好投手王国・福岡大大濠から大会屈指の実戦派左腕が再び。毛利海大(福岡大大濠)の真の武器とは
エースの三浦銀二投手(法政大)を擁した2017年以来、4年ぶりの選抜甲子園出場を掴んだ福岡大大濠。その原動力となったのは、何と言っても左腕エースの毛利海大だ。
力感の無いないフォームから投げ込む最速140キロの直球を軸に、スライダーやカーブ、チェンジアップなど緩急をつけたピッチングが持ち味の毛利。九州地区大会1回戦の大分商戦で4安打1失点の完投勝利を挙げると、続く準々決勝の具志川商戦では5安打完封勝利。九州屈指の左腕として一気に脚光を浴びた。
1年時は怪我もあり、山下舜平大投手(オリックス)や山城航太郎(法政大)といったハイレベルな投手陣の中でくすぶっていたが、秋季大会での好投で「すごく成長できた」と自信を見せる。
強気一辺倒だったエースの心の成長
福岡大大濠・毛利海大
毛利がターニングポイントに挙げる試合が、秋季福岡県大会準々決勝の自由ヶ丘戦だ。この試合で毛利は9回を投げ切り3失点の力投を見せ、高校では初となる完投勝利。ここで自信をつけた毛利は、九州大会での快投に繋げていったのだ。
「福岡大会ではバッター陣に助けられました。恩を返すでは無いですが、九州大会では良い投手がどんどん出てくると思っていたので、ロースコアの中でどれだけ投げ切ることができるかだと思っていました。1回戦、準々決勝と中1日での連投で疲れもありましたが、自信を持って投げることができました」
140キロを計測する伸びのある直球に、多彩な変化球で緩急をつける投球が特徴だが、毛利の本質はそこでは無いとチームメイトは口を揃える。
女房役の川上陸斗は言う。
「一番は強気のピッチングだと思います。真っ直ぐで押すところは押せるので、そこが一番じゃないかなと思います」
変化球を活かすためのインコースへの直球に、ここぞの場面での力勝負。厳しいコースへ躊躇無く直球を投げ込む気持ちの強さこそ、秋の好投の土台となったのだ。
強気の投球について毛利は、自身の出身地にルーツがあると笑顔で明かす。
「自分は田川市(福岡県の筑豊地区)で生まれ育ちました。やんちゃな友人も周りに多くいたので、肝が座るようになったのかなと思っています」
それでも八木啓伸監督は、強気の中にも精神的な成長を感じると話す。
元々は強気一辺倒の投球だったが、新チームではエースとしての自覚が芽生え、強気の中にも冷静さが垣間見えるようになってきた。経験の少ない1年生もスタメン入りした中で、背中でもチームを牽引した。
「1年生もいたので、エラーは出るぞと予め伝えていましたが、その中でも崩れることなく冷静に粘り強く投げてくれました。そういったところで成長を感じましたね」
[page_break:冬は疲労のある中での投球を課題に]冬は疲労のある中での投球を課題に
福岡大大濠・毛利海大
そんな福岡大大濠だが、選抜甲子園の初戦は九州大会決勝の再戦となる大崎との対戦が決まった。毛利は決勝戦での登板は無かったため大崎打線と直接対戦はなかったが、雪辱に向けて強い意気込みを見せる。
「前回(2017年選抜甲子園)はベスト8だったので、まずはその結果を越えようとチームでも話しています。(主将の)川上を中心にチームはしっかり回ってるので、勝ち進んでいく中で成長して優勝までいけたらと思っています」
優勝を目指すにあたって、毛利がこの冬課題に掲げて取り組んできたのがスタミナの強化だ。昨秋は疲労から決勝戦の登板を回避し、チームが敗れる様子をベンチで見守った。疲労がある中でも質の良いボールを投げ込むことを目指し、トレーニングやブルペン投球で疲労を想定した練習を積んできた。
「この冬は、疲労の中での制球力やボールの質を求めてやってきました。秋は疲労でフォームが崩れてしまったので、疲れていても自分のフォームで投球できるように、疲労の中でのピッチングを積んできました。無理は禁物ですが、選抜では連投も想定しています」
まずは初戦の大崎戦で雪辱を果たし波に乗っていきたいところだが、実は毛利には楽しみにしている対戦もある。大阪桐蔭だ。
右のエースである関戸康介は、小学校時代に福岡ソフトバンクホークスジュニアで共に戦った経験があり、また宮下隼輔や藤原夏暉とも中学時代にボーイズリーグの日本代表でチームメイトだった。もし対戦があるなら決勝戦となるが、元チームメイトに成長した姿を見せつけたい気持ちを胸に秘める。
「意識する部分はあります。特に宮下は、対戦できればとても楽しみだなと思います。高校野球と言ったら、今は大阪桐蔭が一番に出てくると思うので、倒したらすごくチームとしても力になると思います」
チームとして初となる全国制覇に向けて準備は整った。筑豊が生んだ強気な左腕が、甲子園の舞台でどんな投球を見せるのか注目だ。
(記事=栗崎 祐太朗)