神戸国際大附vs北海
序盤から注目左腕に重圧かけた神戸国際大附、北海・木村は152球に納得
木村大成(北海)
◆ポイントは木村の出来か
甲子園での対戦は今回で3度目となり、過去2回はいずれも1点差勝負だ。直近となる選抜の開幕戦で熱戦を演じた両校の対戦は、再び好ゲームとなったが、ポイントは北海の木村大成の調子だ。
前回は中盤まで木村が好投を見せたが、終盤に疲れてきたところで、神戸国際大附が持ち返してサヨナラ勝ちを掴んだ。その点でも木村が同じ相手に、どんな投球をするかは、勝負の分かれ目だと思われた。
◆序盤から仕掛けて主導権を握った
この回は結果的に無得点だったものの、2回は7番・栗原 琉晟の二塁打で無死から得点圏にランナーを置く。送りバントで三塁に進めると、9番・川西 琉成のスクイズで神戸国際大附が先制する。さらに前の打席で二塁打を放った山里が再び二塁打を放ち、2点を先制した。
神戸国際大附の先発は背番号9を付けた阪上翔也だ。選抜では序盤で降板し、思うような投球ができなかった。課題を残したマウンドだったが、この日は違った。
序盤から148キロを計測するなど、好調ぶりを見せる。またストレートだけではなく、変化球も効果的に交ぜて、北海打線を封じる。
5回に四球と、9番・小原 海月の二塁打からピンチを招き、1番・山田 堅真のタイムリーで1点を与えるが、それ以上の失点をせずに、5回でマウンドを降りた。
その後は2番手としてエース・楠本晴紀が登板する。ランナーを背負う苦しい場面が続いたが、何とかリードを守り、神戸国際大附が勝利した。
◆見極めてチャンスを広げた
この試合、神戸国際大附が2回の集中攻撃で制したが、選抜からの成長を見せられたのが大きいのではないだろうか。
木村の代名詞といえば真っすぐと変化の大きいスライダーだ。選抜の時は、特にスライダーに手が出ずに、5回一死までノーヒットに抑えられる苦しい試合運びだった。だがこの試合では、序盤からスライダーに対して手が止まるケースが多かった。
実際、この試合では選球眼の成長が見られた。選抜の時は5回まで1つだけだった四死球が、この試合は5回まで4つ選んだ。三振数こそ選抜と同じ8三振だったが、序盤からしっかり選んで、「無言」のプレッシャーをかけた。
そのうえで甘く入ってきたボールに対してきっちりとコンタクトして、快音を響かせた。選抜の時に出せなかった長打も生まれるなど、春からの成長を確かに見せた。
◆ファウルでもプレッシャーをかけていく
実際に試合後、選手たちに話を聞くと、鍵は変化球への対応力だった。
「木村さんと対戦するうえで注意したのは、右打者は膝元のスライダーは消えるように曲がりますし、チェンジアップも多かったです。だから真っすぐに絞って、変化球が浮いてきたところを狙っていこうと話していました」(山里宝)
また、青木監督も初回からしっかり攻撃できたことを攻略の要因に挙げた。
「前半から良い当たりのファウルを含めて、良い当たりを出せたことでプレッシャーをかけられたと思います」
青木監督は普段からフルスイングをさせるなかで、どうすればジャストミートできるか。フルスイングの精度を高めることを大事に指導してきたことを、過去の取材で伺っていた。その成果が、春そして夏を経て形になっていた。
そこに合わせて、確かな戦略でボールを見極めて相手投手を攻略した。選抜では掴めなかった2勝目を掴むことが出来るか。
◆納得の敗戦も目線はプロの世界へ
敗れた北海だが、ポイントと思われた木村は決して悪くなかった。選抜は後半に崩れたが、この試合は最後まで粘り強く安定した投球が見えた。
木村自身も「最初から最後まで自分の思うような投球ができました」と納得のいくボールが投げられたようだ。特に、序盤調子が悪く見極められがちだったが尻上がりに良くなったスライダーでは空振りだけではなく、カウントも取れたところは成長点ではないだろうか。
プロも注目する左腕だが、目標ははっきりしている。
「3年間プロを目指してきたので、その思いは変わりません」
プロの世界を目指すことを明言した木村。今後は、自信を持っているスライダーの調子の波を安定させること。そしてチェンジアップの精度を上げた。
◆2度同じ相手に敗れた敗戦を糧に
「2度同じ相手に負けたことは悔しいです」と木村は語っていたが、投じた152球はエースの意地を見せる内容だった。最後は清々しい表情で甲子園を去ったが、今回の敗戦はいつか大きな糧になるだろう。
世代屈指の左腕が今度どんな投手へ成長していくのか。今後の木村の成長を楽しみにしたい。
(記事:田中 裕毅)