試合レポート

【春季東京都大会】佼成学園が日大三から悲願の勝利!狩塚の決勝三塁打、左腕・熊谷が力投

2024.04.08


佼成学園・熊谷憲祐

<春季東京都高校野球大会:佼成学園4-2日大三>◇7日◇3回戦◇コトブキヤスタジアム

佼成学園にとって日大三は、ライバルというより壁のような存在だ。2020年の独自大会で9回サヨナラ勝ちをしたことがあるものの、これまで幾度も対戦し、たとえリードしていても、最後はひっくり返されるということが多かった。

夏のシード権のかかった今回の対戦も、引き締まった好ゲームになった。日大三は畠山 将豪投手(3年)、佼成学園熊谷 憲祐投手(2年)と、ともに左腕投手が先発した。

先制したのは佼成学園であった。3回、佼成学園はこの回先頭の1番・狩塚 光陽内野手(2年)が二塁打を放ち、2番・市川 烈外野手(2年)が送り、4番の内島 獅王外野手(3年)の右前安打で先制した。しかし日大三もその裏、2死一塁から、2番・清水 太一内野手(3年)の二塁打で同点に追いつく。

5回、佼成学園は1番・狩塚が再度二塁打で出塁し、2番・市川の犠打で三塁に進み、3番・元山 航太が四球で出塁すると盗塁し、1死二、三塁から、4番・内島が中前安打。狩塚は生還したが、日大三の中堅手・土井 貴仙外野手(3年)の好送球で二塁走者の市川は本塁で刺され、1点止まりだった。二塁走者の市川は足も速いが、生還できなかった。「外野手の肩もいいですね。プレッシャーがかかりました」と佼成学園の藤田 直毅監督は言う。失点を最小限に抑える伝統校の堅い守りは、相手校にとっては脅威になる。

6回、日大三は3番・土井の中前安打に、続く4番・織田 大成外野手(3年)の三ゴロは、佼成学園の三塁手・元山の失策となった。新基準のバットになり、緩いボテボテの内野ゴロが増えている。その処理も重要な課題である。そして5番・飯田 拓音内野手(3年)が送り、6番・西鍛冶 玄太捕手(3年)の二ゴロで土井が生還して同点に追いついた。

日大三は6回から先発の畠山に代わり、同じ左腕で背番号1の谷亀 和希投手(3年)が登板した。一方、佼成学園は先発の熊谷が投げ続けている。好投手の左腕を守りが支え、試合は延長戦に入りそうな雰囲気になってきた。

しかし9回、佼成学園は7番・原島 響捕手(3年)が左前安打で出塁し、8番・熊谷が送り、9番・間野 結斗内野手(2年)は三振に倒れ、2死二塁で、この試合では二塁打2本でチャンスメークをしていた1番の狩塚に打順が回る。狩塚の打球は左翼手の頭を越える三塁打になり、貴重な勝ち越し点を挙げた。「打ったのは真っ直ぐです。上がりすぎたかなと思いましたが、外野手が前に来ていたので助かりました」と狩塚は語る。新基準のバットについて狩塚は、「高いフライは失速しますが、ライナー性の打球は伸びます」と語る。まさに新基準のバットの特性をいかした三塁打であった。続く2番・市川も右前安打を放ち、1点を追加した。

佼成学園としては日大三が相手だと、リードしても安心はできない。9回、日大三は、6番・西鍛冶の打球が、またも新基準のバットになってから増えている緩い当たりのゴロになり、それを三塁手の元山が失策し、無死からの走者が出た。さらに8番・松岡 翼内野手(2年)も死球で出塁して一、二塁になり、長打が出れば同点に追いつく場面になった。過去の対戦では、こうした場面で追いつかれたこともあった。球場には期待と不安が交差して、緊張感が漂っていた。

「逃げずに攻めていく」と語る熊谷は、後半に入るとむしろ球威が増していた。「アドレナリンが出ていました」。9番・谷亀は二飛、そして1番・本間 律輝外野手(2年)は中飛に倒れ試合終了。佼成学園日大三を破り、4回戦に進出。夏の大会のシード権も確保した。

「全て出し切るつもりで試合をしました。熊谷はどこまで持つかと思いましたが、よく投げてくれました。この展開で勝てたのは大きいです」と藤田監督は語る。春季大会は関東大会止まりで、甲子園に行けるわけではない。けれども、長く存在した日大三の厚い壁を、9回を守り切って破ったのは気持ちの面では大きい。佼成学園が西東京大会の最初の優勝チームとして甲子園に行って50年。その後、甲子園から遠ざかっているが、半世紀ぶりの聖地に期待が高まる1勝であった。13日に帝京と対戦。強豪との対戦が続く。

日大三佼成学園の熊谷に4安打に抑えられたのが響いた。好投手をいかに攻略するかが課題となった。「一生懸命やるだけです」と三木 有造監督は語る。昨年の春は打てずに準決勝で敗れたが、夏には見事に打線が強化されていた。当然、このまま引き下がるわけにはいかないだろう。それにしても、昨年の東東京大会を制した共栄学園は、この大会は1回戦で敗れている。そしてこの試合で日大三が敗れたことで、東東京大会も西東京大会も前年の優勝校がノーシードで大会に臨むことになる。まさに混戦状態になっている。

<関連記事はこちら>
【トーナメント表】春季東京都大会 結果一覧
【一覧】一次予選を勝ち抜いた都大会出場48校
【トーナメント表】東京都1次予選 結果一覧
【一覧】東京都の主要大会スケジュール
25年ぶりの大転換期! 2024年東京の高校野球”3つの見どころ
【春季東京都大会】新星現る! 東京高・永見光太郎が二松学舎大附を3安打1失点に抑え込む! 二松学舎大附、夏はノーシードに

この記事の執筆者: 大島 裕史

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.11

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在28地区が決定、長野では松商学園がノーシードに

2024.05.11

【2024年最新版 スーパー中学生リスト】 関東地区の強豪校注目の遊撃手、高校スカウト殺到の大型左腕、中村剛也の長男など38人をピックアップ

2024.05.11

シニア日本代表が発表!選抜大会準優勝の主力打者、ベスト4の主将、優秀選手などが選出!

2024.05.11

【阪神大学】V7の天理大の戦力紹介!投手力、打撃力、機動力充実の布陣で大学選手権へ!

2024.05.11

名門・東海大相模の進路紹介!プロ注目打者は東洋大、エースは中央大で早くもリーグ戦に出場!

2024.05.08

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.11

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在28地区が決定、長野では松商学園がノーシードに

2024.05.06

センバツV・健大高崎は夏も強い! Wエース抜きで県大会優勝、投打に新戦力が台頭中!

2024.05.06

【関東】山梨学院と常総学院がそれぞれ優勝、出場校の対戦が確定<春季大会>

2024.05.06

【春季埼玉県大会】花咲徳栄4回に一挙10得点!20得点を奪った花咲徳栄が昌平を破り優勝!

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.21

【兵庫】須磨翔風がコールドで8強入り<春季県大会>