試合レポート

加藤学園vs浜松開誠館

2023.05.04

粘り合いのいい雰囲気の投手戦、加藤学園が昨年覇者の浜松開誠館に辛抱勝ち

加藤学園vs浜松開誠館 | 高校野球ドットコム
加藤学園・小澤亨彦君

<春季高校野球静岡県大会:加藤学園2-1浜松開誠館>◇4日◇準決勝◇静岡草薙

 昨年のこの大会で、一躍大躍進して初優勝を飾った浜松開誠館。グレー地に濃いエンジという高校野球では珍しい色合いのユニホームのインパクトも強烈だった。その後の東海地区大会でも優勝し、一大旋風を巻き起こしている、西部地区の躍進校である。

 一方、加藤学園はコロナ禍で中止になってしまった2020年のセンバツ大会に代表校として選出されていた。その後の夏の代替え大会となった甲子園での交流戦で勝利している。以降も安定した実績を残すようになっており、日大三島と並んで東部地区の注目校の1つとなっている。

 こうして、このカードはいわば、近年躍進してきた西部地区と東部地区の新鋭校同士の対決と言ってもいいであろう。準々決勝では、浜松開誠館は同じ西部地区の伝統校の掛川西を下し、加藤学園は中部地区の強豪藤枝明誠を下しての進出である。

 加藤学園は15番をつけた、公式戦は初先発となった2年生の小澤 亨彦投手。浜松開誠館は背番号14ながら、去年は投打にこの大会の優勝にも貢献した左腕・廣崎 蓮投手(3年)が先発。序盤はお互いに走者を出しつつも粘りながらの好投で、それぞれ3イニングずつ0を重ねた。小澤投手は163センチと決して身体は大きくはないが、制球力がいいのと球の回転が良く打者の手元で伸びているという感じだった。廣崎は、いいリズムでバネの利いた投球でテンポもいい。そんな投手戦だった。

 均衡が破れたのは4回で、加藤学園は先頭の5番・北條 創太外野手(2年)が左翼線二塁打で出ると、しっかりとバントで送り、2死三塁となったところで、安東 飛雅内野手(3年)の強いゴロは相手失策を誘い、三塁走者がかえった。試合の流れからいって、次の得点がどちらにどういう形で入るのかが大きく行方を左右するのではないかと思われた。

 ところが、どちらもなかなか本塁が遠く、両投手のテンポも上がっていく。浜松開誠館は7回、8回と無死の走者を出してバントで二塁までは進めるものの、次の1本が出ないで9回まで来てしまった。

 9回、加藤学園は1死から7番・松本 太一外野手(3年)が左前打すると、加藤学園ベンチは代走の小室 太陽外野手(2年)を送る。そして、すかさず二盗を決めて揺さぶる。2死二塁となったところで、好投していた9番・小澤の打順だが、打者としてはここまで無安打。しかし、ちょこんと捉えた打球は風にも乗った感じで左翼頭上を破る三塁打となり、二塁走者が生還。9回になって、貴重な追加点が入った。

 自身のタイムリー打で2点リードとなって、小澤は余裕の投球で2者を打ち取る。そのまま三者凡退になるかと思われたが、浜松開誠館も粘る。2死から代打・新妻 恭介捕手(3年)が上手に合わせて右中間へ二塁打。さらに1番へ回って、このところ成長著しいと言われている深谷 哲平内野手(3年)も左前打して一、三塁。同点のランナーとなった。そして、2番・吉松 礼翔内野手(3年)も逆らわず右へおっつけて一、二塁間を破って三塁走者がかえり1点差となった。

 ここで堪らず、加藤学園・米山学監督は、リリーフに、やはり2年生ながら「度胸は一番」という鈴木 日陽投手を送り出す。鈴木は「さあ! オレの出番が来た」とばかりに勇んでマウンドへ走る。そして、度胸ある投球で3度バットに空を切らせて三振でフィニッシュ。何とか1点を守り切ったが、まさに、“守護神”のような投球だった。

 これで加藤学園は、昨秋に続いて2大会連続の東海地区大会進出となった。

 米山監督は安堵しながらも、「今日の先発は小澤で行くということは昨日から決めていました。正直なところ、5回まで引っ張れればいいかなと思っていたのですが、ここまで投げるとは思ってもいませんでした。それに、最後は、簡単には上手くいかないんだということも学べたし、夏を見据えた上では、チームの底上げという意味でも、とても大きい収穫です。鈴木に関しては、こういう使い方で行くよということは伝えてありますから、本人もその気で、行く気満々でした」と、精神的にもタフな2年生投手を称えた。

 そして、東海大会進出に関しては、「大きい舞台で、県外の強いチームと緊張感のある場で試合ができるということは、経験という意味でも夏へ向けてとても貴重なことになる」と、抱負を述べていた。

 浜松開誠館は、9安打で加藤学園と変わらなかったが、9回以外は、安打として繋がっていかなかったのがいたかった。それでも、廣崎の好投は佐野心監督としても、夏へ向けては心強い材料となったのではないだろうか。

(取材=手束 仁)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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