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シンスプリントの痛みを動きで改善する

2022.12.15

シンスプリントの痛みを動きで改善する | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 オフシーズンに入り、体づくりのためのトレーニングや体力強化を目的としたランニングを行っているチームも多いのではないでしょうか。野球のパフォーマンスを高めるためにもその基盤となるフィジカルトレーニングは欠かせないものです。一方で、ランニング量が増えると、膝やすねに痛みを覚える選手も見られるようになります。今回はランニング障害の一つである「すねの痛み=シンスプリント」について、そのメカニズムやセルフコンディショニングをご紹介します。

シンスプリントとはすねの痛みの総称

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着地時の荷重と地面反力のズレが骨の「たわみ」を生む

 シンスプリントという言葉を聞いたことのある選手は多いと思います。一般的には、すねの骨膜が傷む脛骨過労性(けいこつかろうせい)骨膜炎のことを指しますが、実際はすねの痛みの総称を「シンスプリント」と呼ぶことが多いようです。これは骨膜の炎症だけではなく骨と筋肉(筋膜)の滑走性(すべり)が悪くなることで、筋膜などを傷めている場合も含まれるからです。最初の頃はすねの内側に痛みを感じますが、運動後しばらく時間が経った後や安静時には痛みが軽減、消失するため、軽度の痛みであれば練習を継続できることがその特徴として挙げられます。ところがこの状態が長期にわたって続くようになると、痛みが軽減せず、次第に骨膜の炎症から疲労骨折へと進行してしまうことがあるので注意が必要です。

骨が「たわむ」とすねが痛くなる

 シンスプリントを引き起こす要因はさまざまですが、その一つに着地による骨の「たわみ」が考えられます。足を着地させるとき、体重を地面にのせ(荷重)、地面からは地球が体を押し返す反力が得られるのですが、荷重時に体が外側に逃げるような状態になっていると、すねの骨が針金を曲げるように反ってしまい、「たわみ」が生まれます。この状態でランニングを続けていると、たわみ部分に大きなストレスがかかり、やがて痛みとなって現れるようになります。

 足が地面に接地するときに体が外側に傾かず、地面の反力に対してまっすぐに荷重できるといいのですが、外側荷重になってしまう要因として

・足裏のアーチ機能が落ちている(偏平足など)
・正面から見て骨盤が正対していない(着地足側に回旋している)
・膝が内側に入りやすくなっている(ニーイン・トゥアウト)

などが挙げられます。

[page_break:足底のアーチの機能を高めよう/着地時の体の使い方を確認してみよう]

足底のアーチの機能を高めよう

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足指を使って足底の筋肉を鍛えるタオルギャザー

 足裏には衝撃を吸収するためのアーチ機能が存在しています。ところが足裏が平らな偏平足になると、地面から受ける衝撃がそのまま体重を支える荷重関節(足関節、膝関節、股関節など)に作用するため、大きなストレスがかかりやすくなります。また足周辺部の筋肉をはじめ、下肢の柔軟性が低下してしまうこともまた偏平足の一因となります。足裏のアーチ機能を改善させるためには、テニスボールを使って足裏を軽くマッサージしたり、裸足での青竹踏みを行ったりするようにしましょう。また足指のグーパー運動をする、タオルを使って足指でタオルをたぐり寄せるタオルギャザーといったエクササイズは足指の把持力(はじりょく:つかむ力)を鍛え、足底部の筋力強化に役立ちます。

着地時の体の使い方を確認してみよう

 着地した時にやや外側荷重になっているとシンスプリントを起こしやすくなりますが、走っているときに確認するのはむずかしいかもしれません。体の使い方を確認するときに実践しやすいエクササイズの一つがフォワード(前方向への)ランジです。立った状態から一歩前へ踏み出し、また元の位置に戻るエクササイズですが、このときに膝が内側に入らないようにつま先と膝の方向を同じにすることや、踏み出した足側に骨盤が回旋していないかを確認しながら行っていきましょう。骨盤の出っ張り部分に左右それぞれ手を当てて、踏み出したときに踏み出した足側の手が前方に移動していないか(骨盤の前方回旋)を見るとわかりやすいと思います。セルフチェックがしやすいように、なるべく鏡に正対した状態で行うようにしましょう。

 また片膝立ちになり、前側にある足のかかとを地面から浮かせて下ろすカーフレイズを実践すると、ふくらはぎの筋肉が正しく使えているかどうかを確認することができます。この時、前側にある足のふくらはぎを両手ではさむこむようにして行うと、内側と外側の筋収縮をそれぞれ感じることができます。外側荷重になりやすい選手では、外側の筋収縮が強く、内側の筋肉がうまく使えていないことがあります。内側の筋肉を収縮させる意識を持って動作を修正するようにしてみましょう。

 こうした体の使い方はランニングを行う前に修正しておくと、動作エラーの改善が期待できます。ランニング量が増える時期は特に、あらかじめシンスプリント予防のためのエクササイズやストレッチなどを積極的に行うようにしましょう。

【シンスプリントの痛みを動きで改善する】
●シンスプリントとはすねの痛みの総称
●軽度であれば練習を継続できるが、長引くと疲労骨折を引き起こすこともある
●着地時の荷重と地面反力とのズレが骨の「たわみ」を生み、痛みの一因となる
●足裏アーチが低下した偏平足は荷重関節に大きな力が加わりやすい
●着地するときに外側荷重にならないようにエクササイズでチェックしよう
●片膝立ちのカーフレイズでふくらはぎの内側にある筋肉が使えているかどうかを確認しよう

文:西村 典子
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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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