試合レポート

上野学園vs駒込

2014.09.20

夏のバスター練習が生きた上野学園!エース佐藤康も復活白星

上野学園vs駒込 | 高校野球ドットコム

先発・佐藤康(上野学園)

 今夏の東東京大会で4回戦まで勝ち上がった駒込。しかし、夏は3年生選手が中心だったため、新チームではゼロからのチーム作りとなった。それでも、初回。駒込は、一死から2番齊藤のレフトへの本塁打で1点を先制し、試合をリードする。
いきなりのソロ本塁打を浴びた上野学園のエース佐藤康。
佐藤は、8月中旬まで怪我のため、練習試合での実戦経験を積むことができなかった。新チームになって初めて登板したのが、8月20日に行われた、この日の相手・駒込との練習試合だった。それでも投げたのは、終盤の3イニングのみ。試合は、2戦2敗(7対11、12対13)で上野学園が連敗した。

 この時期の上野学園は、駒込戦だけでなく、練習試合で中々、勝つことができなかった。約25試合を戦って、3~4勝ほどしか出来なかったという。
もちろん、エース佐藤康を怪我で欠いていたことも大きな要因であるが、攻撃力・守備力ともに課題は多かった。それでも、選手たちは、苦しみながらも、練習試合ではテーマを持って取り組み、またベンチワークも大切にし、チームを作り上げてきた。

 その自慢のベンチワークを生かして、この日も、1点を先制されながらも、上野学園ベンチは明るかった。
「全員野球で束(たば)になって戦おう」そんな声が、何度もグラウンドの選手たちの背中を後押しした。
そして3回裏。上野学園は、一死から、8番中川、9番田村がレフトへの連続安打で、チャンスを作る。さらに、1番浅見が相手エラーで出塁し、一死満塁に。ここで、2番坂野が死球を受け、押し出しでまず1点を返す。
なおも続くチャンスに、4番・キャッチャー下川が魅せる。

「自分が打って、ピッチャーを助けたかった。2ストライクと追い込まれて焦りましたが、チームでずっと練習で取り組んできた“右方向へ打つこと”を意識して引き付けて打てました」とライト前への安打を放ち、走者2人が生還。3対1と逆転に成功する。
「夏休みの練習試合で、みんなフライばかり上げてしまうことが多くて、それで、監督さんが『強く低い打球を打つためにバスターから打て』と教えてくれて、チーム全員で取り組んだんです。練習試合では、全打席バスターで打とうとチームで決めて、試合に臨んだこともありました。そのおかげで、ボールを待って、引き付けて逆方向に打てるようになってきました」
 夏の間、取り組んできた練習の成果が、代表決定をかけた一戦のここぞという大事な場面で表れた。


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本塁打を放った5番大澤(駒込)

 さらに、上野学園は、5回にも得点のチャンスを作る。打撃妨害で出塁した9番田村が、犠打と内野ゴロで、三塁まで到達。続く3番佐藤康の内野ゴロが、相手の守備のエラーを誘って、その間に田村が生還。1点を追加する。

 試合は、4対1と上野学園リードのまま、終盤に突入する。
駒込はこれまでも再三、上野学園のエース佐藤康を攻めて、好機を作ってきたが、あと一本が出なかった。
6回には、4番牧の中前打などから一死満塁の好機を作るも、ここは佐藤康がダブルプレーに終わる。7回にも、四球と1番松瀬の中前打から、二死二、三塁とするも、初回で本塁打を放っている2番齊藤をセカンドゴロ。3番田丸もセンターフライに打ち取られ、この回も無得点。
しかし、8回表。駒込もあきらめない。4番牧が中前打で出塁すると、5番大澤がライトへの2点本塁打。これで、3対4の1点差に詰め寄った駒込
しかし、その後は、佐藤康が、「ホームランは打たれましたが、低めに投げることを意識し続けました」とピシャリと抑え、試合を締めた。

 4対3、上野学園が逆転で駒込を下し、東京都大会進出を果たした。

 怪我から復帰して、まだ1ヶ月と、実戦から遠ざかっていた佐藤康だったが、この日は、被安打8、三振7、失点3と力投。
「ベンチの盛り上がりから力をもらいました。みんなの声がピンチの場面でも助けてくれた」そう試合後に語った佐藤康。
投げ込みができない時期は、走り込みなどで下半身と体幹と強化。球を受けてきた捕手の下川も、「ストレートの伸びと、スライダーのキレが増しました」と成長を実感。投げ始めは、球速はやや落ちたものの、勝てる投球が出来るようになったという。

 エース佐藤康を柱に、来月開幕の秋季東京都大会でも、高いベンチワーク力を生かし、上野学園らしく元気に熱く戦っていきたいところ。
また、代表決定戦で、惜しくも敗れた駒込は、試合後のミーティングでは「準備力」を課題にあげ、来春に向けて再スタートを切った。

(文=安田未由

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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