生活リズムと防衛体力
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
年の瀬が押し迫り、皆さんは来たるべき新年に向けてそれぞれが思いを新たに過ごしていることと思います。実家でゆっくり過ごしている人も多いことでしょう。さて今年最後のセルフコンディショニングコラムは生活リズムと防衛体力について考えてみたいと思います。皆さんが想像する「体力」と「防衛体力」にはどのような違いがあるのでしょうか。
体力は大きく2つに分けられる
体力には行動体力とともに外的ストレスに対抗する防衛体力が存在する
パフォーマンスアップにつながる基礎体力づくりでは、さまざまなトレーニングを行っていることと思います。ウエイトを使ったトレーニングに限らず、バランス能力や敏捷性、体の柔軟性を高めるための試みなど、体力はいろいろな要素に分類することができます(参考ページ:体力要素をアップさせるための体づくり )。皆さんが体を動かすために必要な体力のことは「行動体力」と呼ばれています。一方、行動体力に対して外的ストレスから体を守り、その機能を維持しようと調整する能力のことを防衛体力と呼びます。行動体力と防衛体力の両方が高いレベルにあることが理想的ですが、例えば筋力やスタミナなど行動体力が高くても、外的ストレス(環境やウイルスなどの病原菌、精神的なストレス・不安など)に対する抵抗力(防衛体力)が下がっていると体調を崩しやすくなります。体調を崩してしまうと、せっかく鍛えてきた行動体力も十分に発揮することができなくなります。
防衛体力の指標としたい脈拍や体重の変化など
行動体力は体力テストなどによって数値化しやすいものですが、防衛体力は体力テストで評価できるものではなく、把握することがむずかしい側面もあります。多くの場合、自分の体調を振り返ったときに「いつもより体がキツい」とか「疲れがいつまでも抜けない」といった感覚的なものに頼りがちです。体から発信されるシグナルを受け取って、コンディションを整えるために行動することはもちろん大切なことですが、脈拍や体重など数値化できるものによっても体調の変化を読み取ることが可能です。オーバートレーニング症候群と呼ばれるコンディション不良状態の指標として、起床時の脈拍をチェックする方法があります。これは普段から記録をつけておく必要がありますが、毎朝起きたときに心拍数を測定し、いつもよりも脈拍が増えている状態が続くと体調不良の兆候ととらえることができます。体重についても、減量などの極端なウエイトコントロールをしていないにも関わらず、体重の減少傾向が続く場合は、運動量などを調整しながら体力の回復をはかることが望ましいと言えるでしょう。
[page_break:生活リズムを極端に変えないこと]生活リズムを極端に変えないこと
暴飲暴食には気をつけつつ、なるべく普段どおりの生活リズムを維持しよう
防衛体力を維持するためには生活習慣を見直す必要があります。特に長期休暇などでチームの活動がお休みになっているときは、つい夜更かしをしてしまったり、偏った食生活を送ってしまったりといったことが考えられます。休暇中であっても学校があるときの生活リズムと変わらずに過ごすことを心がけましょう。特に睡眠不足、暴飲暴食は体の抵抗力を下げる一因にもなりやすく、風邪などの感染症リスクも高くなってしまいます。基本的なことですが就寝時間や起床時間は普段どおりに設定し、十分な睡眠時間を確保するようにしましょう。生活リズムを整えるという点では、就寝時間は多少前後してしまっても、起床時間を変えないことがポイントです。
その上で休暇中にしかできないことにチャレンジしてみたり、趣味を楽しんだりしながら心身のリフレッシュをはかるようにするとなおいいですね。オススメの方法としては「何となくゴロゴロと過ごす」という過ごし方ではなく、「今日はゴロゴロするぞ!」と決めてゴロゴロする、「この時間は動画の視聴を楽しむ」と決めて実践するといったようにスケジュールとして組み込むようにすると、同じ過ごし方でも充実し、自分自身が納得できる過ごし方になるでしょう。
防衛体力は体の抵抗力だけではなく、心の状態によっても左右されるものです。休暇が長引くとトレーニングの中断が気になったり、休暇後の全体練習に気をもんだりすることもあると思いますが、自分のできる範囲で軽く体を動かし、生活リズムを整えながら、時にはゆっくりと休むことも防衛体力を維持することにつながります。普段どおりの生活を心がけつつ、休暇を楽しむようにしてみてくださいね。
【生活リズムと防衛体力】
●体力は大きく分けて行動体力と防衛体力の2つがある
●防衛体力とは外的ストレスから体を守り、その機能を維持しようと調整する能力のこと
●防衛体力が下がってしまうと行動体力も十分に発揮することができなくなる
●防衛体力は脈拍や体重の変化によってある程度推察することができる
●生活リズムの乱れは防衛体力を下げることにつながりやすい
●心身のリフレッシュをはかり、普段どおりに過ごすことで防衛体力を維持しよう
(文=西村 典子)