間がかかった。そのため昨夏はマウンドに上がる機会にさほど恵まれず、新チームになってからも練習試合で結果を残すことができないまま秋季大会に突入。準々決勝の宇都宮戦では142キロをマークし11三振を奪ったが、「ぶっつけ本番のような感じだった」と振り返る。

 続く準決勝では作新学院と対戦。
「低めに投げることを意識して、序盤は真っ直ぐで押しました」と、4回までは無失点に抑えていたが、5回裏、「体が開く悪いクセが出てしまい、ボールがシュート回転して甘くなってしまった」と、この回に2失点。結局、そのまま0対2で破れ、センバツへの道はここで閉ざされた。

[page_break:自分の欠点をどう修正したのか]

自分の欠点をどう修正したのか

石川 翔(青藍泰斗)「葛生の剛腕、最後の夏は最高の夏に」 | 高校野球ドットコム

石川 翔(青藍泰斗)

「秋季大会は思ったようなピッチングができず、まったく手応えを感じられませんでした」
そこで、大会終了後、石川投手はすぐにフォーム修正に取り組み、そのまま冬のトレーニングへ進んでいくことになった。

――体が開くクセを治すためにやったことは何ですか?

石川 翔選手(以下、石川):左手に力が入っていたのが原因だったので、とにかく力を抜くようにしました。そして、これまで一塁側へ横に動いていたグローブを、そのまま下に動かすように意識して投げるようにしています。

――体の開きを抑えたフォームにしたことで、他に良くなった点はありますか?

石川:体のねじりをうまく使えるようになりました。昨年までは上半身だけで投げるような形だったのですが、今は下半身に粘りが出てきて良いボールが投げられるようになっていると思います。

――その下半身を鍛えるために、オフシーズンはどのようなトレーニングをしてきたのでしょうか?

石川:12月から2月まではボールを触らずに足腰を鍛えるトレーニングだけをしていたのですが、走り込みで階段を駆け上がったり、400mのダッシュを5本やったり、学校まで1kmほどの距離を毎日、走ったりしました。あとはタイヤ押しとタイヤ引きですね。正直、特別すごいことをやっているわけではないのですが、自分は継続してやり続けることに意味があると思っていましたし、一つひとつに対して本気になって励むことができました。そのおかげで尻周りが大きくなったので、トレーニングの成果は出ていると思います。

――体を大きくするために食トレもしたそうですね。

石川:左ヒザを手術した時、ちょっとした体幹トレーニングしかできなかったので太ってしまったのですが、復帰してバッティング練習をしたら飛距離が伸びてパワーが付いていたんです。それで、体は大きい方が良いと思って、今、ごはんは昼800g、夜は1kg食べるようにしています。元々、それほど食べる方ではないのですが、野球のためなら頑張れるので、それほど苦にはなっていません。

――そのほかにオフシーズンで取り組んだことはありますか?

石川:球質を良くしたかったので指先を鍛えました。中に砂が詰まっている球を掴んだり、離したりを100回×2セットやったのですが、昨年までは力を入れないと強いボールが投げられなかったのが、今は力を抜いた時でもキレのあるボールが投げられています。変化球もスピンがかかるようになったので、縦のスライダーが特に良くなりました。

[page_break:打倒・作新学院の思いはずっと持ち続けている]

打倒・作新学院の思いはずっと持ち続けている

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石川 翔(青藍泰斗)

 こうして春を迎えた石川投手。3月中旬に行われた関西遠征では昨秋の和歌山チャンピオン・和歌山東を完封。センバツ帰りの東海大市原望洋戦でも7回を投げて14奪三振で無失点と絶好の滑り出しを見せたが、ここでもケガがつきまとう。4月上旬に股関節を痛め、春季大会は代打での出場のみ。その後、投球を再開すると練習試合で自己最速の149キロを計測するが、今度は肩痛に見舞われた。ただ、6月下旬には戦列に復帰。「今は調子も戻ってきています」と、夏に向けてギアを上げている。

 一方、石川投手は打撃面でも4番を任される長距離砲。
「バッティングはずっと調子が良くないのですが、悪い時はバットのヘッドが下がってしまうので、連続ティーで耳の位置からバットを出すようにフォームを固めています」

 また、守備範囲の広さには自信があるという外野の守備では「一歩目を大事にしています。その一歩目を早くするために、常に足を動かしていますし、最後までボールを見て集中するようにしています」と、話す。ただ、「好きなのはピッチャー。外角の真っ直ぐで見逃し三振を取った時が一番気持ちいいです」

 そして、夏の目標は絶対王者・作新学院を倒して甲子園に出場することだ。
「昨年の秋季大会で作新学院に負けて、みんなとても悔しい思いをしました。この冬は、つらい練習になると『作新だ。作新に勝つぞ』と声を掛け合って、乗り越えてきました」

「打倒作新学院」の想いはチームを一つにし、石川投手の心も変えた。
「昨年の秋までは『一人で野球をやっている』と監督によく怒られていました。実際、ピンチになると淡白になってしまったり、焦ってカウントを悪くすることがあったのですが、今は周りの野手の声が聞こえますし、キャッチャーとしっかり話し合いもできているので、ピンチの場面でも冷静に投げることができるようになりました」

 技術、体力の向上だけでなく、精神的にも成熟し「チームメートの力も借りて、27年ぶりの甲子園出場を果たしたいです」と話す石川投手。この夏のピッチングも期待ができそうだ。

(インタビュー/文・大平 明

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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