Interview

高校補欠選手が1年後NPBへ! 西武育成2位・谷口 朝陽の「徳島夢物語」<インディゴソックス ドラフト指名6人全員インタビュー④>

2023.12.18


谷口 朝陽

今年のドラフトで「11年連続指名」と史上最多の「同時6人指名」を成し遂げた四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックス。この圧倒的な実績はどこから生まれるのか。
今年指名を受けた6人のインタビューからその秘密に迫るこの企画。4人目は西武育成2位・谷口 朝陽投手(広陵出身)である。
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1年でNPBへ行くことが恩返し。そして勇気と希望を与える

「呼ばれた時は頭の中が真っ白になりました。何も覚えていなくて、実感もなかったです」

指名の瞬間を谷口はこう振り返る。
それもそのはず、1年前、谷口は広陵の控え投手だったのだ。公式戦のベンチ入りができたのは、3年生の春だけ。エースナンバーを背負う経験をしたものの、公式戦の登板をほとんどすることなく、高校野球3年間を終えた。
「みなさんからは『3年生の春はエースだったよね』って言ってもらえますが、自分らはコロナ世代だったこともあり、メンバー入れ替えができたんです。結果としてその試合だけ1番をつけただけで、あの段階で自分がつけられるだけの技術はなかったとは思っています」
谷口は、高い身体能力と140キロを超えるストレートを持つ、注目の選手ではあった。しかし、ケガが多く、実力を発揮することができなかったのだ。

インタビューに答える谷口 朝陽

広陵野球部員は高校卒業後、ほとんど大学に進学する。だが谷口は中井哲之監督には「絶対1年でNPBに行きたいです」と思いを伝え続けた。
「中井監督はじめ、みんなから控えだった自分に凄く期待してくれました。なのに、3年間全く結果を出すことができずに終わってしまいました。だからこそ、『1年でも早く大きな舞台に立ってみんなへ恩返しをしたい』とずっと考えていました。
控えの選手たちにも伝えたかったんです。『1年あれば変わることができるよ』って。控えだった自分が1年でNPBに入ることで、勇気や希望みたいなものを与えたいと思ったんです。だから1年でNPBに勝負できるところを探したんです」

恩師は谷口の熱意を汲み「自分が決めたことなら、頑張ってやりなさい」と背中を押した。彼が選んだ「1年でNPBに入る」道とは、四国アイランドリーグplus・徳島インディゴソックスへの入団だった。谷口は名門・広陵から直接独立リーグに進んだ初めての選手となった。

NPBに最も近い慣れ親しんだチームで「俺が一番になってやる」

谷口朝陽(徳島インディゴソックス・投手)<撮影:佐藤友美>

「インディゴソックスに入ったのは、生まれ育ったのが徳島だったというのはもちろんあります。けど一番は、どこよりも一番NPBに近いチームで、『ここならNPBに行ける』環境だと思ったから。あと、中学生の時にインディゴソックスにお世話になったことがあったんです。『自分を知っている指導者がいる、ここなら大丈夫。成長できる』と安心できたことも大きいですね」

そう話す谷口は徳島の生光学園中出身。じつは中学時代に「インディゴコンディショニングハウス」に通っていたのだ。

この施設は殖栗正登トレーナーが経営するフィジカルの強化と治療を同時に行える場所だ。
徳島インディゴソックスの選手たちが日々通っているが、他の野球選手も指導を受けることができる。
「中学1年生の3月、ヒジを怪我してしまったんです。当時から硬式をやっていて負担がかかったことと成長期が重なって、同時に骨折と靭帯を切ってしまったんです。ずっと投げられなかったのですが、病院を探しているときに、『スゴい先生がいるみたいだよ』と当時のチームメイトの親に勧められたのが、コンディショニングハウスでした。
最初は治療や検査、リハビリのために通っていました。そのなかで、先生から『こういうのをやっているよ』というので勧めてもらったのが、『長期育成野球トレーニング教室』でした」

この教室で谷口は身体の使い方を学んだ。大きなケガを抱えてプレーができない中、この教室で得たものは大きかった。
こうした縁もあって「1年でNPBへ行くために」谷口はインディゴソックスを選んだ。もちろん、環境が厳しいのはわかっていた。
「高校3年間、広陵っていう日本一の学校でやってきたので、『俺なら大丈夫』とずっと思っていました。だから入団する前から、たとえどれだけスゴい選手がチームにいても絶対に気持ちで負けない。自分から負けないように、『大丈夫、大丈夫』と言い聞かせていました。
チームには先輩しかいませんでしたけど、『この人には勝てん』と思ったことはありません。逆に『絶対にやってやる。俺が一番になってやる』と思って、練習し続けました」
(取材・文=田中 裕毅)

▼インタビュー後半はこちら
谷口朝陽(西武育成2位)、来て自ら気づいた「無限の可能性」、登板わずか3試合でNPB入りの驚くべき背景<インディゴソックス ドラフト指名6人全員インタビュー④後編>

【徳島インディゴソックス指名6人全員インタビュー】他の記事はコチラから

この記事の執筆者: 田中 裕毅

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