試合レポート

都立江戸川vs正則学園

2022.07.14

メンタルトレーニングの成果も出て、江戸川が中断明けに猛攻で快勝

<第104回全国高校野球選手権東東京大会:都立江戸川6-4正則学園>◇13日◇2回戦◇江戸川区

 江戸川の園山蔵人監督は“セルフジャッジベースボール(通称SJB)”を提唱している。これは、言うならばベンチからの指示(サイン)で動くのではなく、プレーしながら選手たちが自分の判断で動いていくということを前提としている野球だ。そして、連携なども、選手たちのアイコンタクトで進めていくことが基本としている。つまり、自分たちの感性を信じてプレーを決めていくという形である。

 これがうまく機能しているようで、昨秋もブロック予選を突破。今春も都大会初戦では快勝している。

 対する正則学園は、千代田区神田錦町のビジネス街に学校があり、グラウンドはほとんどないに等しい状況だ。平日の練習では、グラウンドが取れなかった時にはティーバッティング程度しかできないという。それでも、國島一平監督は土日の練習試合などを積み上げていくことを大事にしながら、「積」をテーマとしてチームを作り上げてきた。

 また、両校は毎年10月1日の都民の日には定期戦的に練習試合を組んでいるという、お互いによく知っている間柄でもある。

 この日は、朝からもう一つ天候がすぐれない状態だったが、定時より少し早くプレーボールがかかった。5回までは淡々とした形で流れていった。初回に江戸川が先頭からの連打の後、バントで進め内野ゴロで先制した。これに対して正則学園は4回に2死走者なしから4番松井が二塁打すると続く渡辺が中前へ落してこれが同点適時打となった。

 そして、勝負の行方は後半にもつれ込んでいくなと思われた5回が終了したところで雨脚が強くなって試合は中断となった。

 こういうケースでは、再開後のイニングに動きがあることが多い。そのことは、両チームのベンチも十分に把握していて、正則学園の國島監督は「再開したすぐの、6回が勝負になるぞ」ということは中断中にも選手たちに伝えていたという。江戸川は、園山監督が「ウチは中断試合に慣れているんですよ。一旦気持ちを切って、思いっきりリラックスさせて、そこから状況を見ながら徐々に上げていく」という気持ちの緩急をコントロールしていくことも、メンタルトレーニングを実施している中で学習しているという。

 その6回、江戸川は先頭の2番高橋智之が右前打すると、続く岡部が左翼線に落として二、三塁。ここで4番森坂が二塁打を放って2人がかえって江戸川がリードする。さらに、四球後一、三塁という場面で青木のセーフティースクイズは失敗で三走が刺されるが、三本間で粘ったことで1死二、三塁に。ここで、「1、2打席目は凡退だったけれどもタイミングは合っていると思った」(園山監督)という千葉が中前へはじき返してさらに2人がかえり江戸川はこの回4点を奪った。

 その裏を江戸川の吉村が3人でしっかりと抑えた。

 さらに、7回にも江戸川は2死二塁から3番岡部の2打席連続となる二塁打でもう1点を追加した。結果的には、この1点が大きく効いた形にもなった。

 正則学園も8回には代打攻勢で和田、小野がことごとく安打するなどして食い下がり2点を返す。さらに、9回には4番松井が「スライダーを上手に拾えた」というソロアーチで2点差。まだまだ分からないぞという展開だったが、江戸川の吉村は最後まで自分のペースを崩すことなく投げ切った。吉村としては、練習試合を通じても初めての完投だという。

 「実は、5回を終わった段階で足が攣りそうだったんです。それが、中断ということになって、スパイクなどを脱いでリラックスして、これで回復することができました」と、中断のタイミングも実は、結果的にはラッキーだったということになったようだ。

 江戸川のSJBは、この試合では必ずしも機能していなかったところもあったようだが、メンタルトレーニングの効果は十分で、中断という中で気持ちの切り替えなども上手にできていたようだ。園山監督は、「吉村は、エースとして成長したところを示してくれた」と喜んでいた。

 正則学園の國島監督は、「山崎が入ってきた時から、いいモノ持っていたので、この投手で勝負しようと思っていました。去年は肩を故障したこともあって、あまり投げられず、リハビリなどで辛いところもあったのですが、一生懸命頑張っていました。負けはしましたが、本当によく投げてくれました」と、右サイドの山崎の好投を称えた。ただ、中断明けの6回だけ、少し慌ててしまったところを捉えられてしまい、そこが悔やまれた。

 「1年生も今年は例年よりはるかに多く23人入りました。また、次へ向かってチームを作っていきます」と、國島監督は次のチーム作りへ目を向けていた。

(取材=手束 仁)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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