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元プロの97年甲子園準優勝左腕もコーチに加入。選抜有力の龍谷大平安の現在地

2023.01.21

元プロの97年甲子園準優勝左腕もコーチに加入。選抜有力の龍谷大平安の現在地 | 高校野球ドットコム
原田英彦監督

 昨秋の近畿大会で4強入りを果たし、4年ぶりのセンバツ出場がほぼ確実な京都の名門・龍谷大平安。順当に選出されると、42回目のセンバツ出場となり、これは全国トップの数字だ。

 3月に開催されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表内定のヤクルト・高橋 奎二投手など、プロ野球で活躍するOBも多数輩出している。今回は9年ぶりの全国制覇を目指す龍谷大平安の現チームに迫った。

 龍谷大平安の名物練習といえばアップだ。卒業後も長く野球を続けてほしいという原田英彦監督の思いもあり、将来を見据えて関節の可動域を広げるトレーニングを多く行っている。取材日は新年の練習が始動してまだ2日目だったが、春に向けてアップから活気に満ち溢れていた。

 「予想以上に元気があり、思い切りの良いチームです」と現チームについて語る原田監督。昨夏のベンチ入りは全員が3年生で、本来は正遊撃手だった現主将の山口 翔梧内野手(2年)は怪我でメンバーから外れていた。

 新チーム結成時は柱となる投手もおらず、先行きが見えない状態。さらに原田監督の頭を悩ませたのがルールを守れない部員が多いことだった。そこで原田監督は「チームとしてのルールを守らないとチームは一体化しない」と選手に説き、ルール順守を徹底させた。

 その中で自覚が生まれたのが4番の山下 慶士外野手(2年)。「自分がしっかりやってチームに貢献しないとダメだと改めて思いました」と寮長に立候補し、行動からチームの模範になろうとした。すると、結果も上向き、昨秋の公式戦は打率.469、1本塁打、11打点の大活躍。主砲としての役割を十分に果たした。

 秋の京都府大会は難なく準決勝まで勝ち進んだが、準決勝で京都国際相手に4対14で8回コールド負け。それでも延長10回サヨナラの末に鳥羽との3位決定戦を制し、辛くも近畿大会の出場権を獲得した。

 3位ではあるが、近畿大会までステージを進めたことで、「近畿大会くらいからみんながルールを守れるようになってきて、それで少しずつ結果が出てきた」(原田監督)と公式戦の中でチームの成長を感じられるようになった。

 近畿大会は初戦で和歌山海南(和歌山)に17対0の5回コールド勝ちを収めると、準々決勝では奈良高田商(奈良)に5対0で快勝。準決勝では明治神宮大会を制した大阪桐蔭(大阪)に敗れたが、3対5と接戦を演じた。


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桒江駿成

 近畿大会躍進の立役者となったのが、この大会からエースナンバーをつかんだ桒江 駿成投手(2年)だ。最速は131キロと決して速くはないが、右横手から多彩な変化球を駆使して凡打の山を築く。近畿大会では3試合を1人で投げ抜き、23回で自責点2の活躍を見せた。

 「最初は他の投手を軸にと考えていましたけど、桒江が一番ピッチャーの中で心の芯が強かったという結果になりました。ですから近畿は彼に託したわけですよね。期待に応えてくれました」と原田監督。元々はスリークォーターだったが、「変化球の精度が少し横にした方が上がると思ったので」と自らの考えで横手投げに転向する思考力も持ち合わせている。

 そして、投手力向上に一役買っているのが昨年4月に就任したOBの川口知哉コーチだ。高校時代はエースとして1997年夏の甲子園で準優勝投手となり、同年のドラフト1位でオリックスに入団。プロでは思うような活躍ができなかったが、引退後に女子プロ野球の指導者として手腕を発揮した。

 母校のコーチとなってからは原田監督に投手育成を任されている。「配球面で言われることがたくさんあって、その配球を覚えられたことで自分は成長できたと思います」と桒江が話すように、好投の裏には川口コーチの存在があった。指導者になったかつての教え子の姿を原田監督はこう評価する。

 「ピッチャーと会話をしてくれていますね。彼は優しいですよ。『怒らなアカンやろ!』ということも度々あるんですけど、『ちょっと話します』と。彼の引き出しの中であの手この手を使って高校生に接してくれているので、恐らくコミュニケーションという部分では非常に彼らは嬉しいんじゃないかなと思います。練習試合が終わってからもピッチャーのミーティングをしたりとか、細かく言ってくれますよね」

 プロでの挫折や女子選手への指導など様々な経験を生かして後輩を指導している。現状は桒江に次ぐ投手の成長がチームの課題の1つだが、川口コーチが底上げに努めていくことだろう。

 野手の課題は大阪桐蔭戦で5失策と乱れた守備だ。「1試合でエラー5つしたのは僕の中でもあまり記憶にない」と原田監督は危機感を抱き、この冬は守備練習に力を入れている。センバツでは伝統の堅守を見せることができるだろうか。

 無事に27日の選考会で選出されれば、龍谷大平安としては4年ぶりの甲子園となる。在籍する選手は全員初出場となるが、山口を筆頭に「絶対に優勝したい」と主力選手たちは声を揃えている。そのことを原田監督に伝えると、次のように語ってくれた。

 「目標はそれで良いと思います。その根拠を作っていくにはなかなか時間はかかると思いますけど、高校生なのでどれだけの力を発揮するかわからないですから、やはり優勝したいという思いは持っていかないといけないと思います」

 優勝という目標を現実に近づけていくための冬がこれからも続く。甲子園通算103勝を誇る名門はセンバツでどのような戦いを見せてくれるだろうか。

(記事=馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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