甲子園通算8度出場の強豪・鳥取城北 濃密な練習量が生む一体感で再び甲子園へ
前田 拓来(鳥取城北)
2023年も3月のセンバツを皮切りに熱戦が期待される。神宮大会を制した大阪桐蔭(大阪)、さらに決勝戦で奮闘した広島広陵(広島)などが中心となって、高校野球界を牽引していくだろう。
そんな広島広陵と接戦を演じ、センバツ出場へ期待が膨らんでいるのが、春夏合わせて甲子園8度の出場を誇る鳥取城北(鳥取)だった。
秋季中国大会では、一時3点差までリードを奪うも終盤で主導権を明け渡し、6対8で敗れた。ベスト4という結果に終わり、センバツ出場に向けては当落線上に入ることになった。
ハードワークが生んだ一体感
「終盤で個人の差を感じましたけど、向こうは神宮大会で準優勝した。そんなチームと接戦が出来たことは自信を持てました」
チームの主力である前田 拓来内野手(2年)は広島広陵との一戦を振り返った。夏は鳥取大会2回戦で倉吉北に敗れてから新チームはスタートを切ったが、メンバーはほとんど入れ替わった。まさに1からのスタートだった。当時は「全員が不安だったので、一体感はありませんでした」と前田は話す。
取材日の様子を見ていると、チーム全体が明るく、まとまりのある印象が強い。一体感がなかった発足時からどのようにして士気をあげたのか。
「夏休み中、振り込みはもちろん、タイヤを使ったトレーニングや坂道ダッシュなど、練習量はかなりこなしました。どれもきついメニューだったので、全員で『頑張ろう』と声掛けをしあうなかで一体感が生まれたと思います」
チームを指揮する大林監督は「体力、精神力を鍛えることはもちろん、疲れてきてからどれだけ気持ちを保てるか。それが甲子園では必要です」と、去年の冬でも少なくても1000回はメニューを組むなど、練習量をこなすことは意識している。
取材日も振り込みをする班は、1時間で500スイングするメニューが組まれた。かなりのハイペースに、選手たちの表情を見ていれば厳しい練習であることは見て取れた。ペースについていけない選手が出てくると、自然と周りの仲間たちが声をかけて鼓舞するシーンもあった。
こうした瞬間を夏休みから数多く共有してきたからこそ、鳥取城北はチームとして一体感が生まれてきた。
1勝ずつ積み重ねて甲子園の切符を掴む
キャッチボールを行う鳥取城北ナイン
大林監督はチームの雰囲気について、「選手たちが自然と雰囲気を作ってくれるので、あまり言わないです」と話す。そしてオフシーズンだからこその重要性を説く。
「体力強化などのキツイ練習が多いですし、マンネリ化しやすいので、練習効果を高める意味でも良い雰囲気でやれるようにしないといけないです。そのなかで一体感が生まれてくれば、よりいいと思っています」
前田は今年のチームはムードメーカーとなるメンバーが多いということで、「試合でもベンチの雰囲気は良かったですし、練習から意識してきたことが大きかった」と仲間たちの存在の大きさを改めて語ったが、大林監督もこれまでの経験から、周りの存在の重要性を語る。
「自分がいた日立製作所はファンが多かったので、大阪で大会があっても応援に駆けつけてくれました。相手のスタンドまで入ってしまうくらい大勢の人が来てくれることもあるので、そうした人たちから力をもらっていましたし、学べることが多かったです」
中国大会の準決勝・広島広陵との試合は、まさに一体感、周りの存在の重要性を強く感じたという。
「広島広陵はスタンドも凄かったですね。スタンドの選手たちも並び方からしっかりと指導されていたので、チームとしての一体感を改めて理解できました。縁の下の力持ちではありませんが、そういったところから組織力、チーム力の差は生まれるものですから」
チームは県大会初戦こそ堅さがあったものの、勝利を手にすると、徐々に硬さはとれてきた。また「練習量は心の支えになった」と前田が話すように、夏場に積み重ねてきた練習が支えになったこともあり、県大会では優勝を飾る。
中国大会に入っても、チームとしての一体感を武器に、新庄 空投手(2年)と主将である河西 華槻捕手(2年)のバッテリーを軸に準決勝まで進出した。
準決勝・広島広陵には終盤の試合運びで敗れたが、中国大会4強入りは今後に向けても自信を深める戦績といっていい。センバツ出場の可能性は残っているが、やはり集大成は夏の大会だ。
夏の甲子園は2018年の出場が最後になっている。「ここ数年、夏の大会では苦い経験をしてきたので、1勝ずつ積み重ねて、甲子園の切符を掴みたい」と前田は話しており、思いの強さは十分に伝わってきた。センバツ出場を通じて、さらに思いを強くするのか。23年も鳥取城北から目が離せない。
(記事=田中 裕毅)