都立東村山西vs海城
都立東村山西・井上サヨナラ2ラン!驚異の粘りの海城力尽きる
サヨナラ弾の東村山西・井上真輝
試合後、都立東村山西の三国力監督は、「監督の責任です」と語り苦笑した。内野大輝の好投と、序盤の集中打で都立東村山西が圧倒していた試合は、都立東村山西の失策と海城の脅威の粘りで試合は思わぬ展開になった。
都立東村山西の内野は、ややトルネード気味のフォームから140キロを超える速球を投げ、低めへの制球もいい。特にピンチでの投球に光るものがあり、5回表には一死二、三塁のピンチを迎えたが、海城の1番・野村航大、2番・佐々木章太郎を連続三振に仕留めた。内野は7回まで投げて奪三振9の無失点に抑えた。
都立東村山西は、打っては1回裏二死二、三塁から5番・内野の右前安打を海城の右翼手が後逸し、2点を先制。2回裏には7番・渡邉智明、9番・小栁寛太の二塁打で1点を追加。5回裏には4番・井上真輝の二塁打や6番・高田泰知の右犠飛で2点を追加する。さらに7回裏には井上の左前適時打で1点を追加し、あと1点でコールドというところまできた。
海城の梶徹監督は、「(先発の)中西は本調子でなく、変化球に頼ってしまいました」と語る。それでも海城は、秋季都大会では四球で自滅した感じがあったが、この試合では先発の中西巧が5回を四死球2、2番手の廣江将人が3回を四死球1にとどまり成長の跡をみせた。そうした投球が、海城に流れをもたらす。
7回を終わって6対0で都立東村山西がリード。先発・内野の球数も100球近くなっており、8回からはセンターの守備につき、2番手に右翼手の高田を登板させたのも、当然の選手起用であった。しかし左腕の高田に、海城打線はタイミングが合った。8回表、海城の2番・佐々木の四球と3番・西村拓海の右前安打で2人の走者が出て、5番・青木暢也がレフト柵越えの3ランを放ち、追い上げを始める。
しかしながら、9回表はあっさりと二死。1番・野村は三ゴロ。試合終了かと思われたが、三塁手が一塁に悪送球で命拾い。2番・佐々木が四球で一、二塁としたが、3番・西村は左飛。今度こそ試合終了かと思われたが、これを左翼手が落球。海城が1点を返し、なおも二死二、三塁となった。ここで都立東村山西は中堅手になっていた内野を再度マウンドに上げる。ここで海城の4番・和田泰晟は中前安打を放ち、2人が生還して同点に追いついた。
もっとも緊急再登板の内野は、「2点まではいいと思っていました」と語り、慌てなかった。この落ち着きが海城に行きかけた試合の流れを呼び戻す。
9回表海城は2番手の廣江の打順で代打を送ったので、ライトにまわっていた先発の中西が再度登板した。
9回裏、一死一塁で打席にはこの試合当たっている4番の井上が入る。一死になったところで「自分が長打を打たなければ」と思った井上は、レフト柵越えのサヨナラ2ランを放ち、思わぬ展開の試合に終止符を打った。「真ん中のストレート。うまく打てました」と語る井上は、練習試合を含め2回目のサヨナラ本塁打だという。
都立東村山西は勝ったとはいうものの「いい反省になりました」と三国監督が語るように、教訓の多い試合になった。その一方で、この日は「80%の調子でした」と語る、内野のこれからの投球も注目される。
「最後まで何があるか分からない」(梶監督)という姿勢で戦っていた海城にとっては、敗戦の中で得るものが多い試合になった。
野球の面白さと怖さを再認識させた試合であった。
(取材=大島 裕史)