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トレーニング環境に変化をもたせよう

2022.11.30

トレーニング環境に変化をもたせよう | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 秋の明治神宮大会も終わり、本格的なオフシーズンが到来しました。これからしばらくは対外試合がなく、自チームでそれぞれの課題に取り組むことになると思います。技術の向上はもちろん、技術を下支えする体力面での強化も行いながら、来春には今よりもさらにレベルアップできるといいですね。さて今回は体力づくりのために行うトレーニング環境について考えてみたいと思います。トレーニングは「きついもの」「厳しいもの」という印象をもたれがちですが、実施する環境に変化をもたらすことでマンネリ化を防ぎ、さまざまな体力要素を鍛えることにつながります。

トレーニング内容や環境を変化させる

トレーニング環境に変化をもたせよう | 高校野球ドットコム
上り坂でのランニングは足を踏ん張り、前傾姿勢を保って体幹部を安定させる必要がある

 体力要素(筋力、筋持久力、敏捷性、柔軟性、バランスなど)は、一つ一つを個別に鍛えるというよりも、いろんな要素が複雑にからんだ中でトレーニングによって鍛えられます。ところが同じトレーニングばかりを繰り返していると、ある体力要素は強化され、使われていない体力要素は鍛えられないという、体力面での偏りが見られるようになります。そこでときどきトレーニング内容を見直したり、トレーニング環境に変化を持たせたりすることが必要となってきます。トレーニングには与えられた刺激によって、体がその刺激に見合った適応を示すようになる特異性の原則があり、トレーニング環境の変化は体力面での偏りを防ぐため、そしてトレーニングのマンネリ化を防ぐためにできる手段の一つです。皆さんのチームでも取り組みやすい環境の変化を挙げてみます。

傾斜の利用《上り坂》

 グランドの脇や校内、またその近隣などに坂道があると、その傾斜を利用してランニングを行ったり、ダッシュを繰り返したりすることができます。傾斜を利用したランニングにはグランド(平地)とは違った刺激が加わります。

 「足腰を鍛える」イメージの強い上り坂のトレーニングですが、地面に対して前傾姿勢を保ちながら走ることを心がけましょう。特に踏み込んだときに体の重心が接地した足の真下にくるように、足指で地面をつかむイメージで走るようにすると、足が後方に流れることなく走ることができます。苦しくなると顎が上がりやすくなってしまいますが、そこをグッとこらえて前傾姿勢を保つようにすると、下半身だけではなく姿勢を保つための体幹部分もあわせて鍛えられます。上り坂でのランニングでは主に筋持久力や心肺機能の向上を目的とし、筋力強化はウエイトトレーニングをメインとして行う方がより効率よく鍛えられます。

[page_break:傾斜の利用《下り坂》/砂地を利用する]

傾斜の利用《下り坂》

トレーニング環境に変化をもたせよう | 高校野球ドットコム
砂浜でのトレーニングでは平地に比べて体をコントロールすることがむずかしい

 ランニングは一歩の歩幅(ストライド)と足の回転数(ピッチ)を掛けあわせることでスピードが決まります。下り坂を使って行うランニングでは、傾斜によって足の回転数が上がるため、平地では体感できないようなスピードを出すことができます。この時にかかとからドタドタと接地してしまうと、アクセルを踏みながらブレーキをかけている状態となり、膝や足首、腰などを痛める一因ともなります。また走り終わった後に下り坂で急ブレーキをかけるのではなく、平地を利用してゆるやかにスピードを落とすようにしましょう。特にアスファルトなど硬いところを走る際は下肢に負担がかかりやすいので、時間や本数などをあらかじめ決めておくことも大切です。

砂地を利用する

 砂地や砂浜などで行うトレーニングやランニングは、地面からの反力を受けることがむずかしく、不安定な状態で体を支えるトレーニングとして活用することができます。砂地でのランニングでは、足が流れたフォームでは体が前に進みにくいため、踏み込み足に体重をのせながら体を前進させていくことが必要となります。ペアで行うトレーニングでは体幹を保持しながらバランス感覚を養うことができます。砂地や砂浜が利用できない場合は、アジリティディスク(不安定板)を使ったり、バランスボールを使ったりすることで、不安定な状態をつくりだし、姿勢を保持するためのバランスや筋持久力などを鍛えることができます。

 時にはトレーニング環境に変化を持たせるようにすると、トレーニングのマンネリ化を防ぎ、さまざまな体力要素を鍛えることにもつながります。チームによっては「グランドを毎日使えない」環境の中で練習しているところもあると思いますので、それを逆手にとって違った環境でもできるトレーニングを実践してみてくださいね。

【トレーニング環境に変化をもたせよう】
●同じトレーニングの繰り返しでは体力要素の強化に偏りがみられる
●体はトレーニング刺激によって適応する(特異性の原則)
●トレーニング環境の変化は体力面での偏りを少なくし、マンネリ化を防ぐ
●上り坂を使うと下肢の筋持久力や姿勢を保つための体幹部の強化にもつながる
●下り坂では足の回転数が増え、平地では体感しにくいスピード感覚を養うことができる
●砂地でのトレーニングは体を保持し、コントロールするバランス能力を養うことができる

文:西村 典子
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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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