市立船橋vs拓大紅陵
26年ぶりの春の関東へ ケガを乗り越えたエース・坂本崇斗が4失点完投
市立船橋先発・坂本崇斗
<春季高校野球千葉大会:市立船橋5-4拓大紅陵>◇3日◇準決勝◇千葉県野球場
千葉県有数の強豪として知られてきた市立船橋が、26年ぶりに春季関東大会の扉を開いた。同校OBの指揮官・海上監督は「先発した坂本が、エースとして責任感をもって投げてくれた」と最後までマウンドに立ち続けた坂本 崇斗投手(3年)の好投を称えた。
この試合で、立ち上がりは自己最速141キロを計測するなど、力強い真っすぐを使っていたが、「打たれ始めましたので、配球を変えました」と130キロ台のカットボールも上手く使って昨秋の準優勝校・拓大紅陵を抑える好投。最後まで1人で投げ抜き、関東大会に導いた。
セットポジションから始動して、軸足にしっかりタメを作ると、鋭い横回転で右腕をスリークォーター気味の高さで振り抜く。開きがしっかり抑えられたフォームだ。指揮官はは一冬超えて「チームのことを考えて行動できるようになった」と成長ぶりに目を細めた。
坂本本人がオフシーズンに取り組んできたのは、「ストレートの質を向上させよう」というテーマを掲げて考えた末の練習だった。
肘のケガが癒えてから本格的に練習し始めたが、そのときから質を高めることを考えてきたという。そのためにリリースの感覚を変えてきた。
「オリックス・山本 由伸投手(都城高出身)の動画を見まして、リリースを早くして、球を指ではじくようなイメージで投げるように変えました。それをしたことで、球の質が高まった手ごたえがあります」
この試合で自己最速を更新したが、決して必然ではなく、けがを乗り越えて、練習を積み重ねた成果だった。
またコーナーを広く使えたことも大きかった。拓大紅陵の指揮官にして、元プロ野球の和田監督が「内角を突く投球が良かった」と坂本を評価。投球術も優れていることを示した。
自軍、相手からも賞賛された坂本が、決勝戦または関東大会でどういった投球を見せるのか。
坂本は2回に2点を失い、苦しい試合運びとなったが、3回に反撃。3番・森本 哲太外野手(3年)の一打と、相手のミスで勝ち越しに成功。4回にも追加点を奪い、4対2とリードを広げた。
5回、6回に拓大紅陵へ1点ずつ返されて1点差になったが、そこからは坂本が粘りの投球。終盤も得点圏にランナーを背負いながらホームを踏ませずに、拓大紅陵を下した。
[page_break:]拓大紅陵、関東大会逃すも投手陣に手ごたえ 04年以来の甲子園へエースの成長に期待
拓大紅陵先発・小堺心温
<春季高校野球千葉大会:市立船橋5-4拓大紅陵>◇3日◇準決勝◇千葉県野球場
秋に続いて2季連続での関東大会出場をあと一歩で逃した拓大紅陵。和田監督は試合後、開口一番に「まだまだ力がたりないですね」と今回の敗戦を正面から受け入れていた。
しかし、秋はエース・小堺 心温投手(3年)が中心となって戦っていたことを考えれば、充実の冬を過ごしたことは間違いない。特に、投手陣の整備は成功したといっていいだろう。
3回戦・市立柏戦で先発した嶋田 翔太投手(3年)や谷岡 優也投手(3年)といった投手陣が台頭し、小堺の負担を減らすことができた。
エース・小堺も「疲労が溜まりにくくなりました」と話せば、和田監督も「試合で使えることがわかったので、夏に向けては好材料だと思います」と暑さとも戦わなければならない夏の大会を勝ち抜くうえで、手ごたえをつかんだ。
野手の守備力も高まったことで、投手を中心に守備からリズムを作れるようになったが、「大事なところはエースが投げないといけない」と小堺が話していた通り、勝負どころではやはりエースの力は必要不可欠だ。
エース・小堺はゆったりとワインドアップで始動していくと、鋭く縦回転をさせて腕を振り下ろす。130キロ台の真っすぐに、自信を持っているという120キロ台のスライダーのコンビネーションで市立船橋打線と勝負した。
この試合は「スライダーでカウントを取れずに苦しんだところで、ストライクを取りに行って打たれました」と落ち着いてピッチング内容を詳しく振り返った。特にカウントを取れる変化球の必要性を強く感じているようで、夏への課題に掲げた。
和田監督は「中1日で疲労があったかもしれないし、配球の偏りがあったように見えました」とエースの出来を振り返ったが、夏は中1日でも結果を出さなければならない。
集大成の夏までに、どれだけ投球の幅を広げられるか。また、投手層に厚みができたことで、競争は激化するだろう。そのなかで小堺がどのような投手に成長するのか。2004年のセンバツ以来の甲子園へ、あと1歩を踏み出すだけの力を蓄えられるか注目だ。
(記事=田中 裕毅)