試合レポート

都立高島vs順天

2021.07.17

「投手戦」の末、「守り」で乗った都立高島が激戦制す

 雨天によって日程が遅れた東西東京大会も中盤に入った。ベスト32をかけた3回戦が連日始まっており、[stadium]江戸川区球場[/stadium]では、都立高島順天による一戦が行われていた。

 この一戦は、実力が拮抗した熱い投手戦が繰り広げられることになる。
 都立高島は先発にエース・角津田夢叶が登板する。前回の開成戦でも好投を見せた左腕が、順天戦でも実力を存分に発揮する。

 セットポジションからゆったりと下半身をしっかりと使った体重移動で、力を少しずつ指先に伝えると、振り下ろした左腕からは角度、そして伸びのあるストレートがミットに突き刺さる。これには順天エース・野々村太晟も「速球対策はしてきましたが、思った以上に伸びてきました」と想像以上のボールだったようだ。

 またテイクバックも身体の陰に隠れて見にくくなっていることや、スライダーやチェンジアップも効果的に混ぜることで、強力・順天打線も捉えきることが出来ない。

 そんな角津田は、「自分には球速がないので、コントロールで勝負する投手です」と話すように、スピードはずば抜けたものはないが、非常に制球力が高い。この安定感には菊池監督も「このチームが始まってから信頼している投手です」と全幅の信頼を寄せる。そんな角津田の今があるのは、1人の大投手の存在があった。

 「今のフォームは父に教わったこともあるのですが、小学生の時に野球教室で桑田真澄さんに教わったことも大きいです」

 今でも当時の教えをまとめたノートを見返すことがあるそうだが、なかでも「自分も身体が小さい方なので、『身体全体を使って投げる』という教えはよく見ています」と現在のフォームの根幹となっている教えを説明した。左右の違いはあれど、角津田の好投は大投手・桑田氏の金言が支えとなっていた。

 対する順天は、前回の獨協戦から続いて先発した野々村が好投を見せる。ノーワインドから滑らかな動き出す投球フォーム、そして肘を柔らかく使って腕を振り抜くのが野々村の特徴だ。力感を見せないフォーム、そして緩急を利かせた変化球もあってか、ストレートは見た目以上に威力があり、都立高島打線は苦戦を強いられる。角津田同様、剛速球、切れ味鋭い変化球を投じるわけではないが、制球力が高かった。


 テンポの良い投球が互いに展開され、試合は1時間立たずして5回を終えて0対0で折り返した。

 先に均衡を崩したのは後攻の順天だ。6回に3番・日野泰伸と4番・星柚世の連打などで一死二、三塁とチャンスを作る。ここで6番・関谷典実のピッチャーゴロでランナーが生還して順天が先取点を上げる。その後もピンチは続いたものの、都立高島・角津田の好投で何とか踏ん張ると、8回に都立高島へチャンスが訪れた。

 1番・有木崇太が二塁打で出塁し、都立高島は得点圏にランナーを置いた。ここで3番・玉城勝寛がライト線への同点打で1対1の振りだしに戻した。

 息詰まる投手戦は9回では終わることが出来ずに延長戦に突入する。途中、足をつる選手が出てくるなど、両チームが死力を尽くす総力戦となった。

 そのなかで延長10回、順天4番・星のセンターへ抜けるかと思われた鋭い打球をショート・有木の好守で併殺打を成立させて都立高島はリズムを作る。この守備に関しては「助かりました」とエース・角津田も後輩の好守を称賛した。指揮官の菊池監督は「彼は2年生ですが、守備の要です」とはなしており、守備のキーマンが期待通りの活躍を見せたところだった。

 都立高島らしく守備から勢いに乗ると、直後の攻撃でヒットとエラーなどで無死満塁と絶好のチャンスを作る。ここで5番・相馬弘典が前進守備のセンターの頭上を越える勝ち越し打で4対1と試合をひっくり返した。

 その後、都立高島は追加点を重ねて7対1とした。最後はエース・角津田が順天を抑えて4回戦進出を決めた。

 両チームのエースが力投を見せたなかで、高島は角津田を中心に守りが非常に堅いチームだった。元々、守備力の高さが武器だった都立高島だが、ベンチ、そしてキャッチャーが各打者の傾向を見極めたうえで、ポジショニングを全員でしっかり敷いた。

 大胆なシフトを敷くわけではないが、そのおかげもあってヒットだろうと思われた打球も難なく捌いていた。また、「ベンチからのプレッシャーも感じました」と野々村は話していたが、チーム全体で果敢な走塁からチャンス拡大を伺うなどあらゆる方法で相手にプレッシャーをかけてきたことも勝利を掴んだ要因の1つだろう。二松学舎大附戦でも見せられるか注目だ。

 一方で敗れた順天は、エース・野々村は力投を見せ続けたが、最後は力尽きる結果になった。「まだ2年生なので、秋に向けてチーム全体がスタミナを付けてしっかりと抑えられるようにしたいです」と野々村は言葉を残した。指揮官の齋藤監督も、「このチームは若いので、今回出てきた課題をクリアにしてまた挑戦したいです」と秋、そして来年以降の逆襲を誓った。

文=田中 裕毅

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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