試合レポート

木更津総合vs拓大紅陵

2021.10.03

木更津総合vs拓大紅陵 | 高校野球ドットコムこの試合のプレー写真は、記事の最終ページの下部に表示されています

4戦連発含む大会新記録5HR、木更津総合のスラッガー山田がV導いた

木更津総合vs拓大紅陵 | 高校野球ドットコム
4試合連続ホームランを打った木更津総合・山田 隼

 投打で充実の戦力を整えた木更津総合と、敗者復活戦から勝ち上がってきた拓大紅陵。ともに木更津市に学校があり、県内を代表する名門同士の一戦は、木更津総合が初回から主導権を握った。

 拓大紅陵の先発・谷岡優也から3つの四球を選んで満塁とすると、5番・大井 太陽が押し出しの四球を選び、まずは先制した。続く6番・芦川 正真は追い込まれてからライトスタンドに飛び込む満塁ホームランを放って、4点を追加。いきなり5対0と木更津総合が主導権を握った。

 木更津総合は背番号10・金綱 伸悟が先発。躍動感あふれるフォームで、3回までランナーを1人も出さない投球で試合のリズムを渡さない。

 逆に4回に2点を追加すると、6回には注目の1番・山田 隼が今大会5本目となるホームランを放ち、9対0とリードを広げた。

 マウンドの金綱は終盤に拓大紅陵打線に打たれ始め、7回には7番・四十住海都にタイムリーを許し2点を失った。ただ、これ以上の失点を許さず、木更津総合が14対2で優勝を飾った。 

 優勝した木更津総合は、県大会6試合を通じて強力打線を武器に、優勝まで駆け上がった。それを牽引したのは、驚異の1番打者・山田であることは間違いない。

 コンパクトな構えから、ボールに体重をしっかりとぶつけて強くインパクトできる。そんなフォームが印象的な山田は、決勝戦でも4打数2安打2打点。さらに4試合連続ホームラン、1大会5本塁打の大会新記録というおまけつきの大活躍だ。

 県大会は24打数16安打16打点で、打率.667、OPS 2.367と凄まじい数字を残し、山田の活躍ぶりは数字だけでも十分伝わる。

 外野にコンバートされたことで、そのポテンシャルが開花したとのことだが、才能だけで活躍できるほど簡単ではない。日々の鍛錬、そして打席中の思考の両方が伴わなければ、大会記録に並ぶことは出来ないはずだ。



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三塁打を打ってガッツポーズする木更津総合・山田隼

 まず山田は普段から何を意識して練習をしてきているのか。
 「常に強く振ることは意識してきて、フォームに関しては大きく変えていません。ただ、夏の決勝戦ではチャンスで1本打てなかったので、20、30分の素振りではピッチャーを意識して取り組んできたので、タイミングの取り方は上手くなりました。
 あとは、バットの軌道を冬場からレベルスイングに変えたので、そこは気を付けています」

 それまでは上から出し過ぎてしまい、ボールを切ってしまうような打球が多かったそうだ。そこを五島監督に指摘され、山田は構えた時にバットを寝かせるようにした。些細な変化だが、その結果、レベルスイングをしやすくなり、ボールが捉えられるようになった。

 そしてメンタル面の打席内での意識の持ち方で、大事にしてきたことは、初球から振っていく姿勢だ。積極性をもって打席に立てるようにするために、練習から些細なことから大事にしてきた。

 「練習から積極的に行けるように意識したのはもちろんですが、練習試合からチームに向けて、『良い凡退をしよう』と先生方に言ってもらったことが積極性にも繋がっています」

 同じアウトでも、内容の良いアウトになる。凡退することを恐れずに、強気な姿勢で打席に立つことを普段からできたから、山田はこの試合でも最初2打席で凡退しても、積極性を貫いて快音を響かせることができた。次からは関東のライバルと強者揃いになる。その相手に恐れることなく、結果を出せるか。核弾頭の活躍を楽しみにしたい。



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準優勝・拓大紅陵

 一方で敗れた拓大紅陵は、エース・小堺心温を温存し、4投手を継投した。だが、四死球から失点に繋がることが多く、なかなか守備からリズムを作ることが出来なかった。

特に初回は4連続で四球を与え、先取点を与えたところから、満塁ホームランで5失点となってしまった。試合の流れ、自チームのリズムを考えても、大きなポイントであったことは間違いない。

 和田監督は投手陣について、現時点の結果ではなく、経験をどう還元していくのか。それが大事だと捉えている。
 「決勝の舞台で相手が木更津総合さんなので、萎縮するのは当たり前だと思います。ただ投げてみて、怖かったのか。それとも悔しかったのか。その後のメンタルが大事になると思います」

 その一方で、「技術とメンタルの弱さが分かったと思うので、冬は競争することになります」と投手陣に対して、厳しく接していく姿勢を明かした。

 ただエース・小堺の次を担えそうだったのが、背番号14を付けた坂牧映都だ。2点は失ったものの、無四死球と制球が安定しており、安心感はあった。

 セットポジションから滑らかに動きだしていく。身体で右腕を上手く隠して出所が見えにくくしながらトップまで作ると、鋭く右腕を振り抜いた。ランナーを背負ってからの投球は課題だが、変化球を含めてボールには切れがあった。

 和田監督は「入学した時から体が細かったので、『食事をしっかりとって、体重を増やすように』と話していますが、そこまで増えていないので、まだまだです」と評価は厳しい。

 県大会まではエース・小堺中心で勝ち上がったが、「野手でカバーできるようにならないといけないです」と中村瑠斗主将は危機感を募らせている。和田監督も投手陣の整備と併せて、同様のことを危惧している。果たして関東大会までにどれだけ修正できるか。


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優勝・木更津総合

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初回にホームランを打った木更津総合・芦川 正真

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拓大紅陵ベンチ

(記事=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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