常連校が健在の岐阜、実力拮抗の三重と静岡 2020年東海地区高校野球を総括【前編】
東海地区の高校野球もコロナの影響で3月の春季大会予選以降、すべてが中止となってしまった。そんな状況ではあったが、7月には各県高野連の管轄下で独自の大会が開催された。
岐阜県は開幕を予定していた土日の雨で開催が1週間遅れた。三重県も大会そのものはずれ込んだ。静岡県は7回制で開催するということになった。まさに、独自大会ということになった。それぞれの大会を経て、秋季大会も無事終了。東海地区の高校野球は来季への希望をつないだ。
なお、愛知県に関しての総括は別途紹介しているので、ここでは静岡、岐阜、三重の総括とする。
三重大会で活躍が目立ったいなべ総合の粘り強い戦い
いなべ総合・田所
夏季のそれぞれの大会で優勝したのは岐阜県が大垣日大、三重県はいなべ総合という常連校だった。そして、7回制で行われた静岡県は聖隷クリストファーが初優勝を果たした。
この夏の三重大会は1~2回戦のヤマで、いきなりいなべ総合が津田学園と津商の勝者と戦うと言った近年甲子園出場を果たしている学校同士が潰し合う形になった。この難関のヤマを勝ち切ったのがいなべ総合だった。前年春夏連続出場の津田学園に、よもやのコールド勝ちした津商が相手となったが、いなべ総合は競り勝った。
そして、その勢いはそのまま3回戦で伊賀白鳳にはコールド勝ち。準々決勝でもライバル菰野を下すなどして、ここまでで県内のライバルとも言える相手に対して直接対決で倒した形になった。
さらに、いなべ総合は準決勝でも8回に1点リードで迎えた9回表に松阪商に追いつかれ逆転されながらも、その裏に2点を奪い返しての逆転サヨナラ勝ち。そして決勝は四日市工。いなべ総合の尾崎 英也監督の前任校で、小野 日出士監督は教え子でもあり、いわば因縁の対決でもあり6度目の師弟対決となった。
この試合ももつれたが、尾崎監督自身も「神懸かり的な粘り」と評価するほどの粘りを見せたチームは、1点差を追う9回に2点をもぎ取って劇的にサヨナラを果たした。同時にこれは尾﨑監督の夏120勝目ということになった。また、師弟対決もこれで尾崎監督の6連勝ということになっている。
準優勝の四日市工は久しぶりの決勝進出だった。かつて明治神宮大会も制した実績のある実力校である。ここへ来て、いなべ総合や菰野、津商に近年躍進している白山といった公立勢の中へ再び割り込んでくれば面白い存在になりそうだ。準決勝の津西戦で、満塁ランニング本塁打を放つなどした谷口 颯太君の打棒が目を引いた。
[page_break:勢力が拮抗し目が離せない三重。岐阜では、県岐阜商が不屈の精神を見せる。]勢力が拮抗し目が離せない三重。岐阜では、県岐阜商が不屈の精神を見せる。
県立岐阜商ナイン
準優勝の四日市工は久しぶりの決勝進出だった。かつて明治神宮大会も制した実績のある実力校である。ここへ来て、いなべ総合や菰野、津商に近年躍進している白山といった公立勢の中へ再び割り込んでくれば面白い存在になりそうだ。準決勝の津西戦で、満塁ランニング本塁打を放つなどした谷口 颯太君の打棒が目を引いた。
8強には2年前にはノーマークながら甲子園初出場を果たした白山や四日市南、進学校の四日市といったところも残った。白山は、その後の秋季県大会でもベスト4まで進出している。甲子園出場の実績が、ベースとして引き継がれていっていると言っていいであろう。
実績のある三重や前年21世紀枠の東海地区推薦校となっていた近大高専などの有力校が初戦敗退したのも県勢力が拮抗してきたことを示しているとも言えよう。もっとも、沖田展男監督が復帰就任した三重は、秋季県大会では優勝を果たして健在ぶりを示したのはさすがだった。松阪商とともに、県南地区を大いに盛り上げている。
岐阜県は、最大の注目校で優勝候補の筆頭と目されていた県岐阜商が校内で新型コロナのクラスターが発生したということで、大会開幕後ながら苦渋の出場辞退を余儀なくされたのは気の毒だった。それでも、鍛治 舎巧監督は、「県大会と、甲子園交流試合は別のものとして考える」として、その後のセンバツ出場校に与えられた甲子園交流試合への出場は諦めず、選手たちの意識も切らさないように維持させ続けた。
そうした思いもあって、甲子園交流試合には出場出来たのはよかった。交流試合では明豊(大分)に競り負けたものの、注目の佐々木 泰君が大会第1号を放つなど気を吐いた。県岐阜商の、ブルーとイエローを基調とした新ユニフォームも甲子園初披露となった。
その県岐阜商、秋季県大会も制して東海地区大会には2年連続出場。さらに、東海大会でも準優勝を果たして、来春のセンバツにも連続出場をほぼ確実としたのは見事と言ってもいいであろう。
(記事:手束 仁)