2年で9人がドラフト指名 徳島IS・岡本哲司監督「驚異の育成術」を解き明かす! 「最強育成球団」の圧倒的な“選手に気づかせる”環境づくり
取材に応じる岡本哲司監督
成長の下準備となるのが「ウエイト」
――となると徳島で伸びる選手は自分から相談できる選手ということですね。
岡本:基本的に私から話かけていくことはない。練習メニューは提示します。本気で取り組んで、それでも困って、指導者に頼ってきた選手は伸びます。先に言っても、選手たちが聞くつもりがなければ、遠回りはしてしまうんです。
――今年の6人はどうでしたか?
岡本:宮澤(太成・埼玉西武ライオンズドラフト5位)は途中まで来なかった選手でした。ただ、椎葉が良い形になってきて、ドラフト候補として騒がれるようになった。ドラフトにかかりそうな選手がでてきて、自分だけ遅れるという形になった。その中で宮澤は「自分はどうですかね?」と聞いてきたんです。そこで色々話をしてから、一気に伸びてきました。
――選手が成長するにあたって、一番大切なことはなんですか?
岡本:大事にしているのは体作り。パフォーマンスを発揮できる体の使い方を見出すことです。
――井上 絢登選手(DeNA6位)は、スイング軌道を変えるために監督からティーバッティングのドリルを教わり、毎日同じ練習をしたそうですが。
岡本:体の動きを忘れてしまうから。体に記憶させるために1年間やり続けるんです。例えば股関節が硬い選手であれば、毎日、メディシンボールを使ったトレーニングをやる。自分の弱みを理解して、毎日やり続けることが大切です。
これはNPBにいる選手たちも同じ。悩みもあるし、課題もある。そこを自分でやれるかどうか。それを大事にしています。
――自分で気づくかどうかが大切なんですね。
岡本:体の中から沸き立つような意欲がないと動きというのは絶対に良くならないんです。指導者の役割は選手が「水が飲みたい」と思った時に飲ませる感じですね。選手から求めていかないと変わらない。
ただ、どのチームもやっていることなんですけど、選手がやりたいと思った時に下準備ができていることも大事です。その下準備にあたるのがウエイトになるわけです。
選手が課題を克服できるような良いことを言っても、体の下準備ができないと意味が無いんです。
選手たちは感覚的にこれだ!と思ったメニューを徹底的にやる。指導者はそのメニューまで提供できるかどうか。練習の質を追求する上で、まず量をこなすことが大事です。並行して体も強化することも大事なんです。
――1人ずつ話し合って、その選手にあったゴールを共有し合っているんですね。
岡本:しています。しないといけない。
組織で活躍できる人材を育てたい
――和歌山南陵高校の監督もされていますが、どういう指導をされていましたか。
岡本:野球の指導は同じですね。点取りゲームですから。高校野球は1学年でどれだけの投手が穫れるかが大事になります。甲子園にいくにはしっかりと抑えられる投手が2人は必要になる。高校の監督は2年ほどやりましたが、一期生たちが県の記録を作りました。1番〜4番までホームランを打って、市立和歌山を破ったんです。
南陵時代はスカウトはやりませんでした。取り合いになってしまうので。南陵でやりたい子で頑張るスタイルでした。将来自分たちが入った組織の中で、レギュラーになってもらいたいな、と思って指導していました。
――野球を通してどのような人間になってもらいたいと思っていますか。
岡本:インディゴで育てて、世の中の違う組織で活躍してほしい。世の中のさまざまな組織で活躍できる人材を育てたいですね。
徳島の選手たちは、最後までNPBを目指します。選手たちの前には、太い道もある。細い道から太くなる選手もいる。太くても途切れては意味がない。2024年の徳島インディゴソックスにも期待してください。
<岡本哲司監督インタビュー>
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【岡本哲司監督 経歴】
●選手としての経歴
吉備- 神戸製鋼所 – 横浜大洋-日本ハム
●指導者経歴
日本ハム・北海道日本ハム (二軍バッテリーコーチ:1997年~2002年/二軍監督:2003年~2006年)
横浜(一軍総合コーチ:2009年、2011年)
信濃グランセローズ (監督:2013年)
オリックス(二軍監督:2014年)
和歌山南陵高校(監督:2016年~2020年)
徳島インディゴソックス(球団戦略アドバイザー兼コーチ:2021年)
徳島インディゴソックス監督(2022年~)
●主な教え子
ダルビッシュ 有投手
田中 賢介内野手
若月 健矢捕手など
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