Interview

甲子園を沸かせた評価急上昇の遊撃手・山里宝(神戸国際大附)の原点は「右肩の故障」【前編】

2021.10.25

 今年の甲子園で攻守に躍動した神戸国際大附山里 宝(2年)。春は二塁手、夏は遊撃手として軽快な守備を見せ、打撃でも存在感を発揮した。さらにこの秋からはスイッチヒッターにも挑戦。身長173㎝、体重68㎏と決して体は大きくないが、身のこなしには確かな将来性を感じさせる。

「スカウト」されて軟式へ

甲子園を沸かせた評価急上昇の遊撃手・山里宝(神戸国際大附)の原点は「右肩の故障」【前編】 | 高校野球ドットコム
山里宝(神戸国際大附)

 兵庫県高砂市出身の山里は幼稚園児の頃から野球に親しみ、小学生の時には伊保中部野球部に所属し、内野手以外にも投手や捕手をこなしていた。

 神戸国際大附ほどの強豪校であれば、中学時代は硬式のクラブチームでプレーしていた選手が多いイメージを持つが、山里は松陽中の軟式野球部出身。「自分が硬式に行っても通用しないと思っていた」と考えていたことに加え、当時の顧問が熱心だったこともあり、入部を決めた。松陽中の軟式野球部は県大会決勝まで進むほどの力があり、山里も声の大きさと視野の広さを活かして中心選手として活躍していた。

 神戸国際大附に進むきっかけとなったのは、同校が2017年に春夏連続で甲子園に出場した時のことだった。スタンドで試合を観戦していた当時中学1年生の山里は、「ユニフォームがカッコイイと思って、ここで僕もプレーしたいと思いました」と進学を希望し、神戸国際大附の門を叩いた。

 しかし、現実は甘くない。同級生が次々と公式戦デビューを果たす中で、山里は1年生の間にベンチ入りすることはできなかった。高校から硬式に移行した山里はボールの跳ね方の違いに苦戦したという。

「軟式とはまずバウンドが違いますし、抵抗はあったんですけど、3年間やっていく中で、そこを難所としていてはメンバーに絶対入れないので、そういうところを人一倍練習してきました」

 その中で昨年12月に右肩を痛めてしまった。足を使わずに肩に頼ってしまったことが故障に繋がったと考えた山里はひたすら足の運びの改善に取り組んだ。すると、「上(半身)は脱力ということを考えてやっていたら、上下のズレがなくなってきて、暴投が減りました」とスローイングの精度が向上。「肩は強くない」と話す山里だが、「誰よりも良い送球が投げられると思っている」と送球に自信が持てたことで、今までよりも守備位置を深くできるようになった。

 持ち味の守備を伸ばした一方で、「打たないと試合に出れないのはわかっていました」と冬場は打力と体幹の強化にも力を入れてきた。「体は小さいですが、飛ばす力やスピードはあるので、そういうところを磨いてきました」と長所を伸ばしながら打撃面でも存在感を発揮できるように練習を積み重ねてきた。

センバツで1安打も納得せず

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山里宝(神戸国際大附)

 努力が実を結び、センバツでは背番号18を勝ち取った。「メンバーに入るのが目標じゃなくて、甲子園に出て活躍するというのが目標だったので、そこで活躍してやろうという気持ちになりました」と決して満足することなく、センバツで結果を残すために熱意を燃やしていた。

 センバツでは2試合とも9番二塁手でスタメン出場。1回戦の北海戦では軽やかな足さばきと抜群の球際の強さを見せつけ、守備で大活躍を見せた。打撃でもソフトバンクにドラフト3位指名された木村 大成から1安打を放ち、存在感を発揮した。

 しかし、「1本しか打ってないので、そんなに活躍したとは思っていない」と本人の中では決して納得のいく結果ではなかった。「まだまだ周りの人とは体が小さいですし、先輩に比べたら打つ力も全然なかったので、振ることだけを意識していました」とさらなる打力向上に力を注いだ。

(記事:馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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