Column

男・村田、長野久義を輩出するなど日大黄金期を築いた名伯楽が鹿島学園を改革。目指すは初の甲子園

2021.07.26

 強豪校揃う茨城大会の決勝戦は名門・常総学院鹿島学園の対決となった。鹿島学園を率いるのは長野久義や、村田修一など多くの名選手を輩出した元日大の鈴木博識監督が就任し、着実に強化してきた。そんな鹿島学園はいかにしてここまでたどり着いたのか。

なぜ人材が大事なのか

男・村田、長野久義を輩出するなど日大黄金期を築いた名伯楽が鹿島学園を改革。目指すは初の甲子園 | 高校野球ドットコム
鈴木監督(鹿島学園)

 鈴木監督にこれまでのチーム作りについて伺った時、特に強調していたのが、「人材」だ。

 それを聞いてしまうと、これは単に優れた能力を持った選手を集めればいいという発想になりがちだが、鈴木監督は野球の能力だけではなく、上達のために自身で考え、反省し、実行ができる思考力や、組織のルールを守る規律性など社会人として必要な能力を求めている。つまり人間力が富んだ人材が良い組織を創れるのだ。

 鹿島学園は低迷が続いていたが、かつては関東大会出場や県大会でも上位に入っているように、能力が低い選手がいるわけではない。野球部以外にも、サッカー部が全国大会に出場するなど、昔からスポーツの強化には力を入れていた。

 ただ、優等生、アウトローという言葉で分けられるように、どちらかいうとアウトロー気味の生徒が多かった。鈴木監督は鹿島学園にオファーを受けたとき、断っている。野球部の環境を覗いた時、さすがの鈴木監督でも厳しい環境だと悟ったようだ。それでも学校関係者の熱心な誘いにオファーを引き受け、2015年に監督に就任する。

 就任当時は、チーム力の強化の前に、部の改革、環境整備を行った。そうした中で、不満を持つ選手、選手保護者からの衝突もあった。はっきりいえば、野球に集中できる環境でもなかった。

 

 それでも一歩ずつ改革をしていきながら、県ベスト4に入るなど一歩ずつ上達し、ついに2020年秋には、初の県大会優勝を決めた。今の選手たちは当時の選手たちと比べるとかなり気質は真面目になったと語る。実際に選手たちの練習の様子を見ても表情は朗らかで、明るい。さらに自主練習にも真面目に取り組む。鈴木監督は「レギュラーよりも控え選手のほうが練習をします」と語るように、これが当たり前の環境を作りたかったのだろう。

 冒頭で語った組織づくりにおいて「人材の大事さ」が分かる。また、選手たちの関係性も良好だ。鈴木監督は70歳を迎えても、動きは軽やか。選手たちにも手とり足取りの指導を行っている。

[page_break:みるみる上達する選手たち 常総学院を破って甲子園へ]

みるみる上達する選手たち 常総学院を破って甲子園へ

男・村田、長野久義を輩出するなど日大黄金期を築いた名伯楽が鹿島学園を改革。目指すは初の甲子園 | 高校野球ドットコム
甲斐竣介(鹿島学園)

 自主練習で選手がノックを打っている時に鈴木監督は選手を呼び寄せた。

「バット(動作)に遊びがない。俺はどうやって打っている?こうやって遊びをもたせている。打撃はただ振っても意味がない。動作に遊びがないと打てない。ボールに対してバットをぶつけていくだけ。バッティングも一緒。遊びがないと打てない。ノックで大事なのは片足を乗せていくように打つんだ」

 また守備の足運びについても手本を見せたりするなど、見本となっている。その話に熱心に聞き入る選手たち。「聞く耳」を持った素直な選手がいるのだ。だからこそ強くなったのだろう。

 また日大時代は、多くの選手を育て上げた鈴木監督は当時の選手のエピソードを話しながら、核心に迫り、選手を納得させる話術が素晴らしい。こうした話の引き出しの豊富さは他のチームにはない大きな強みだ。

 甲斐峻介主将は次のように語る。

「監督さんは凄い経歴の方で、野球の知識が段違いで、自分が知らないルールでも簡単に知っていて、わからないことが多いんですけど、よく教えてもらっています」

鹿島学園の入学で野球観が大きく変わったようだ。

 この春は石岡一に0対1で敗れたが、夏は快進撃を続け、準決勝では石岡一に7対1で勝利し、リベンジを果たした。

 右の好投手・藪野哲也、3番高久塁は強肩強打の2年生捕手で、鈴木監督も実力、人間性も高く評価する。1番・船田琉斗、2番・羽鳥颯の好打者コンビ、強打者の大塚大などタレント揃いだ。

 相手は秋季大会で対決した常総学院。激しい試合となるだろう。創部初の甲子園出場へ向けて、持てる力をすべて発揮するだけだ。

(取材:河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.12

学法石川の好捕手・大栄利哉が交流戦で復帰! 実力は攻守ともに世代トップクラス!身長200センチ右腕を攻略し、完封勝利!

2024.05.13

大阪桐蔭、山梨学院、慶應義塾…強豪校・名門校の昨年度卒業生はどの進路を歩んだのか?【卒業生進路一覧】

2024.05.12

【春季新潟県大会】プロ注目右腕・茨木佑太が完封!元プロの芝草監督は素材、メンタル面も絶賛!

2024.05.12

【春季京都大会】センバツベンチ外の西村がサヨナラ打!新戦力の台頭目立つ京都外大西が4強進出

2024.05.08

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.07

【鹿児島】神村学園は昨秋4強の鶴丸と初戦で対戦<NHK旗組み合わせ>

2024.05.07

【北海道】函館大有斗、武修館などが初戦を突破<春季全道大会支部予選>

2024.05.07

【山陰】益田東と米子松蔭、鳥取城北が石見智翠館と対戦<春季大会組み合わせ>

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?