Column

専大松戸への挑戦権をかけて。監督人生、3年計画の集大成をぶつける西武台千葉

2021.07.01

 6月30日より開幕した千葉大会。全国屈指の激戦区の1つとして数えられ、熾烈極める地区であることから、多くの高校野球ファンのなかでは「戦国千葉」との異名すら付けられている。特に今年に限って言えば、関東王者・専大松戸の2季連続甲子園出場なるかが注目されている。

 そんな専大松戸への挑戦権を得るべく、7月1日に市立銚子との初戦を迎えるのが西武台千葉だ。毎年、ポテンシャルの高い選手を育てる印象が強い西武台千葉。ただ秋は県大会で市立船橋、春も県大会出場は果たしたが富里の前に敗れ、思うような戦績は残せていなかった。

食トレから筋トレへの方針転換

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トレーニングメニューに打ち込む西武台千葉の選手たち

 指揮官を務める皆川 浩一監督は「秋は投手陣がプレッシャーを感じてしまい、四球でランナーをためたところで、長打から失点を許してしまいました」と反省。しかし、夏休み期間中、1日の練習時間を2時間に制限。合宿も中止にするなど、公立校とあまり変わりない条件下で、経験者がほとんどいない新チームを県大会まで導いた。そのあたりは30年近く監督をしている手腕を発揮したといっていいのではないだろうか。そんな皆川監督が手掛ける選手指導は、食事に力を入れていることで知られていた。

 以前より交友があった大藤 敏行監督が、当時指揮を執っていた中京大中京の選手たちのがっちりとした体格を見たことから皆川監督も身体づくりへの意識が芽生えた。その徹底ぶりは、栄養管理士による指導を入れるほどだ。

 というのも、関東地区の強豪校も指導する栄養管理士がOBにいることを知り、皆川監督はその人による指導をお願いしてきた。定期的に食事の内容にチェックや面談。さらに筋肉量なども測定するほど事細かにチェックして、選手たちの身体づくりに力を入れてきた。

 「食事で結果を残してもプレーに繋がらない選手がどうしてもいて、そこに矛盾を感じて悩んでいたんです。何とか説得力を持たせたいと思って、筋肉量を計測するようにしました。そうしたら、食事の成果がプレーに繋がり始めました。
 また食事をしっかりとれば、ケガや体調不良になりにくいし回復も早いんです。それで入学してきたばかりの1年生やその親御さんも理解して、食事に対して力を入れてもらっています」

 こうして10年近く食トレの強化を継続してきたが、次第に球児たちの意識も変わってきた。「入学してくる段階で既にプロテインを摂取する選手が増えてきました」と、食事に対して意識の高い選手が増えてきたのだ。それに気づいた皆川監督は、選手たちに強制的に食事をとらせるのではなく、自主的に取り組むように3年前から方針を転換。代わりに皆川監督が目を付けたのが、筋力トレーニングだった。

[page_break:集大成、そして最後の夏へ]

集大成、そして最後の夏へ

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中村 優主将

 トレーニング場や雨天練習場がない西武台千葉。だからこそ、グラウンド内での練習を充実させる必要があった。そのための練習方法で最適なものを考えた末に、皆川監督は選手たちに加圧を使ったトレーニングを勧め、自らも加圧の資格を取った。

 加圧とは血管に圧力をかけ、一時的に血の巡りに制限をかけることで、少ない負荷でも成長ホルモンの分泌を促進させて大きな効果を得られるというものだ。これを実際のプレーのなかにも落とし込んでいくことで、野球の技術そのものをレベルアップさせた。同時に野球選手として、もっといえばプレーの中で必要となってくる筋力をつけていったのだ。

 皆川監督のなかでは「まずは3年間やってみよう」と導入して今年が3年目。ここがひとつの節目だが、ここまでで、加圧を導入したことでの成果を薄々感じてきたという。

 「神奈川大にいる神野(竜速)が150キロを出しましたが、あいつが3年生の時に試験的に加圧を投手陣から始めていたんです。そうしたら神野は次第に身体に柔軟性が出てきて、今では150キロを計測。ベストナインも獲得していますし、加圧の効果が多少なりともあったのかなと思います。
 今のチームも1年で5センチ近く身長が伸びた選手がいますし、全体的に体が大きくなってパフォーマンスも向上してきました。それもあってか3年生の多くが『大学でも継続したい』と話しているんです。きっと加圧を通じて成長を感じているから、大学でもやりたいんだと思います」

 今年のチームをまとめる中村優主将は1年間で体重が5キロ増加。加圧を通じて身体づくりが出来たことに手ごたえを感じるとともに、「冬場をはじめ練習時間は短かったですが、加圧で効果的に練習できたと思います」と高い効果を得られている様子だった。

 18時に完全下校という短い練習時間でも、充実したオフシーズンを過ごした西武台千葉。その成果を発揮すべく春の大会に向けて着々と準備をしてきたところ、大会3日前に、新型コロナウイルスの濃厚接触者ということで、主力選手の多くがベンチから外れる事態に。結果、県大会の初戦・富里の前に敗れ、シード獲得とはならなかった。皆川監督は「戦った感じがしませんでした」と一言。中村主将も「夏こそは結果を残したいと思いました」と悔しさを夏にぶつける姿勢だ。

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守備練習を行う西武台千葉の選手たち

 その西武台千葉が初戦で市立銚子。勝てば2回戦で専大松戸と戦う厳しいブロックだ。「市立銚子は昨年の経験者がいますし、名門です。だから、まず専大松戸のことは考えず、初戦から全力で戦います」と皆川監督は一戦必勝の心構えでチームの指揮を執ることを誓った。中村主将は「最初はビックリしましたが、1つ勝てば関東王者と戦えることに喜びを感じながら練習できているので、チームの雰囲気は良いです」と状態は上がってきていることを口にする。

 そんな西武台千葉にとって、この夏は少し特別だ。加圧の成果を見定める節目だけではなく、皆川監督が指揮を執るのが、この夏の大会までなのだ。「4月に発表されてビックリしました」と中村主将。皆川監督にとって3年生たちが最後の世代となるということで、中村主将を中心にチーム全員が監督に1つでも多く勝利を届け、長い夏にしようと意気込んでいるという。

 今年は攻守においてスピード感あるプレーを武器に、ここまで練習試合から自分たちの野球を展開してきた西武台千葉。テーマである雑草魂を胸に刻み、スピード感ある野球で1日でも長い夏にすることが出来るか。加圧に方針転換した成果、そして皆川監督と現在の3年生にとって集大成にして、最後の夏が始まる。

(取材=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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