小金vs日大習志野
日大習志野が最終回に一挙6点を奪うも…小金がサヨナラ勝ち
小金先発・池田司瑳
<第104回全国高校野球選手権千葉大会:小金8-7日大習志野>◇11日◇2回戦◇第一カッター
小金と日大習志野の一戦は、最終回に一挙に6点を奪った日大習志野が勝利目前だったところから、小金がサヨナラ勝ちをつかんで2019年以来となる夏の大会の勝利を手にした。
サヨナラ打を放つなどの活躍を見せた武市貫志外野手(3年)は、「6点取られたときは『終わった』と思いました」と9回の守備を振り返ったあと、「仲間から『チャンスで回す』と言っていたので準備していました」と仲間たちのことを信じて最後まで戦い、迎えた打席では直球を打ち返し、試合を決めるヒーローになった。
そんなヒーロー・武市とともに、8回1失点と試合を作った小金の先発・池田司瑳投手(3年)を紹介したい。
ノーワインドアップから動き出し、しっかりと胸を張って投げるが、テイクバックが大きいこともあり、体が開いてから、左腕が出てくるまで少し間がある。「もともと今のようなフォームでした」というアーム式のようなフォームで腕が遅れてくるので、少しタイミングが合わない。
またピッチングの構成を見ていくと、直球の軌道から沈んでいくカットボールが中心。新チームスタートから「高校野球の強豪校でも使う選手が多い」ことを監督に教わったことを受けてから練習を始めた。
野球漫画からヒントを得て、イメージを固めてきたが、春先から次第に武器になり、この試合では威力を発揮。以前は直球とカーブのコンビネーションの配球パターンだったが、直球と思わせるカットボールがあることで、カウントを稼ぐだけではなく、凡打を築くことができるようになったという。
投球フォームの特長に加えて、カットボール、カーブのおかげもあってか、最速130キロだという直球は変化球との球速差で見た目以上に速く感じさせ、日大習志野の各打者が捉えたと思われた打球も、あと少し伸びが足りずに、野手の正面を突くことが多くみられた。
2回に1点を失ったものの、打たせて取る投球を体現する見事な投球で8回までは粘りの投球でホームを踏ませなかった。
最終回の攻防はベンチで見守った。「バッティングの実力で代えられてしまって、守備で残れればよかった」と降板したことを悔やんでいたが、「やれることはできた」と投球については満足していた。次戦の登板も楽しみだ。
試合は小金が6対1とリードして9回に入ったが、日大習志野が6番・舘克斗内野手(3年)の適時打などで一挙6点を与え、6対7と逆に追いかける立場に。
それでも何とかサヨナラの場面を作ると、7番・武市がレフトへのサヨナラ打を放ち、3時間の激闘を制した。
日大習志野先発・丸野敦也
県内でも有数の進学校であり、2021年の夏は千葉大会でベスト8まで勝ち上がった日大習志野。最終回に意地を見せたが、あと少し手が届かず、小金の前に敗れた。
エース・丸野敦也投手(2年)は立ち上がりを攻め立てられ、浮いた球を小金打線にはじき返された。ただ伸びのある直球と、切れのあるスライダーを外角中心にして組み立てる投球で、7回以降はランナーを背負っても粘りの投球でスコアボードに0を並べ続けてきた。
セットポジションから素早く、かつコンパクトにトップを作って右腕を体で隠すと、オーバースロー気味の高さから右腕を振り抜く。小金の池田とは対照的に、縦回転の投球フォームはまとめられており、小柄ではあるが投手らしい投手という印象を受けた。
8回の失点を含め、高めに抜けてきた失投を捉えられ、失点を重ねたことは悔やまれたが、9回に記録した6点は日大習志野の意地、ベンチ、スタンドすべてで成し遂げた攻撃で、まさに夏の高校野球を象徴するものだった。
打たれた直後、動けない選手たちも何人かいたが、最後の整列では胸を張って20人が並んだ。サヨナラで敗れた悔しさはもちろんあるだろうが、堂々とした姿は後輩たちに何かを残したはずだ。