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世界初となる女子のワールドシリーズが栃木県で開催 ポニーが目指す選手ファーストの大会

2023.03.31

 第5回ワールドベースボールクラシック(WBC)の影響もあり、野球界は例年以上に盛り上がっている。各国がドリームチームを組んでいることで、世界各所で野球熱が高まった。そんな特別な年に、日本で初となる世界大会の開催が、刻一刻と迫っていた。

世界や日の丸へ憧れる女子選手たちのために

世界初となる女子のワールドシリーズが栃木県で開催 ポニーが目指す選手ファーストの大会 | 高校野球ドットコム
那須勇元事務総長

 「民間レベルでは女子の世界大会は初となります」

 2月1日、都内で開催された記者会見の場にて、日本ポニーベースボール協会の那須勇元事務総長から記念すべき大会の開催が発表された。「ECCインビテーション SSKカップ 第1回PONY Girls Baseball World Series」である。

 記者会見時に配布された資料によると、World Seriesの商標使用はポニー本部がMLBから権利を有しているとのことで、米国以外で開催されるのは史上初のことになるという。

 歴史的な大会の1回目を、日本の栃木県小山市、栃木市を中心に7月31日から8月4日までの期間で開催する。今回の大会開催に向けて現在も準備を進めている那須事務総長は、「責任を持って、次に繋がる大会にしないといけない」と初開催となる国際大会の意味を、深く理解したうえで、続けてこう語る。

 「今大会はポニー本部より許可をもらって開催をしております。ですので、国際大会にふさわしい競技性の高さを保ちながらも、ポニーらしく大会を完遂できるようにしたいと思っています」

 はじまりは3年前。ポニーのなかでも女子選手が増えてきたことを現場で感じていた那須事務総長は「(女子選手も)世界を相手に戦うチャンスを公平に作ろう」と思い立ったところから始まった。

 男子に交ざって代表チームに入っていくのは難しい。そこで「女子の世界大会も必要だ」と考えた那須事務総長は、ポニー本部に大会開催への提案を持ちだすと、「良いんじゃないか」と二つ返事で賛同。幸先よく事は運び、順調に進んでいくかと思われた。

 しかし2020年、新型コロナウイルスの蔓延に伴い、国内全体で海外の受け入れが難しい状況に代わり、世界初の大会の開催は先延ばしになった。開催時期が見込めない時期が続いたが、何もせずに待っているわけではない。女子の日本一決定戦を開催するなど、ポニー本部に向けて、女子の国際大会を開催したいということをアピールし続けた。

 同時に出場選手たちにも話を聞き、「世界大会や日の丸を背負う子に憧れがある」ことを再確認してきた。より一層、準備に励んでいったが、決して大会運営側の自己満足にならないよう、「選手たちが何をしたいのか」ということを探りながら進めていった。

[page_break:世界大会にふさわしい競技性、イベントで完遂させる]

世界大会にふさわしい競技性、イベントで完遂させる

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那須勇元事務総長

 まずは世界大会の名にふさわしい競技性の担保。そのポイントとして、スピード感にあると考えた那須事務総長は「筋力や走力を考えて決めました」と通常よりも2メートル短いポニーのグラウンドサイズを適用した。

 「元々、私たちは年代に適したグラウンドサイズのノウハウはありますが、本部はWBSCがフルサイズでやるのが当たり前なので、『どうしてポニーサイズにするのか』と認識のすり合わせは必要でした。
 私たちとしては、現場で試合を見て選手たちの脚力、スピード感を見て『何がベストなのか』と考えて判断しました。米国で盛んな女子ソフトボールは、野球よりも距離が短いから面白いので、それに置き換えましょう、ということで認識が一致しました」

 グラウンドサイズを調整することで、高い競技性が実現させた。ただポニーの持つ使命は「社会に役立つ未来の人材を育成する」ことであり、人としての幅を広げることにある。だからグラウンド外でも様々な取り組みを準備している。

 宿泊先のホテルでパーティーを開催したり、「アジアパシフィックゾーンの女性委員より、選手たちの希望を聞いた」という花火を実施したりと、日本文化を感じてもらえるようなイベントを通じて国際交流をしていく。あくまで「自己満足ではなく、選手の望むことをやろう」と選手ファーストで世界にいるポニーの仲間たちを歓迎するつもりだ。

 海外がほぼそろい始めており、日本は引き続き募集中で、第2回大会も継続して開催されるのが約束されている。初となる女子の国際大会、開催するという事実以上に大きな意味を背負ってやることになりそうだ。

 理事長・広澤克実氏にゆかりがある小山市を中心に、7月末は大いに盛り上がることを期待したい。

(取材=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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