最速153キロ右腕・加藤翼など好投手を輩出する帝京大可児(岐阜)が大事にする指導方針
例年、県内の強豪校として君臨しながら新たなカラーを身に着け、一気に注目を浴びるチームがある。それが岐阜県の帝京大可児だろう。今年は153キロ右腕・20110が中日から5位指名を受け、これまで大学で活躍する投手を次々と育成し、投手力の帝京大可児と印象づけた。そんな帝京大可児のチーム作りに迫っていく。
怪我をさせないのが指導方針
ストレッチの様子(帝京大可児)
チームを率いるのが田口聖記監督。現在は廃部となったシダックスに所属し、豊川高校時代は森福允彦(元巨人)を擁して、2003年、2004年には2年連続で愛知大会準優勝を経験している。また、シダックス出身の指導者と練習試合を組んで交流を行い、チームをレベルアップさせている。
そんな田口監督の野球は「投手を中心に守り勝つ野球」。そこを身上にチーム作りをしてきた。近年は元プロの田中祐貴コーチが就任したことで投手育成も進み、好投手として注目を浴びた本格派右腕・小坂惇也(星城大)、2018年夏のエース・近藤優(星城大)、2019年夏のエース・堀川隼人(愛知学院大)など多くの投手を育ててきた。
今年の3年生は153キロ右腕の加藤だけではなく、140キロ後半の速球を投げる平良拳晨も擁し、着実にレベルが上がっていた。
帝京大可児の指導法に注目が集まるが、その前に、けがを防ぐことに徹底的にこだわっているということだ。球数も制限するなど、少しでも違和感があれば、投げさせない。元気に投げられる状態にしてマウンドに上げる。その一例としてプロ入りした加藤翼は夏の初戦後に豆を潰した。もちろん勝つためには治療をしながら投げると言う選択肢もあるだろう。帝京大可児の場合は敗れた岐阜第一戦まで登板がなく、岐阜第一戦も短いイニングを限定したものだった。
投手に対しては無理をさせない調整を徹底としている。
また怪我を防ぐには普段の練習から大事。投手も野手もストレッチをいくつも行い、キャッチボールから入る。進学校ゆえ長い練習時間はとれないが、そこだけはかからずやっていた。
帝京大可児はけがを防ぐことに気を付けていたが、それでも新チームスタート後、故障者が多く出てしまい、念入りに行うようになった。
投手陣のキャッチボールを見ていくと、どの投手も非常に強い。プロ入りした加藤はこのキャッチボールこそ投球につながると言う考えで、実戦を意識して投げる。加藤はメカニズムを良くするためにオーバースローだけではなく、アンダースローでもキャッチボールをしていた。そこに指導者は入らない。各投手が工夫をしていて投げている様子が伝わった。
例年、140キロを超える投手を育てる帝京大可児。好投手として期待されるのが右腕の宮川凛士。最速は140キロを超え、キャッチボールを見ても実に素晴らしいボールを投げていた。帝京大可児の投手は中学時代から有名だったわけではない。岐阜の下呂出身の加藤は無名の存在。120キロ後半の速球は投げていたが、故障も多い投手だった。そういう投手が自発的にピッチング、トレーニングに取り組み、進化を果たしていった。
[page_break:打撃を強化し、岐阜のライバルを倒す]打撃を強化し、岐阜のライバルを倒す
打撃強化に取り組む選手
またトレーニングをみてみるといろいろなトレーニングに励んでいることが分かる。帝京大可児のグラウンドの一塁側にはウエイトルームになる小屋があり、そこでは多くの選手がウエイトトレーニング、スクワット、メディシンボール投げなど様々なトレーニングに取り組んでいる。また投手陣は加藤が取り組んでいた傾斜を使ったネットスローも行っている。こうすることで体を縦回転で使う意識を身につける。地味な練習に見えるが、こうした取り組みから好投手の礎は築かれている。
帝京大可児は投手を中心として守りのチームではあるが、秋季大会では準々決勝で敗退。改めて打撃面が課題となった。
フリー打撃に取り組むハンマーを使ったタイヤ叩き、ソフトボールを使ってのティー打撃もあった。
この打撃でインパクトの強さを求め、パワーアップを狙っている。
最後に北岡 来亜主将はこう意気込んだ。
「やはり守備では投手の中心である宮川中心に守り勝つ野球を実現し、そしてこの冬はバットを振り込んで、パワーアップに成功して、思考力のある野球で勝利を目指していきたいです」
来季は県岐阜商、中京、岐阜第一、大垣日大に負けないチームへ成長ができるか注目だ。
(記事=河嶋 宗一)