Column

甲子園通算8度出場の強豪・鳥取城北 濃密な練習量が生む一体感で再び甲子園へ

2023.01.26

甲子園通算8度出場の強豪・鳥取城北 濃密な練習量が生む一体感で再び甲子園へ | 高校野球ドットコム
前田 拓来(鳥取城北)

 2023年も3月のセンバツを皮切りに熱戦が期待される。神宮大会を制した大阪桐蔭(大阪)、さらに決勝戦で奮闘した広島広陵(広島)などが中心となって、高校野球界を牽引していくだろう。

 そんな広島広陵と接戦を演じ、センバツ出場へ期待が膨らんでいるのが、春夏合わせて甲子園8度の出場を誇る鳥取城北(鳥取)だった。

 秋季中国大会では、一時3点差までリードを奪うも終盤で主導権を明け渡し、6対8で敗れた。ベスト4という結果に終わり、センバツ出場に向けては当落線上に入ることになった。

ハードワークが生んだ一体感

 「終盤で個人の差を感じましたけど、向こうは神宮大会で準優勝した。そんなチームと接戦が出来たことは自信を持てました」

 チームの主力である前田 拓来内野手(2年)は広島広陵との一戦を振り返った。夏は鳥取大会2回戦で倉吉北に敗れてから新チームはスタートを切ったが、メンバーはほとんど入れ替わった。まさに1からのスタートだった。当時は「全員が不安だったので、一体感はありませんでした」と前田は話す。

 取材日の様子を見ていると、チーム全体が明るく、まとまりのある印象が強い。一体感がなかった発足時からどのようにして士気をあげたのか。

「夏休み中、振り込みはもちろん、タイヤを使ったトレーニングや坂道ダッシュなど、練習量はかなりこなしました。どれもきついメニューだったので、全員で『頑張ろう』と声掛けをしあうなかで一体感が生まれたと思います」

 チームを指揮する大林監督は「体力、精神力を鍛えることはもちろん、疲れてきてからどれだけ気持ちを保てるか。それが甲子園では必要です」と、去年の冬でも少なくても1000回はメニューを組むなど、練習量をこなすことは意識している。

 取材日も振り込みをする班は、1時間で500スイングするメニューが組まれた。かなりのハイペースに、選手たちの表情を見ていれば厳しい練習であることは見て取れた。ペースについていけない選手が出てくると、自然と周りの仲間たちが声をかけて鼓舞するシーンもあった。

 こうした瞬間を夏休みから数多く共有してきたからこそ、鳥取城北はチームとして一体感が生まれてきた。

[page_break:1勝ずつ積み重ねて甲子園の切符を掴む]

1勝ずつ積み重ねて甲子園の切符を掴む

甲子園通算8度出場の強豪・鳥取城北 濃密な練習量が生む一体感で再び甲子園へ | 高校野球ドットコム
キャッチボールを行う鳥取城北ナイン

 大林監督はチームの雰囲気について、「選手たちが自然と雰囲気を作ってくれるので、あまり言わないです」と話す。そしてオフシーズンだからこその重要性を説く。

「体力強化などのキツイ練習が多いですし、マンネリ化しやすいので、練習効果を高める意味でも良い雰囲気でやれるようにしないといけないです。そのなかで一体感が生まれてくれば、よりいいと思っています」

 前田は今年のチームはムードメーカーとなるメンバーが多いということで、「試合でもベンチの雰囲気は良かったですし、練習から意識してきたことが大きかった」と仲間たちの存在の大きさを改めて語ったが、大林監督もこれまでの経験から、周りの存在の重要性を語る。

「自分がいた日立製作所はファンが多かったので、大阪で大会があっても応援に駆けつけてくれました。相手のスタンドまで入ってしまうくらい大勢の人が来てくれることもあるので、そうした人たちから力をもらっていましたし、学べることが多かったです」

 中国大会の準決勝・広島広陵との試合は、まさに一体感、周りの存在の重要性を強く感じたという。

「広島広陵はスタンドも凄かったですね。スタンドの選手たちも並び方からしっかりと指導されていたので、チームとしての一体感を改めて理解できました。縁の下の力持ちではありませんが、そういったところから組織力、チーム力の差は生まれるものですから」

 チームは県大会初戦こそ堅さがあったものの、勝利を手にすると、徐々に硬さはとれてきた。また「練習量は心の支えになった」と前田が話すように、夏場に積み重ねてきた練習が支えになったこともあり、県大会では優勝を飾る。

 中国大会に入っても、チームとしての一体感を武器に、新庄 空投手(2年)と主将である河西 華槻捕手(2年)のバッテリーを軸に準決勝まで進出した。

 準決勝・広島広陵には終盤の試合運びで敗れたが、中国大会4強入りは今後に向けても自信を深める戦績といっていい。センバツ出場の可能性は残っているが、やはり集大成は夏の大会だ。

 夏の甲子園は2018年の出場が最後になっている。「ここ数年、夏の大会では苦い経験をしてきたので、1勝ずつ積み重ねて、甲子園の切符を掴みたい」と前田は話しており、思いの強さは十分に伝わってきた。センバツ出場を通じて、さらに思いを強くするのか。23年も鳥取城北から目が離せない。

(記事=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.09

【熊本】九州学院は城北と文徳の勝者と対戦<NHK旗組み合わせ>

2024.05.09

プロスカウトは190センチ超の大型投手、遊撃手、150キロ超右腕に熱視線!この春、浮上した逸材は?【ドラフト候補リスト・春季大会最新版】

2024.05.09

「指導者はどこにいる?」九里学園(山形)が 選手主体の”考える野球”で成果着々

2024.05.09

【新潟】日本文理、開志学園、帝京長岡、関根学園が4強<春季県大会>

2024.05.09

【北海道】駒大苫小牧がコールド発進、立命館慶祥、知内も勝利<春季全道大会支部予選>

2024.05.08

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.06

【2024年夏 全国地方大会シード校一覧】現在27地区が決定!

2024.05.06

センバツV・健大高崎は夏も強い! Wエース抜きで県大会優勝、投打に新戦力が台頭中!

2024.05.06

【関東】山梨学院と常総学院がそれぞれ優勝、出場校の対戦が確定<春季大会>

2024.05.06

【春季埼玉県大会】花咲徳栄4回に一挙10得点!20得点を奪った花咲徳栄が昌平を破り優勝!

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.21

【兵庫】須磨翔風がコールドで8強入り<春季県大会>